東日本大震災のあった2011年の12月に、享年83で他界した建築家・菊竹清訓の多岐にわたる業績を、模型や図面、スケッチなどの貴重な資料で紹介する展覧会です。
会期:2014年10月29日[水]~2015年2月1日[日]
開館:10:00~16:30
休館:12月29[月]~2015年1月3日[土]
会場:文化庁 国立近現代建築資料館 東京都文京区湯島4-6-15
TEL=03-3812-3401 URL=http://nama.bunka.go.jp/
入場方法:
[ 展覧会のみ閲覧 ](平日のみ利用可能)事前申込の上、湯島地方合同庁舎正門よりご入館できます。入館無料。
[ 都立旧岩崎邸庭園と同時観覧 ](休館日12月29日~1月3日)都立旧岩崎邸庭園からもご入館できます。事前申込は不要です。旧岩崎邸庭園の入園料(一般)400円が必要です。
©株式会社菊竹清訓建築設計事務所
福岡県久留米市出身。早稲田大学理工学部建築学科卒業の後、竹中工務店、村野・森建築設計事務所を経て、1953年に菊竹清訓建築設計事務所を開設。1960年代後期から70年代にかけ、独自のデザイン論である『代謝建築論 か・かた・かたち』を掲げ、黒川紀彰らとともにメタボリズムを提唱する。早稲田大学理工学部講師、千葉工業大学教授、早稲田大学理工学総合研究センター客員教授を歴任。
4つの視点で菊竹の活動を振り返る
建築家菊竹清訓の活動を振り返る本展では、原図や当時の写真、スケッチやメモ、模型などの建築資料を4つの視点により編集して、その業績と建築理論を紹介しています。資料が納められたドーナツ状のガラスの展示ケースと、その中心に代表作の模型が置かれ、周囲の壁面には作品の原図や当時の写真、スケッチなどが4つのテーマに沿ってレイアウトされている。
1. 大地からの離陸
筑後川の氾濫をまじかに体験し、農地解放によって久留米の実家の土地をほとんど失うという若き日の経験から、菊竹は「土地を安全不変のものとしてその上に安住せず、人間の立つ地面は人間が造る」という思想を培いました。家族の棲むワンルームを4枚の壁柱で浮かせ、大きなピロティーを設けることで地面と床を切り離した自邸《スカイハウス》(1958)や、十字形の柱とプレキャストコンクリートの井桁組架構により空中に持ち上げられた《国立京都国際会議場設計競技案》(1963)を中心に、その思想の原点をたどります。
《スカイハウス》の模型などが展示されたロフト階。
上《国立京都国際会議場設計競技案》(1963)の模型 早稲田大学理工学術院古谷誠章研究室所蔵
下 《国立京都国際会議場設計競技案》断面図 ©株式会社菊竹清訓建築設計事務所
2. 水面からの浮上
菊竹は、1960年東京で開催された世界デザイン会議で、「メタボリズム」の思想と造形を示した建築家の中心的なメンバーの一人でした。菊竹が中心としたテーマは、「海上に都市を築く」アイデアでした。建築を都市の問題につなげ、人工環境のあるべき姿に対して今日につながる数々の提案を《海上都市1963》を中心にして展示しています。
上《海上都市1963》スケッチ ©株式会社菊竹清訓建築設計事務所
下《海上都市1963》模型 撮影:菊竹清訓
会場の中心には《ハワイ海上都市》(1971)などの模型が展示されている。
3. 空気を包む
大地、海から離陸した建築を数多く発表した菊竹ですが、空気を包み込むように環境をつくるドーム型建築も構想していました。それは、船をモチーフにしたとされる白のスチールパネルで覆われた大屋根を戴く《萩市民館》(1968)や、鉄骨の天蓋方式で造られた《都城市民会館》(1966)などを通して、その構想を知ることができます。
《都城市民会館》模型。撮影:株式会社 川添・小林研二写真事務所
《都城市民会館》の竣工当時の写真と図面が並ぶ。
4. 現代への挑戦
先端的な技術革新が、建築・都市・環境を大きく変化させることを強く予感していた菊竹は、人々の生活空間と先端技術の関係に注目していました。日本の柱・梁の構造をコンクリートで表現した《出雲大社庁の舎》(1963)、厳島神社の鳥居から構想した組み構造の柱を持つ《ホテル東光園》(1964)などから、「重要なことは未来に対するイメージをどう読みとるかにかかっている」という強い信念に基づいた果敢な挑戦を見ることができます。
《ホテル東光園》構造模型 撮影:小山孝
オリジナルの椅子とビデオ映像も必見
階段を上がったロフト階では、菊竹の学生時代のスケッチや、スカイハウスの模型と、実寸大のスカイハウスの内部写真を背景にして、菊竹のデザインしたオリジナルの椅子とテーブルの実物が展示されています。また、約13分の映像「菊竹清訓」と早稲田大学の古谷誠章研究室が編集した約8分のインタビュー映像がビデオ上映されています。加えて、会場入口でも建築家・穂積信夫氏へのインタビューと、遠藤勝勧、小川惇、長谷川逸子3氏による鼎談の映像をご覧いただけます。こちらも見逃せません。