家庭はその人の心の基盤となるものです。もし機能不全になってしまった場合、次の世代にもそれが連鎖しやすいという傾向があります
しかし、そんな心の支えとなる家庭も、場合によっては心が苦しむ原因になります。特に子ども時代において、家庭が安らげない場所になっていたら、それはその人の後々にさまざまな悪影響を及ぼすかもしれません。
今回は機能不全家族を精神医学的観点から詳しく解説します。
機能不全家族……「家庭が機能しなくなる」とは
ギャンブルやアルコール依存症、暴力、夫婦の不和。これらは家庭が機能しなくなってしまう大きな原因です。もしギャンブルにのめりこみ過ぎてしまい、親が精神的に不安定になれば、暴言や暴力などの弊害が現われてしまうことがあります。かつてはお互いを尊重し合う家族関係であったとしても、それは壊れてしまうでしょう。
子どもはそうした親の姿をしっかり見て育ちます。実はその過程で子どもの心に以下のような不合理な心的反応が起きる可能性があります。
- どの家も自分の家とは大差がなく、家庭とはそういうものだと思い込んでしまう
- 家庭内で起こっている事には自分にも非があるかもしれない、と現状の認識に混乱が生じてしまう
- 何も考えられない、あるいは何も考えたくないといった無気力・無感情な状態(アパシー)が生じる
- 家庭内で生じた怒りや憤りといった感情によって、家の外で何らかの問題を起こしてしまう
- 自分だけは頑張らなくてはならない、といった観念が強迫化してしまう
機能不全家族には連鎖の傾向が
もし子ども時代の家庭が機能不全だった場合、大人になって家を出たあとも、その後遺症を引きずってしまうことがあります。たとえば、自分に自信が持てず、物事に積極的になれない。あるいは他人と親密になりたくても、どうすれば良いのか分からない。また、場合によっては、うつ病など心の病気になりやすくなっている可能性もあります。
こうした後遺症も機能不全家族の深刻な弊害ですが、もう一つ重大な影響として、機能不全家族は次の世代に連鎖しやすいという傾向があります。
例えば、親がアルコール依存症だった場合、自分自身もアルコール依存症になりやすく、また親から頻繁に身体的暴力を振るわれて育った子供は、配偶者にそうした傾向を持つ相手を選びやすい……といった、一見、不合理な傾向がある事が知られています。
再び家庭が崩壊し、機能不全家族が繰り返される。この連鎖の危険性はしっかり認識しておきたい事です。
私たちが生きるこの時代は、環境がさまざまな意味で大きく変化しています。そのストレスのなか、心の健康を保つ事は多くの方にとって最重要課題になってきているでしょう。今回の機能不全家族について、自分には無縁!と思われた方は少なくないかもしれません。でも、絶対にそうならないとは言い切れない可能性がこの時代にはあるのではないでしょうか。
機能不全家族という言葉が自分に無縁であるためには、家族に対する意識と共にかなりの努力も必要!と是非、自分に言い聞かせてみてはいかがでしょう。