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田村一行『おじょう藤九郎さま』インタビュー!(7ページ目)

大駱駝艦の拠点・壺中天(こちゅうてん)で、この冬上演を迎える田村一行振付『おじょう藤九郎さま』。青森県八戸地方の民俗芸能「えんぶり」を題材に10月に八戸市南郷文化ホールで上演し、好評を博した話題作が待望の東京初演を果たします。ここでは、開幕に先駆け田村さんにインタビュー! 作品の成り立ちとその想いをお聞きしました。

小野寺 悦子

執筆者:小野寺 悦子

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今年の10月に八戸で初演を迎えています。現地の反応はいかがでしたか?

田村>荒谷の方々はもちろん、別の組の方も観に来てくださったりして、ロビーで“すごく良かったよ!”とか、“ウチの組にも来てくださいよ”などと声をかけていただきました。楽しんでもらえたようで良かったです。心のどこかで、“怒られるんじゃないか”とビクビクしていたところがありましたから。ただ本番のときちょうど台風が迫っていて、収穫が一刻を要するということで、親方は来られませんでした。そういうところがまた、地元に根ざした感があってほんわりしました。

壺中天での再演が決まったときは、すごく嬉しかったです。再演用に舞台美術を仕込んでいると、初めて「えんぶり」を見た日の景色が蘇ってきて……。その雰囲気が、 東京で観る方に少しでも伝わればいいなと思っています。『おじょう藤九郎さま』を踊っていると、土地やひとのことを思い出したり、八戸を近くに感じられる気がする。また八戸の風を感じられるんだと思うと、今からとても楽しみです。それに初演は一回だけの公演でしたけど、今回は10ステージあります。きっと作品もますます進化していくでしょう。

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『おじょう藤九郎さま』八戸公演 (c)Hiroki Umenai



壺中天での再演にあたり、アレンジはされるのでしょうか?

田村>振付自体はあまり変えるつもりはありません。ちょっとした反省点は直していきますけど、基本的な構成は変えないつもりです。ただこれは再演の難しさでもあるんですけど、動きだけをなぞろうとすると大抵ダメになりますね。どういう状況でどういうことを感じたか、身体にどういうことが起こって、どんなものがどんな風に身体を動かしたのか。そういうことを丁寧に掘り起こして再現していった方が上手くいくのだと思います。だから、常に新鮮な気持ちでやらなければいけない。振り帳をつけるのも、そのときの自分の状況をなるべく丁寧に思い出すため。そうでないと、形だけをなぞった、中身のないスカスカなものになってしまう。そういったことを、稽古場でみんなと思い出していくつもりです。

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荒谷えんぶり組から借りた旗(八戸公演にて)

八戸で公演をしたときは、現地の空気を感じながらできたけど、東京だと電車に乗って会場まで行かないといけない訳ですから、また気持ちも雰囲気も変わってくる。でも八戸に滞在した時間や、そこで得た感覚を大切にすることで出てくるもの、想うからこそ出てくるものがきっとあるし、実際あらわれるのだと思っています。そのような現象を信じて身体と向き合う、それこそが自分の踊りなのだと考えています。

再演をすると伝えたら、八戸のみなさんも喜んでくださいました。またこれからも違う土地で再演をすることで、微力ながら「えんぶり」を知る人が少しでも増えたらとも思います。そしてご覧いただいた方が、作品を観終わった後に一瞬でも自分の故郷に思いを馳せて、少しでもその特別な場所を違った景色として感じていただけたら嬉しいです。実際、八戸公演のアンケートに“「えんぶり」ってこんなにかっこいいんだ!”と地元の方が書かれていたのは、ちょっと嬉しかったですね。

会ったこともない何世代も前の爺ちゃんが、会うこともない孫のために豊作を願い唄ってる。自分たちが今こうしてご飯を食べることができるのは、その爺ちゃんの願いがあったからなのかもしれない。そんな風に感じられたら、すごくロマンチックですよね。


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荒谷えんぶり組や地元のみなさんと



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