老後、生活費は自然にスケールダウンする
定年退職後は、ほとんどの家庭は収入ダウンしますが、家計支出の構造も変わることをご存知ですか? 減る支出と増える支出があり、トータルすると現役時代より支出額が減るのが一般的です。つまり、月々にかかる生活費は自然にスケールダウンするということですね。具体的な費目を見てみると、減る支出の代表は、国民年金保険料、生命保険料、住宅ローン、子どもにかかるお金です。●国民年金保険料+生命保険料
60歳で払い込みが満了しますので、月1万6610円(令和3年度)の支出が減ります。生命保険料は60歳または65歳払い込み満了にしてあれば、それ以降の保険料はなくなり、月数千円~数万円が浮きます。
●住宅ローンの返済
60歳か65歳で払い終わるようにしてあれば、それ以降の返済はなくなります。この支出がなくなるのは、老後の家計には大きい朗報です。
●子どもにかかるお金
おそらく50代には終わっているはずですが、遅くも60代に入ったら、かからないようにしたいものです。
こうしてみると、住宅ローンや生命保険料などの固定費は60歳か65歳には払い終えるようにしておくことが、退職後の生活費を自然にスケールダウンさせる要素だとわかります。
ちなみに、筆者は60歳で生命保険料と国民年金保険料が払い済みになったので、月々の生活費は約5万7000円減り、だいぶ楽になりました。一方、増える支出は、通・入院でかかる医療費、健康維持のためのサプリメント代、子や孫との交際費や援助などです。みなさんの家庭ではどうなりそうか、シミュレーションしてみてください。
少ない生活費で楽しく生きられる発想とは?
では、少ない生活費で楽しく生きられる発想について「仕事」「家族」「趣味」「友人関係」の4つの視点で考えてみました。仕事:健康維持・認知症予防のために続けられるだけ続ける
人生90年超は当たり前の時代は、生涯現役、それがムリでも75歳か80歳までは働く覚悟が必要です。というと、「楽しくない!」「ムリ!」という声が聞こえてきそうですが、これまでの仕事をそのまま続けろということではありません。楽しみながらできる仕事を、身体にムリのない範囲で働くという意味です。公的年金収入があるわけですから、現役並みに収入を得る必要はありません。月数万円でも、公的年金の足しになり、気分的にも楽です。それに、仕事をしていれば気の張りがあり、身体も頭も動かすので、健康維持や認知症予防にもなり、一石三鳥といえます。「毎日が日曜日」では、時間を持て余してムダな支出をする元です。
コロナウイルスの影響で仕事がなかなか見つからない人もいるでしょうが、焦らず、探してみてください。もちろん収入も大切ですが、あまりそれにこだわらず、楽しく続けられるものを基準に。
家族:子や孫への援助はできる範囲でしかやらない
可愛い子や孫には、ライフイベントがあるたびに資金援助をしたくなりますよね。でも、限りある老後資金から大盤振る舞いをしてしまうと、人生の最晩年にお金に困ることになります。そのとき、子や孫が資金援助をしてくれればいいですが、親にしてもらうことしか経験していない子どもたちに援助を願うのは難しいもの。みなさんが想像している以上に老後は長いですから、老後資金が枯渇しないよう、子や孫への援助はできる範囲でしかやらないと割り切りましょう。
趣味:お金がかからない楽しみ方を工夫する
老後の長い時間は、趣味なくして過ごせません。特に、老後前半の元気なうちは、趣味は欠かせませんね。ただ、限りある収入と貯蓄で費用を賄うことになるので、お金をかけない、かからない工夫や発想をしましょう。例えば、旅行が趣味の人は、回数を減らす、バスツアーなど安いツアーを探すなど。もし、趣味にかかるお金は絶対に削れないなら、他の家計費目を削る工夫が必要です。たとえば、ガーデニングや読書などの趣味であればお金は大きくかかりません。ガーデニングは、春と秋に花の苗を植え替えたり、家庭菜園にして、自家消費する野菜を作ってもいいかもしれません。
読書は、大好きな本だけキープして、繰り返し読むこともあります。好きな本はしばらくたって読み返すと新鮮ですよ。これに飽きたら図書館の無料貸し出しを利用するなどもいかがでしょうか。
ともに、コロナ禍であっても三密を避けることができる趣味ですので、皆さんにもおススメです。
友人関係:割り勘で付き合える人だけ付き合う
退職後は、友人関係は自然に狭まっていくもので、成り行きに任せて友人を減らしていくのも一つの方法です。でも、それは寂しい、友人はどんどん増やしたいと思う人もいるでしょう。古い友人、新しい友人どちらも、お付き合いに必要なお金は割り勘できる人とだけ付き合いましょう。こちらがお金を出してあげても付き合ってもらわなくてもいいと割り切ることも大切です。お金がないと生きられない、生きにくい時代ではありますが、みなさんなりのお金を使わない、使っても最小限で済ませる発想を心がけましょう。
※All About生命保険ガイド・小川千尋さんの記事を編集部が最新情報に加筆
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