比較的堅調だった2014年の不動産市場
首都圏は、好調 地方都市は、依然低調
2015年が始まりました。消費税の2017年4月への引上げ延期や12月の衆議院選挙、日本銀行の金融緩和、急激な円安と変化の大きかった2014年。2015年は、不動産市場がどうなるのかを識者にインタビューします。今回は、「初めての不動産投資」「家を買いたくなったら」「家を借りたくなったら」などの著者であり、不動産コンサルタントの長谷川高氏にインタビュー。もとディベロッパー出身であり、不動産業界に幅広い人脈を持たれています。
■プロフィール:長谷川高氏
東京都出身。立教大学経済学部卒。大手デベロッパーにて、ビル・マンション企画開発事業、都市開発事業に携わったのち1996年に独立。以来一貫して個人・法人の不動産相談、調査、コンサルティング業務を行う。また、メディア出演や講演、執筆活動を通して、難解な不動産市況や不動産の購入・投資術を分かり易く解説している。
―――よろしくお願いします。まずは2014年の不動産市場を振り返ってどんな1年でしたか?
長谷川氏:
2013年に続き、2014年も不動産市場は活況だったと思います。特に、五輪開催を控えた東京のマーケットは堅調でした。一方で、地方圏の不動産市場は相変わらず厳しいです。人口トレンドがマイナスの県などは、今後も回復は難しいのではないでしょうか。
例えば、一部の大手ディベロッパーの中には、関西の事業を縮小する動きもありますし、修繕やリフォーム、管理など分譲事業以外の比重を高めている企業も目立ってきています。分譲事業が今後成長する事業ではなくなってきた表れでしょう。
―――どういった要因が挙げられますか?
長谷川氏:
就業者人口が減少トレンドにあります。以前のように新築住宅のニーズが高まるような社会構造では既になくなっています。
―――2015年の不動産マーケットについては、どうお考えですか?
長谷川氏:
不動産マーケットも一つの踊り場かも知れません。確かにアベノミクスによる株高などで、2013年以降は不動産市場も活況を呈しました。しかし実際の給料は、上がっていません。実態として景気が本当に良くなるかが不動産市場にも影響するでしょう。昨年後半から、売行きがやや鈍化しており苦戦の兆候も出ています。アベノミクスの成果が出るかどうかで不動産市場の動向が左右されるでしょう。
―――価格トレンドはどう考えますか?
長谷川氏:
急激に上昇した工事費もやや天井を打った感じがします。とはいえ、背景にあるのが人手不足ですからそんなに急には下がらないでしょう。建設費が読めないので、着工を先送りするような状況ではなくなった感じがします。
一方、マンション用地などの土地価格は多くは競争入札ですので高止まりしています。よって、事業収支を考えると新築マンションなどの供給価格は上げざるを得ないと思います。
―――供給戸数はどうなるとお考えですか?
長谷川氏:
デベロッパーの多くは、土地の取得はある程度できており供給余力はあると思います。市場が堅調であれば、増える可能性もあると思いますが大手デベロッパーの寡占化が進んでいるマンションマーケットなので、供給調整も可能です。上半期の売れ行きで、増減するのではないでしょうか。
売行きに関しては、消費税の駆込みなど需要を先食いしている面もあると考えるので、株価が下がるなど資産効果がなくなると厳しくなると思います。良くて現状維持ではないでしょうか。
市場の見極めが大切
売行きが鈍化すれば、選びやすい環境になるのも事実
―――2015年は、マンションの買い時としてはいかがですか?長谷川氏:
市場をよく見極めるもが大切だと思います。景気が本当に良くなっていくのかどうか。上がるかも知れませんが、需給が悪化すれば価格面では待った方が良い局面も来るかもしれません。
ただし、実需で購入するなら気に入ったマンションを見つけるのも大切なことです。売れ行きが鈍化するようであれば、マンションを選びやすい環境になるのも事実です。そういう点では、これまでよりゆっくり選べる年になると思います。
建築費が上がっている中、仕様をダウンしたり専有面積を抑えたグロス価格を圧縮したプランも増えてくるでしょう。価格だけでなく、自分にあった間取りや広さなのかは確認した方が良いポイントだと思います。
―――これからマンションを買われる方にアドバイスをお願いします。
長谷川氏:
市場が不透明な時期は、デベロッパーの価格設定の方針も強気でいくのかそれとも市場を見据えた価格設定にするのか企業によって判断が分かれます。そういう意味では、希望のマンションが予算内で出会える可能性もないとは言えません。市場の価格トレンドを見極めつつ自分のモノサシを持つことが大切ではないでしょうか。
ありがとうございました。
編集後記:
就業人口の減少とアベノミクスのゆくえといったキーワードが出てきました。政策的に大きな舵をきっているので、この2年を見ても不動産市場に与えるインパクトは大きなものになっています。一方、私たちの生活は今日・明日の話ではなく10年、20年と続いていきます。こうした振れ幅が大きなときは、自分の中で大きな軸を持つことが今まで以上に大切ではないかとあらためて感じました。
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