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薄れつつある「中古軽視」の住宅観。活発になる既存住宅市場の流動化

2006年6月に「住生活基本法」が施行されてから、今年(2014年)で8年余りが過ぎました。

わが国の住宅政策は同法により、建てては壊すという「スクラップ・アンド・ビルド(新築住宅の重視)」から、長期耐用住宅を建てて長く大切に住み続けようという「ストック重視(中古住宅の重視)」へと方針転換が図られました。「新築」と「中古」の垣根は低くなり、新築至上主義(新築偏重)への信仰は薄らいで行きました。これまで予算面で新築住宅に手が届かないため、仕方なく“妥協の産物”として中古住宅を選んでいた人々の住宅観に変化が生じています。

こうして中古住宅流通の活性化が図られるようになったのですが、近年はアベノミクス効果でインフレ期待が高まっていることもあり、自宅マンションを高く売り、アップグレードを伴った買い替えを志向する人が目立つようになりました。

そうした中で、稀(まれ)に自宅マンションの売却時、「すでに支払った修繕積立金を返してほしい」と管理組合に返金請求するケースを目にします。その時点で使われずに残っている修繕積立金に対し、持分割合に応じた既払い分を返還してほしいというのです。

もし、こうした返金請求があった場合、管理組合は返すべきなのでしょうか。それとも、拒否するべきなのでしょうか。無論、管理組合としては断りたいはずです。では、どうやって相手を説得すればいいのでしょうか ――。

以下、本稿ではどのような対応を取ればいいのか、そのノウハウをお伝えします。

修繕積立金は区分所有者にとっての「債務」となり、他方、管理組合にとっては「債権」 となる

まず初めに修繕積立金とはどういう金銭なのか復習しておきましょう。

修繕積立金とは、将来にわたって安全・安心・快適な生活が送れるよう、マンションの共用施設や各種設備を常に最適な状態に維持すべく、定期あるいは必要に応じて実施する修繕工事のための原資です(文末参照)。

さらに、建物の建て替えに係る合意形成に必要となる調査の費用や、敷地および共用部分などの管理に関し、区分所有者全体の利益のために特別に必要となる管理費用にも利用が可能です。使途を明確に限定しているのは、管理費との区分会計が曖昧(あいまい)にならないようにするためです。

このように修繕積立金は管理運営組合において、とても大切な金銭です。そのため、区分所有法では「各共有者(区分所有者)は規約に別段の定めがない限り、その持分に応じて共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する」と定めています。管理費や修繕積立金の支払い義務を、一様に区分所有者に負わせているのです。

つまり、修繕積立金(管理費も含め)は区分所有者にとって「債務」にほかならないのです。一度、滞納すると、全額回収できるまで管理組合は督促を続けます。管理組合にとって修繕積立金(管理費も含め)は「債権」だからです。会計上、修繕積立金は管理組合において、「債務」と「債権」両方の金銭的性格を持ち合わせています。

修繕積立金の返金請求に、管理組合は応じる必要なし 

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修繕積立金の返金請求に管理組合は応じる必要なし!

こうした点を踏まえ、修繕積立金の返金請求に管理組合は応じる必要があるのでしょうか?――

結論として、合理性のある特別な事情がない限り、区分所有者の要求に応じる必要はありません。前段の通り、区分所有者の手を離れた修繕積立金は納入後、管理組合の債権となります。債権とは、特定の人に対して財産上の行為を請求する権利を意味します。

2004年4月、長期滞納していた管理費などの返金を巡り、最高裁判所から判決が言い渡されました。「管理費などの債権は区分所有者に対して発生するもので、その請求期間は5年間とする」と結論付けました。つまり、管理組合は滞納した管理費や修繕積立金を5年以内に回収しないと、消滅時効により回収不能になると判示したのです。「債権」「債務」とは最高裁でも争いの対象になるほど、重要な権利かつ義務なのです。

まとめとして、分譲マンションにお住まいの区分所有者の皆さんは、例外なく修繕積立金という「債務」を負います。一方、支払われた積立金は管理組合にとっての「債権」となり、帰属先は管理組合に移管されます。つまり、引き落とされた段階で、修繕積立金は“管理組合のもの”になるのです。返金請求はできないものと、お考えください。

<参考> 分譲マンションの修繕積立金とは?

次に掲げる特別の管理に要する経費に充当する場合に限って取り崩すことができる積立方式による金銭を指します。

  • 一定年数の経過ごとに計画的に行なう修繕
  • 不測の事故、その他、特別の事由により必要となる修繕
  • 敷地および共用部分などの変更
  • 建物の建て替えに係る合意形成に必要となる項目の調査
  • 敷地および共用部分などの管理に関し、区分所有者全体の利益のために特別に必要となる管理
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