ミュージカル/ミュージカル・スペシャルインタビュー

Creators Vol.4 『∞/ユイット』演出家、小林香(4ページ目)

2010年の『DRAMATICA/ROMANTICA』以来、華も実もあるキャスティングと、ジャンルに囚われないユニークな舞台で人気を集めるシリーズ「SHOW-ism」。その第8弾『∞/ユイット』が、間もなく開幕します。シリーズの生みの親で、『カルメン』『ロコへのバラード』といったミュージカルや「StarS」等のコンサートでも目覚ましい活躍を見せている演出家が小林香さん。創作の意図と原点を伺いました。*観劇レポートを追記しました!*

松島 まり乃

執筆者:松島 まり乃

ミュージカルガイド


「モノを言う」姿勢を大切にしていきたい

井上芳雄クリスマス・ディナーショー(2011年)

井上芳雄クリスマス・ディナーショー(2011年)

――演出家としてデビューされてしばらくは、コンサートのお仕事が多かったですね。

「訳詞やミュージカルの演出もやっていましたが、コンサートの仕事が多く来るのは確かですね。それは私が音楽好きだからということがあると思います。聴かないのはレゲエとテクノくらいで、あとはヘビメタも含め、何でも聴きます。好きだから聴いている面もあるし、何が素敵か知りたいというのもあって、レンタル屋さんに行ったり、ネットで調べて聴いたりしています」

――どんな音楽が胸に響きますか?

「情景が見える曲ですね。基本の目線が舞台人なので、それが舞台に乗ったらどうかと考えながら聴いていると思います。一枚の写真が見えて来るとか、一つの詩が聴こえてきたりしたときに、印象に残ります。曲のタイトルを忘れても“ああいう絵が見えた曲、何だったかな”と探したりすることもあります。ふとした時に思い出す音楽ですか? 歌詞がついてないものが多いですね。クラシックでチャイコフスキーの弦楽セレナーデとか、シベリウスの2番の2楽章とか。以前、オーケストラで演奏していたので今でもクラシックは好きです。あとは日本語でも英語でもなく、(意味を)勝手に解釈して聴ける(ポルトガルの)ファドなどですね」

――これまでいろいろな役者さんとお仕事をされていますが、その中でも井上芳雄さんと組まれた回数は多いですね。井上さんという役者をどうとらえていらっしゃいますか?
『DRAMATICA/ROMANTICA』写真提供:東宝演劇部

『DRAMATICA/ROMANTICA』写真提供:東宝演劇部

「バランスのいい人だなと思っています。第一線で活躍している男性の俳優さんで、ショーがお好きな方ってわりと少ないと思うのですが、井上さんはショーにも強い関心と知識を持っていらっしゃって、そういうお話ができるお友達と言う感じがします。SHOW-ismの第一作やディナーショーから何本もご一緒していて、その変化を見ていますが、会うたびに進化していて、その先その先を一緒に語り合い、現実化していきたいと思わせてくれる人です。あれだけ歌のうまい井上さんでもSHOW-ism第一弾のときより、今の方が確実にうまいと思います。歌の深度というのでしょうか。そして踊りもできる、数少ない声楽出身の方。芝居もミュージカルもショーもと、興味の幅が広いのでしょうね。なんでも吸収しようとなさっているところを尊敬しています」

――小林さんのミュージカルを拝見していますと、『カルメン』のタイトルロールにしても『ピトレスク』で保坂知寿さんが演じたタマラ役にしても、何よりも「自由」を求める女性像が印象的です。常に意識されているのでしょうか?

「そう指摘いただけるのはすごく嬉しいですね。希望や愛やいろいろな要素があるなかで私が最も言いたいことを選ぶとすれば、やはり“自由”。自分自身が生きていて、感性のままに生きるには、こんなに平和な日本ではあっても、不自由なところも多いです。とくに女性は誰しも、経験していると思います。それに対して自分なりに発信するということは、作り手としてのモチベーションになっています。なぜ差別や偏見というものがあり、数の多い方が勝つのかなど、その心根が私には理解できないので、モノを言う仕事をしている以上、それに対して発信していきたいと思います。“SHOW-ism”シリーズもよく“ジャンル分けしにくい”と言われますが、ジャンルに分けるということが、そもそも世界の不幸せの理由だと思います。カテゴライズとかラベルを貼るということに対してモノを言っていくということは、いつも意識しています」

――今後どんなクリエイターを目指していますか?

「オリジナルのミュージカルを、できれば日本の題材でどんどん作りたいと思っています。自分たちの物語に近づけようと意識しています。

また、演出家であり言葉も書く機会を与えられる以上は、人が自分らしく生きていける力になれるものを作りたいです。この前、NHK全国学校音楽コンクールの高校の部の課題曲の作詞家として呼んでいただき、『共演者』という曲を書きました。テーマが“勇気”だったのですが、高校生たちが半年かけて歌い込む曲で、大切な時間を費やすわけですから、その歌詞に何を入れたらいいかと思った時に“あなたはあなたのままでいいんだよ”ということを言おうと思ったんですよ。実際に合唱部の生徒たちとも喋ったんですが、実は“自分のまま”でいるということが一番難しいんですよね。そう語りながらはらはら泣く子もいました。

みんな悩み、葛藤している。あなたはあなたのままでいいということを、大人世代が若い人たちに全力を尽くして言うのが一番大事だと思って、歌詞にyes, oui, siと世界中の肯定の言葉を入れたんですよ。人生という舞台にはあなたを見てyesといってくれる共演者がいますよ、と言って、最後には“私も私でいいのかも”と終わる。舞台の演出でも言葉でも、何かそれを観て聴いてくれる人の役にたてるようなものを残したい、と思っています」

*****
丁寧に言葉を選びながら終始、理路整然と語ってくれた小林さん。理性的な方ですね、と言うと「理路整然としているところと、そうでないところのバランスをはかっているんです」とちらり、笑顔が覗きました。フリーとなって以来精力的に仕事をこなし、自身の立ち位置をしっかり確立した小林さん。どんなに楽しく華やかな作品にも“何か残るもの”を潜ませる彼女の今、そして今後に、大きな期待を抱かずにはいられません。

*公演情報* SHOW-ism8『∞/ユイット』2月1日~15日=シアタークリエ (2月3日15時開演 追加公演が決定。1月31日より東宝ナビザーブで販売。また当日抽選券、BOX席の販売も決定。詳細は東宝ナビザーブにてご確認を。)

*次頁に観劇レポートを追記掲載しました!*

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