労務管理/労務リスク管理

会社の運動会・スポーツ大会で怪我!労災でこれって認定される?

労災は、仕事中に怪我などをした場合に使える制度ということはよく知られていますが、何でも対象になるわけではありません。会社の運動会・スポーツ大会怪我をしたケースで、労災は認定されるのか、労災という制度を見ていきましょう。

渋田 貴正

執筆者:渋田 貴正

企業経営のサポートガイド

労災保険とは?対象は業務災害と通勤災害の2種類

労災認定…会社・職場・社内の運動会・スポーツ大会などでの怪我は

労災の認定を受けるためには要件を満たしていることが必要です

会社で人を雇用したら必ず加入しなければならない保険。それが労働者災害補償保険(以下労災保険といいます)です。

一口に労災といっても、その中には業務中の災害である業務災害と、通勤中の災害である通勤災害の2種類の災害が含まれています。今回は、この2種類の労災のうち、業務災害について見ていくことにします。
 

労災「業務災害」の要件1.業務遂行性

業務災害とは、その名の通り業務中の災害のことをいいます。業務災害と認められる上で満たすべき要件として、「業務遂行性」と「業務起因性」が挙げられます。

まず、業務遂行性について見ていきましょう。業務遂行性とは、簡単に言うと労災がおこったときに会社の支配下にあることをいいます。具体的には、次のような場合に業務遂行性があると認められます。
  • 社内で業務をしている場合(工場のライン作業中や、社内でのパソコン操作中など)
  • 社外で業務をしている場合(営業の外回りや、出張など)
  • 業務中以外で会社の管理下にある場合(社内での休憩中など)
業務をしている場合といっても、例えば業務中にトイレに行く場合や、外回りで合間に喫茶店に入る場合なども含まれます。3については、例えば社屋の窓枠が壊れているのを会社が放置していて転落事故が起きたというように、会社側に特に責任がある場合のみ認められます。タバコ休憩中にやけどしてしまったような場合は労災とは認定されないということですね。
 

労災「業務災害」の要件1.業務起因性

業務遂行性とともに、もう一つ業務災害の要件となっているのが業務起因性です。業務起因性とは、労災が業務中の行為が原因で発生したことをいいます。言い換えると、その業務を行っていれば、ほかの人でも同様の災害が生じる可能性があった場合ともいえます。

例えば、社内の階段から足を踏み外して怪我をした場合は、誰でもそうした事故に遭遇する危険がありますので、業務起因性が認められます。一方で営業の外回り中に、自分に対して個人的に恨みがある人に襲われたような場合は、業務遂行性は認められても、個人的な事情で被災したので業務起因性は認められません。なので、このケースでは労災とは認定されないことになります。
 

労災ケーススタディ:社内運動会での怪我

上に書いた通り、業務災害と認定されるには、業務遂行性と業務起因性が必要でした。では、会社主催の運動会に出場して骨折した場合はどうなるのでしょうか。2つの要件を満たすかどうかで、このケースが労災認定されるかどうか見ていきましょう。

まず、業務遂行性について検討します。「会社主催なんだから業務中でしょう。」とも思えますが、ここで重要なのは、運動会に参加することが会社の中で業務の一環として取り扱われているかどうかということです。この運動会への参加が、通常の出勤日と同様に取り扱われ、給与や日当などの支給対象となるなど、会社への出勤と変わらないように取り扱われていれば、業務遂行性が認められます。そして、この場合は運動会の競技は業務の一環であり、また競技中の骨折は誰にでも起こりうる危険性があるので、業務起因性も認められることになります。

では、この運動会が自由参加だったらどうでしょうか。自由参加の場合は業務遂行性が認められず、労災の認定は受けられないことになります。参加するのが当然といったような社内の暗黙のルールみたいなものがあったとしても、社内の制度上自由参加の場合は業務外として取り扱われるのです。
 

会社側も労災の発生を防ぐための予防を

最近では、業務中の怪我などの事故に加え、過剰労働による自殺などの精神的疾病にも労災の適用範囲は拡大されています。こうした中で、会社側にも施設などハード面での安全性と、労働環境などソフト面での安全性の両方が求められるようになっています。労災保険法では、会社が労災の発生を防ぐための安全への配慮を怠っていた場合には、かかった費用の30%を会社が負担する旨が規定されています。また、ひとたび重大事故が起きれば、社会的信用にも傷がつきますし、業務への支障も避けられません。労災があるから大丈夫といって過信せず、施設の安全性や、従業員の働き方への配慮を心がけて、労災を予防することが大切です。

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