【今月の1本 Pick of the Month JANUARY 】
『氷刀火伝 カムイレラ2』
1月28日~2月1日=IMAホール『氷刀火伝』稽古より (C) Marino Matsushima
平安時代、東北の民「蝦夷(えみし)」の長として、侵攻する朝廷軍と闘った英雄アテルイの息子、ヒトカ。「美しいが、心は鬼」と呼ばれた少年は父の死後、再び戦に巻き込まれ、自らの生きる意味を見出す…。日本古代の北の民たちの生き様を描く、ミュージカル座「カムイレラ」三部作の第二弾がいよいよ誕生します。第一作『カムイレラ』(12年初演)では江戸時代の北海道でのアイヌと幕府軍の戦いが舞台でしたが、今回はその1000年前の東北が舞台。作者は同じ(藤倉梓さん)ですが物語的な関連性は無いため、第一作を観ていない方でも全く問題はないそうです。
主人公のヒトカ(氷刀火)を演じるのは、先だって『金魚鉢』で脚本家としての才気も見せた西川大貴さん。盟友、琅丸役は今年『レ・ミゼラブル』『アラジン』への出演も決定している海宝直人さん。ほか瀬戸早妃さん、今拓哉さん、木村花代さんら実力派俳優が集結し、“運命の子”の魂の成長と追われる民の哀しみを熱く、重厚に描き出してくれそうです。
『氷刀火伝』稽古より (C) Marino Matsushima
1月初旬、北浦和のミュージカル座を訪ねると、氷刀火の不思議な能力によってパニックが起こるクライマックスの稽古が始まっていました。20名弱で数千の人々が逃げまどう様を表現すべく、振付の大塚庸介さん(イッツフォーリーズ)はアンサンブルの俳優たちのタイミングをずらし、段階的に動くよう提案。やってみると確かに場面に立体感が増して見え、俳優たちも納得しながら動きを体に入れています。
『氷刀火伝』稽古より (C) Marino Matsushima
テーマに“アイヌ”を選んだのは、小学生の時にアイヌの人々の踊りを観てその言語や美しい旋律、衣裳に魅了され、以来ずっと興味があったため。ヒトカについては現地で調査をしても二点ほどの情報しか見つからなかったが、それを逆手にとって『オイディプス王』『ハムレット』『出エジプト記』的なエッセンスを盛り込み、一つのフィクションとして台本を書き上げたのだそう。「例えば父を殺され、狂気じみたように見えて切れ者でもある点で、ヒトカにはアイデンティティを模索する青年、ハムレットを重ね合わせています。この役を西川大貴さんにお願いしたのは、彼のライブを観て、屈折した世界観がぴったりだと思ったから。ふだんはあて書きはしないのですが、“ここは彼に任せよう”と思ったりしながら台本を書きました」。
作・演出の藤倉梓さん。(C)Marino Matsushima
【観劇レポート】
『氷刀火伝』写真提供:ミュージカル座
『氷刀火伝』写真提供:ミュージカル座
『氷刀火伝』写真提供:ミュージカル座
*次ページで『瀧廉太郎の友人、と知人とその他の諸々』以降の作品をご紹介します!