島村幸大 群馬県出身。幼い頃から日本舞踊を学び、舞台に出演した経験を持つ。『マンマ・ミーア!』観劇をきっかけに四季を目指し、2008年研究所入所。『ライオンキング』で四季での初舞台を踏み、のちにシンバを演じている。『はだかの王様』『嵐の中のこどもたち』『ジョン万次郎の夢』にも出演。15年5月開幕の『アラジン』オーディションでアラジン役候補に選ばれた。(C) Marino Matsushima
『むかしむかしゾウがきた』撮影:荒井健
九郎衛門との絆のドラマを通して
“命の重み”を丁寧に伝えたい
――ご出演中の『むかしむかしゾウがきた』は、1980年の初演以来度々、上演されています。島村さんも子どもの頃にご覧になっていますか?
『むかしむかしゾウがきた』撮影:荒井健
――本作の見どころは、何と言っても俳優二人が中に入って演じている、ゾウの九郎衛門。見ているとお鼻を内側にも外側にも曲げることが出来て、実によく出来ていますね。どうやって動かしているのだろうと思ってしまいます。
「そうなんですよ。僕が豆をあげると鼻でぱくぱくもするし、耳やしっぽを動かしたり、瞬きや涙を流したりもします。実は一度だけ、僕も中に入れてもらったことがあるんですよ。太郎坊が初めて九郎衛門に会ったとき、怖いながらも触ってみると九郎衛門が喜ぶというしぐさがあります。太郎坊の足が見えたらそれが合図ということになっていたので、九郎衛門の中の俳優の視界がどうなっているか、確認させてもらったんです。でも、入ってみてもどういう仕組みになっているのか、よくわかりませんでした。僕も知りたいです(笑)」
――文楽や立ち回りなど、日本の伝統芸能が巧みに取り入れられている点も本作の魅力ですが、演じる方々にとってはその分、準備が大変でいらっしゃるのではと思います。
『むかしむかしゾウがきた』
――太郎坊は、お殿様への贈り物として唐の国からやってきた象の“九郎衛門”を一生懸命、世話をし、戦が始まってお殿様に“邪魔だから象は殺せ”と言われてからは、彼の命を守るべく、一緒に逃避行をするのですよね。
「ええ、彼は10歳ですがとても芯がしっかりしていて、守りたいと思ったものは何があっても守り抜こうとします。戦に行かなければいけない父ちゃんと約束して、母ちゃんと九郎衛門は僕が守ると心に決めるんです。
『むかしむかしゾウがきた』撮影:荒井健
それくらい象が好きなので、太郎坊たちが逃げ込んだ村で“(九郎衛門を)助けたいんです”と訴えても村人たちが一人二人と去ってしまう場面は、つらくてつらくて。俳優としては冷静でいなくちゃいけないんですけど、こみあげてくるものがあります。その後、九郎衛門が倒れるシーンなんて、本当に信じたくないという気持ちです。彼を抱きながら、太郎坊は(九郎衛門が)“心の中で生きている”というニュアンスの歌を歌います。彼はここで命の尊さを学び、大きく成長するのでしょうね。戦国時代という、現代からは遠い時代の10歳の子どもがそこで何を学ぶのだろうと考えながら、毎回、大切に歌っています」
――無事に初日を勤められましたが、ご自身の中で「こういうふうに膨らませていきたい」と課題にされていることはありますか?
『むかしむかしゾウがきた』撮影:荒井健
*次ページでは“もしかしたら日本舞踊家になっていたかも”しれなかった島村さんがミュージカルの道を志すまでを伺いました!