ストレス

ストレスが原因で風邪をひく? ストレスと免疫の関係

【医師が解説】 慢性的なストレスは免疫系にダメージを与えます。ある程度、免疫力が低下すれば、それまで以上に風邪を引きやすくなります。今回はメンタルヘルスに関連する話題として、そんな風邪の引き方を防ぐために、知っておきたいポイントを詳しく解説します。

中嶋 泰憲

執筆者:中嶋 泰憲

医師 / メンタルヘルスガイド

メンタルと風邪

マスクをする女性

ストレス・ホルモンの過剰分泌が慢性化すると、免疫系も悪影響を受けます

心と体は表裏一体です。実際、体の調子が悪ければ、気分もあまり冴えないもの。反対に、メンタルが不調な状態では、健康的な食事をしっかり用意するのも億劫かもしれません。体調も今一つになりがちで、風邪も引きやすくなります。

今回はメンタルヘルスのトピックとして、メンタル面からの風邪予防のポイントを詳しく解説します。
 

免疫系の状態で変わる風邪のひきやすさ

「体がだるい」、「喉が痛い」といった風邪症状は、その原因ウイルスが体内で私たちの生理機能にダメージを与えた結果だといえます。しかし、そのダメージ自体は通常1~2週間で片付く問題です。それは、少し(場合によってはかなり)辛いその1~2週間で、免疫系がウイルスを体内から完全に駆除してくれるからです。

もっとも、その風邪の原因ウイルスに直面した時、もしも当人の免疫系がいわばパーフェクトな状態ならば、ウイルスが体に入ったあと、そのパーフェクトな免疫系が、何か風邪症状が出る前に、ウイルスを体内から駆除するかもしれません。つまり、風邪ウイルスに感染しても、何か症状が出る前に治る可能性があります。

実際、皆さまの周りにも「風邪なんか、ここ何年も引いていない!」という方がいるかもしれません。でも、風邪をよく引かれる方もいます。その違いを作る理由として、例えば、免疫系の調子が今ひとつの場合、何かの折に風邪ウイルスが体に入れば、その症状が出やすくなっている可能性もあります。
 

風邪症状がストレスホルモンで深刻化するメカニズム

ストレスが免疫系に及ぼす悪影響には、いわゆるストレス・ホルモンがかなり関わります。

それで、この「ストレス・ホルモン」という言葉ですが、それは、何らかのストレス時に、その状況にしっかり対処できるように、心身の生理機能を調整する物質として、体内で分泌される、アドレナリンやコルチゾルといった物質を総称します。

そうした「ストレス・ホルモン」の役割がよくイメージできますように、ここで、少し極端な例を出してみます。それは、誰かが野原を歩いていた時です。突然、その人の目の前に大きな蛇が現われたとします。もしその蛇に襲われたら、悲しい顛末で終わる可能性もあります。蛇に背を向けても逃げ出すべきか、それとも、覚悟を決めて、蛇を威嚇すべきか、直ちに決める必要があります。その緊張で。心臓は激しく鼓動し、同時に呼吸は浅く速い、切迫したものになっているかもしれません。そして、全身に押し寄せてくる恐怖は、言葉で形容できるレベルを大きく超えているかもしれません。

この時、体内ではかなりのストレス・ホルモンが一時的とはいえ、分泌されます。それは私たちの生理機能を、その場の危機に対処しやすいものへと、調整するためです。ストレス・ホルモンは具体的には、ノルアドレナリン、アドレナリン、そして、コルチゾールなどですが、なかでも最後に挙げたコルチゾールは、私たちの免疫系を調節する、重要な物質です。

少し専門的な話ですが、コルチゾールは体内の副腎から分泌されるステロイドホルモンの1つです。いくつかある、その生理作用の一つが、免疫系の機能の抑制です。それでもし毎日のストレスがかなりのレベルで持続していれば、このコルチゾールが、かなりのレベルで持続的に副腎から分泌されることになります。これを少し専門的に形容すれば、免疫系はコルチゾールの刺激にさらされ続けることになります。

その結果、免疫系はコルチゾールの刺激に慣れてしまう、言い方を変えれば、コルチソールにあまり反応しなくなってしまいます。その意味するところは、本来、コルチゾールが免疫系を刺激することで、その状況では望ましくない、免疫系の一部の機能を抑制することが難しくなります。具体的にはサイトカインなどが介する炎症反応をなかなかコントロールできない…といったことです。

風邪症状のなかの、「喉が痛い」あるいは「咳が出る」といった症状は、このサイトカインが介する問題だと言われています。

それで言いたいポイント自体は、ストレスが慢性化した場合、以上のメカニズムが関わり、風邪症状が通常よりはっきり出てくる可能性があるということです。
 

風邪対策としても大切なストレス対策

現代はストレス社会です。仕事の重圧で胃がきりきりする、あるいは周囲のちょっとした一言に腹を立てる事もあるかもしれません。そして、そのたびにストレス・ホルモンは体内で分泌されます。

慢性的なストレスが生み出す問題の1つが、ここまで述べてきた、ストレス・ホルモンの過剰分泌です。前述の繰り返しになりますが、風邪の原因ウイルスに対する抵抗力がかなり弱まる可能性もあります。これを裏返せば、ストレス対策は風邪の予防になります。もしも慢性的なストレスが既にかなりのレベルになっていれば、すぐに対策を考えるべきです。例えば、配偶者との仲が……。あるいは転職しようか悩んでいる……といった状況の方々は、そのストレス状況にしっかり対策を考える必要があります。

慢性的なストレス状況で起き得る、免疫力の低下は、風邪を引きやすくするだけでなく、このコロナ禍での、コロナウイルスに対する抵抗力もかなり弱める可能性があります。それで、ストレス対策のポイント自体は、当たり前に聞こえそうですが、以下の3点です。「充分な睡眠」、「栄養バランスの取れた食事」そして「適度な運動」です。そのほか、コロナ禍のなかでの風邪対策としては、「体を冷やさない!」といった事などにも、それまで以上に、どうかご注意してください。

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