「おしりかじり虫」が大ヒット
ガイド:翌年、2007年には大きな出来事がありましたね。松前さんが共同作曲と編曲を手がけたうるまでるびさんの「おしりかじり虫」の大ヒット! じわじわとオリコンで週間6位まで昇りつめ、しかもかなり長い間ヒットしたんですよね。何か予感みたいなものはあったのでしょうか?
NHKみんなのうた おしりかじり虫(DVD付) (amazon.co.jp)
おしりかじり虫 (YouTube)
松前:
まず、絵やコンセプトを作ったうるまさんから「みんなのうた、決まったよ」って連絡があって、最初にうるまさんが作った、簡単なリズムに鼻歌っぽく歌っていた「おしりかじり虫」を、「みんなの歌」で放送するクオリティに作り直すのが僕の役割だったんです。それで雰囲気を残しつつ、自分のテクノテイストも盛り込んで、更に大サビは完全に僕が付け足しました。なのでここだけ僕のソロ作品みたいなメロディアスなプログレテクノ風になってるでしょ(笑)?
ガイド:
はい、聴く人が聴けばわかる(笑)。ある意味、教育的です。
松前:
編曲やトラック制作はすべて僕が大阪でやりました。最後にうるまさんと僕とで東京で声を入れたんです。歌は二人の声が場所場所で混ざっていますが、エフェクトかけちゃうとどちらでも同じ声になりました(笑)。
「かじられちゃって、チョーいーかんじー」っていう女性の声はうちの嫁(松前真奈美)です。完成してある程度話題にはなるだろうとは思いました。なにしろ「おしり」と「虫」ですからね。子供が好きなものがつまってる(笑)。でも、紅白に出場する程になるとは思いませんでしたね。
うるまでるびさんとのコラボ
ガイド:子供というフィルターがあると正当化しやすい(笑)。
うるまでるびさんとはどのような繋がりで、コラボすることになったのですか?
松前:
元々はウゴウゴルーガに関わったアーティストなどに知り合いが多くて、うるまでるびさん達とも友人だったんです。それで、「おしりかじり虫」が完成するまでにもかなりたくさんのアニメーション作品作っているんです。NHK「えいごリアン」の中のコーナー「カプセル侍」は、僕が歌っていますし、「くさびる」というへんなキャラの歌も作ってます。「おしりかじり虫」の後は、「スミ子」「Go!Go!選挙(劇伴)」などもやりました。
カプセル侍 (YouTube)
くさびる (YouTube)
あなたの態度が気に入らない/スミ子 (YouTube)
Go!Go!選挙 (YouTube)
「みんなのうた」はテクノポップが多い
ガイド:NHKの『みんなのうた』からは数々のテクノポップの名曲が生まれてきましたが、この曲もそのひとつではないかと。子供って、反復性がある電子音(ロボ声も含めて)が好きなんだと思うんですよね。同時にアレンジは結構、オケヒットから始まり、ヒップホップでもあり、フォークルの「帰って来たヨッパライ」的でもあり、いろんなものが凝縮されています。子供がそれに気づいたかは別にして、そういう大人の遊びも入っていますよね。
松前:
そうですね。複雑な音色よりもシンプルな音の方が子供に訴えかけるのでしょうね。元々僕はそういうサウンドなので、あまりそこまで意識して作る必要もなかった訳ですけど。「帰って来たヨッパライ」はテープの速度を変えて録音する事でへん声にしていますが、テープではなくパソコンでレコーディングする時代なので、声のエフェクトはWAVES社のUltra Pitchというプラグインを使っています。音程やフォルマントという声の成分を自由に変える事が出来るんですが、これをちょうどいい感じになるように値を調整します。効果をしっかり出しつつ、かけすぎると濁ったり不自然な音になるのでそのあたりの調整ですね。
Ultra Pitch (WAVES)?