企業の人材採用

新卒採用で今すぐ使える面接官マニュアル!質問方法・心得を忘れずに

めでたく管理職に昇進すると声がかかるのが採用選考の面接官。いざ指名されると何をどう聞けばいいのか意外と分からないもの。ここでは、新卒採用の面接に不慣れな方でも的確に候補者の人物像を理解するための質問方法や事前準備の心得を紹介する。

桐田 博史

執筆者:桐田 博史

戦略としての人材採用ガイド

そもそも新卒採用面接とは何か

新卒採用の面接官をする前に見ておきたい面接心得

面接官として押さえておきたいポイントとは

面接経験のある社員に面接の定義を聞いてみると、“候補者の能力や会社との相性を確かめること”というような抽象的な回答が返ってくる。決して間違ってはいないが、より正確に言うと、面接とは“候補者の入社後のパフォーマンスを推し量り、優秀な候補者を確実に自社に惹きつけること”なのである。

パフォーマンスを推し量るとは、言わば、プロファイリングのような作業だが、この時、“候補者から聞き出す事実のみに基づいて判断する”ということが肝要になる。候補者は、自分を良く見せたいという心理から、「○○のようにすべきと考えます」というような熱い思いを語ることもあるが、考えることとそれを実行することには大きな隔たりがあるので、パフォーマンスに直結する事実、特に実際に取った行動にフォーカスすべきである。

また一方で、面接官も候補者から見られていることを忘れてはならない。経験豊富な面接官ほど「自分の鍛えぬいた選球眼で判断してやる」という態度を取りがちだが、優秀な候補者はいくつもの会社から内定をもらうため、その中から自社が選ばれるような努力が必要になる。

<目次>  

事前準備が面接のクォリティを決める

自分が面接する候補者の情報は、通常、面接の前日までに人事部から知らされる。新卒採用の場合、
  • 履歴書
  • エントリーシート(自己PRや志望動機などが書かれた書類)
  • 適性診断の結果(行動特性や性格などを分析するテストの結果)
  • 筆記試験の結果
  • 成績証明書
などの資料をセットにして渡されることが多いが、面接官の仕事はまずこれらの資料を読み込むことから始まる。

その際のポイントは、
  • 資料から明らかになっている事実と、確認が必要なこと(不明瞭な点)を明確に分類すること
  • 不明な点を確認するための質問を考えること
の2点である。

面接に慣れていない場合、候補者の話を聞きながら次の質問を考えるという作業が予想以上に難しく感じるため、事前に複数の質問を考えておくことは重要になる。

また、履歴書の写真や自己PRの文章などを見ていると、つい、候補者の人物像を想像してしまいがちだが、勝手なイメージは面接の場で客観的な判断を下す際の足かせになることが多いので注意が必要だ。
 

ミスジャッジを防ぐ質問方法

候補者の採否を判断するためには、自社の求める資質や能力を正しく理解しておくことが大前提となる。しかし、多くの場合、“求める人材像”は非常に抽象的な言葉で表現されているため、面接の前にそれらの言葉を構成する要素について関係者に確認しておくことが必要になる。

例えば、「自ら考え適切に行動できる人」という人材要件の場合、それを実現するための要素としては次のような資質が考えられる。
  • 主体性、積極性 ← 「自ら」を達成するために必要
  • 論理的思考力 ← 正しく考えるために必要
  • バイタリティ ← 行動を起こすために必要
  • 状況適応力 ←適切に行動するために必要
※会社によって言葉の定義が異なるため確認が必要

分解された資質のことをコンピテンシーと呼ぶが、面接では候補者がこれらのコンピテンシーを有しているかどうかを見極めることになる。

そのコンピテンシーを正しく見極めるための質問手法として「STAR」といわれるモデルがある。候補者が話すエピソードについて以下の4つの項目を明確にすることで、どのようなコンピテンシーを持っているかを明確にするという考え方である。
  • Situation (どのような状況だったのか)
  • Target (その状況下でどのようなゴールを設定したのか)
  • Action (そのゴールを達成するためにどのような行動を取ったか)
  • Result (その結果どうだったか、また、その結果をどう受け止めているか)

例えば、「なぜ、1日も休まず遅くまで練習したのですか」と聞いた時、「強い先輩もそうしていたからです」という回答であれば、持続性はあるが自ら戦略を考える力は確認できないということになる。

なお、一般的には、「T」を“Task”と置いて候補者の役割を確認することが多いが、どの業務においても目標を明確に定めたうえで取り掛かることが重要であるため、“Target”とする方がより正確に判断できる。その際、役割に関しては“Situation”の一つとして質問するとよい。
 

判断基準がブレると正しい評価はできない

候補者のコンピテンシーが確認できても面接は終わりではない。そのコンピテンシーのレベル感を評価してはじめて面接完了となる。

一般的には、4-5段階で候補者のコンピテンシーを評価することが多いが、自分の中に絶対的な基準を持つことは難しい。そこで、直近の1-2年で入社した複数の若手社員のレベルを基準点に設定することをお薦めする。この時、人事から渡される面接評価シートが5段階であれば中央に、4段階であれば下から2つ目に基準点をセットする。こうすることで、何人面接をしてもブレずに評価を行うことができる。
 

面接官の態度で学生の志望意欲は驚くほど変わる

冒頭で、面接官も候補者から見られていることを忘れてはならないと書いたが、実際、入社を承諾した内定者にその決め手を聞いてみると、“面接官の対応から社風の良さを感じたこと”というコメントは意外と多い。

優秀な候補者を惹きつけるために真摯な対応姿勢が必要であるということは言うまでもないが、それだけでは充分とは言えない。いくつもの内定の中から自社を選んでもらうためには、彼らが会社を決めるにあたって重視していることについて魅力的に伝えたり、疑問や不安に思っていることを丁寧に解消する必要がある。

そのためには、面接という限られた時間の中で、彼らからの質問を受ける時間を可能な限る多く取ることがポイントになる。人物評価に時間を多く割いてしまっては充分な時間が取れないので、優秀だと判断した候補者については、予定の質問を削るくらいの覚悟が必要になる。
 

【参考】STARモデルにおける具体的な質問サンプル

◎候補者が、クラブ活動で優れた成果を出したことをアピールしてきた時の質問例

【Situation】
  • そのクラブは最初から強いチームだったのですか
  • 練習環境はどのようなものでしたか
  • チームが優れた成果を出した中であなたはどのような役割を果たしてきましたか
【Target】
  • チームの目標をどのようにして決めましたか
  • それは過去の目標と比べてどれくらい高いものでしたか
  • 目標の達成に向けてポイントだと思ったことは何ですか
Action
  • 目標を達成するための行動はどのようなプロセスで決めましたか
  • 数ある選択肢の中からなぜその行動(方法)を選んだのですか
  • その行動を取る中でどのような工夫をしましたか
  • 行動を続けてきた中でどのような困難があり、どのようにクリアしてきましたか
【Result
  • あなたが取った行動はどのような結果をもたらしましたか
  • その結果についてどのように考えていますか
  • 結果を含む一連のプロセスから何を学びましたか

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