マネジメント/マネジメントの基礎知識

知ることでマネジメントがよくわかる、CSRの本質とは

近年、企業マネジメントのキーワードとして注目度が高まりつつあるCSRという言葉。一般に企業の社会的責任と訳されるCSRですが、企業ボランティア活動やメセナなど企業の社会的貢献と混同されることも多く、必ずしも正しい理解がなされているとは言えない現状です。今回は日本でCSRの考え方が登場した背景や、実際にどのような取り組みが行われているのかに触れながら、その正しい意味を紐解きます。

大関 暁夫

執筆者:大関 暁夫

組織マネジメントガイド

CSRの3要素とは

今では当たり前のように使われているCSR(=企業の社会的責任)という言葉ですが、その深い意味や背景について「実はよくわかっていない……」という人も多いのではないでしょうか。

歴史をひもとくとCSRという概念は1920年代に生まれたとされています。意外かもしれませんが、舞台は「教会」。当時、欧米の教会はその活動の一環として企業への投資も行っていたのです。しかし、なんでもかんでも、というわけではありません。教会としてのモラルも考えてのことでしょう、武器・酒・タバコ・ギャンブルに関わる投資は控えていたと言います。「反社会的なものに加担はしない」、この教会の姿勢が「企業の社会的責任」として現在のCSRに転じたのです。

では現在のCSRとは具体的に何をどうすることなのでしょう。はじめにCSRに不可欠な3つの要素を掲げて、少し噛み砕いて説明してみたいと思います。

解説

CSRでは社員の働きやすさもまた、継続的に確保されることが求められる

まず第一の要素として、「ステークホルダーとの良好な関係が築かれていること」。ステークホルダーとは、企業との利害関係にあるもの全てで、消費者、投資家、従業員、地域社会等がこれにあたります。すなわち、企業をとりまくこうしたものと良好な関係を築いてこそ安定と発展が得られ、ひいては社会的な責任も果たせるというわけです。

第二の要素としては、「CSRへの取り組みによって、自社を含む社会全体に継続的な利益をもたらすこと」。その場だけではなく「継続性」が求められるということが重要です。例えば、過去に起きた環境破壊について考えてみましょう。こうした問題は企業が短期的に利益を追求した結果ではないか、そうした姿勢は正すべきだという反省からCSRの要素として「継続性」が重視されるようになったのです。

そして第三の要素。「企業が、『経済』『環境』『社会』、3つの観点からバランス良く貢献を実現していること」、別称トリプル・ボトムライン(ボトムラインは最終利益の意)と呼ばれる考え方です。第二の要素で取り上げた「継続性」には、この3つがバランスよく配分されていることが求められるのです。

そして最後に、3つの要素の大前提であり何よりも大切なこととして、コンプライアンス(企業の法令遵守)がCSRの最も基礎的な取り組みとして中核に位置づけられると言うことを忘れてはなりません。コンプライアンスを意識できない企業にはCSRは実現しえない、ということになるのです。
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