7月 最もスーパーな一台、G63AMG6×6
2014年、国内で乗ったさまざまな超弩級のマシンのなかから、最もスーパーな一台を挙げろと言われれば、これを推す。メルセデス・ベンツG63AMG6×6だ。ゲンロク誌の取材で、博多から山口、広島、松山、高知、愛媛、徳島、兵庫、大阪と西日本を縦断。おそらく、世界で最も長く6×6を運転したジャーナリストになったに違いない。
何に驚いたかといって、その運転のしやすさだった。後4輪の安定感がズバ抜けてすばらしく、ノーマルGクラスより攻め込んで走れるんじゃないか、と思ったくらい。ちゃんと思い通りに動いてくれるから、走り出してさえしまえば、大きさに戸惑うこともなかった。バスやトラックが行き交う道を走っているぶんには、なんてことはないのだから!
それにしても、目立った。昼間の街でも、観光地でも、高速でも、歓楽街でも、目立ちに目立った。ある意味、ランボルギーニよりも目立つ。そういう意味では、コレもやはり、スーパーカーだった。
8月 数えきれないほどの美しいクルマたちに出会う
毎年好例のモントレー・オートモーティブ・ウィークが、いちばんの思い出だ。2014年も数えきれないほどの美しいクルマたちに出会った。なかでも、30数台しか生産されなかったフェラーリ250テスタ・ロッサが一カ所(ペブルビーチゴルフコースの18番ホール)に20台も集結したのは圧巻だった。ブガッティヴェイロンをじっくり試乗できたのも、8月の大きな収穫のひとつ。しかも屋根開きグランスポーツ試乗は、日本人×日本の公道では初だろう。とにかく、すさまじいまでにパワートレインの存在を感じるクルマで、エンジンの音はほとんどジェット機。それでいて、動かすことは極めてイージーなのだから、そのギャップに驚かされる。
全身の血が偏ってしまう加速は、正に異次元。クルマのものじゃない。あらためて、ヴェイロンの偉大さを知った。叡智の結晶。文明の、ひとつの最高峰だろう。
ヴェイロンに試乗したあとでは、さすがにフェラーリ458スペチアーレも影が薄かった。というよりも、従来の360チャレンジストラダーレや458スクーデリアより、スパルタンさに欠けると思ったのはボクだけか? 458の単なる進化版にしか思えなかった。いや、それはそれでいいことなんだけれど…。
9月 “世界一のスーパーカー度”ケーニグセグ
盛夏を過ぎ、またぞろクラシックカーラリーのシーズンに突入。富士マウンテンラリーにはMG-TDで参戦し、ラリー競技の本当の楽しさに触れることができた。もっと真剣にのめりこもう。そう思うキッカケとなったラリーだった。ヨーロッパ取材では、ケーニグセグ アゲーラRとパガーニ ウアイラ最新モデルに試乗がかなった。特にアゲーラRの完成度の高さに驚く。ケーニグセグは、タイヤとパワートレインの一部以外、シャシーから、カーボンモノコックボディ、カーボンホイール、ブレーキシステム、エンジンマネージメントまで、すべて自社で開発、製造もする。年産20台弱の規模とはいえ、異様なまでの性能へのこだわりがそうさせたのだ。
街乗りはイージー、加速は猛烈、ハンドリング最高で、ブレーキングは世界一。パフォーマンス面において、今、ケーニグセグアゲーラR&One:1をスーパーカー度において総合的に上回るクルマなど、見当たらないんじゃないか。ラ フェラーリも、マクラーレンP1も、ポルシェ918スパイダーも、見劣りしてしまう。対抗できるのは、スーパーカーをアートに昇華したパガーニ ウアイラだけかも知れない。