上海の西岸エリアに登場した、世界的なコレクターによる私設美術館
かつて空港があった黄浦江の西岸が新たなアートスポットに。広いエリアなので、アート巡りをするなら時間に余裕をもちましょう。写真/JJYPHOTO, courtesy of Yuz Museum Shanghai(筆者撮影以外すべて)
年々様相を変える上海のアートシーンですが、ここ最近、現代アートが集まる新たなスポットとして話題になっているのが、「西岸(West Bund)文化走廊」と呼ばれるエリアです。黄浦江の西岸に位置し、かつて龍華空港という飛行場があった場所になります。川沿いに続く道・龍騰大道の周辺約3.6キロメートルの間に、飛行機の格納庫や工場などの建物を利用したアートスペースができているのです。
ガラスの天井が印象的。日の光がたっぷり差し込みます。建物の外にも内にも樹木があります。
Tek氏は以前にアメリカの「アート&オークション」という雑誌で、世界で最も影響力のあるコレクターランキングの第8位に選ばれた人物。インドネシアにも美術館があり、世界でも指折りの富豪です。中国のコンテンポラリーアートのほか、イタリアのアーティストMaurizio Cattelanなどの収集家としても知られています。
美術館は飛行機の格納庫をリノベーションした部分と新しく設計したガラス主体の建物から成り、総面積は9,000平方メートル以上。建物のファサードは日本人建築家の藤本壮介氏が手がけています。
スケールの大きな迫力のアートが一堂に集結
英語の作品名は「Like Mother Like Son」。長さ25メートルの作品です。最近、中国には目利きの若い美術コレクターが登場しており、今後も私設美術館が増えていく可能性があります。
この美術館の特徴は、スケールの大きいインスタレーションアートをひとつの空間で一気に見られること。
メインの展示空間は元格納庫。広さはここだけで約3,000平方メートルあります。天井も高い!
チベットからインスピレーションを受けたという作品「仏手」。(筆者撮影) ※展示内容は不定期で変わります。
中央を占めるのは3機の飛行機が絡みあった作品。これはパリ在住のアーティスト、Adel Abdessmed氏によるもの。元格納庫という空間だからこそ存在感が際立つ迫力のアートです。
そのほか、66万本のタバコで虎皮カーペットを表現した作品や、6台のマッサージチェアを使った動きのある作品なども。一つ一つが個性的でユーモアがあり、見飽きることがありません。
それにしてもこれほど大規模な作品を個人で収集したということに驚いてしまいます。
メインスペースの奥や上の階にも絵画や写真、比較的小さなインスタレーションなどを展示した空間があります。楊福東氏や丁乙氏といった上海で活躍する著名なアーティストの作品も多数展示され、こちらもかなり見応えがあります。
メインの展示室以外にも個性的な作品が多数。フランス在住のアーティスト・王度氏による彫刻作品もインパクト大。
この西岸エリアには余徳耀美術館だけでなく、やはり規模の大きい私設美術館「龍美術館」の分館やアートフェアが行われた「西岸アートセンター」もあります。岸辺では音楽フェスが開催されるほか、今後も文化施設がオープンする予定とのこと。
上海のカルチャーを楽しめる新しいエリアとして、西岸界隈がますます充実していきそうです。
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■余徳耀美術館(Yuz Museum)
住所:徐匯区豊谷路35号
TEL:021-6426-1901
営業時間:10:30~17:30 月曜休
アクセス:地下鉄11号線「雲錦路」駅より 徒歩15分