≪住宅地の地価動向/2017年7-9月期 地価LOOKレポート≫ |
2014年4月に消費税率が引き上げられた後に景気回復は思うように進まず、次の増税は先送りされることになりました。これからの2年あまりは、実感できる経済成長に向けてどのような政策がとられるのか、その行方にも注意が欠かせません。
そんな中でも大都市圏を中心に土地の取引は活発に行なわれ、地価の上昇傾向が鮮明になってきています。これが地方圏にどう広がっていくのか、今後の動向に注目したいところです。
国土交通省から「地価LOOKレポート」の第28回分(平成26年第3四半期)が発表されましたので、住宅地を中心にその動きを確認しておくことにしましょう。
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地価の下落地区がゼロに
都市部では土地取引が活発に
上昇が前回の120地区から124地区に増えるとともに、調査開始以来初めて下落地区がゼロとなりました。横ばいは26地区(前回28地区)です。
上昇地区が全体の82.6%を占めるようになりましたが、第1回調査では3%を超える上昇地区が52.0%だったのとは対照的に、今回は3%を超えたのが2地区(1.3%)にすぎず、以前の地価上昇期に比べればかなり「緩やかな上昇」だといえるでしょう。
名古屋圏は6回連続ですべての地区が上昇、大阪圏は7回連続で下落地区がゼロ、東京圏は今回から下落地区がゼロになりました。
しかし、東京圏では上昇地区が9割(89.3%)を占めたのに対し、大阪圏の上昇地区は76.9%です。上昇地区の広がりの点では、東京圏のほうに勢いがあるのかもしれません。
なお、地価LOOKレポートでの全国の主要都市における調査対象は150地区で、そのうち住宅系地区は44(東京圏20地区、大阪圏14地区、名古屋圏4地区、地方圏6地区)です。
【地価LOOKレポート】 (国土交通省サイト内へのリンク) |
第25回 平成25年第4四半期 (平成25年10月1日~平成26年1月1日) |
第26回 平成26年第1四半期 (平成26年1月1日~平成26年4月1日) |
第27回 平成26年第2四半期 (平成26年4月1日~平成26年7月1日) |
第28回 平成26年第3四半期 (平成26年7月1日~平成26年10月1日) |
地価LOOKレポートには地価動向(総合評価)のほか、取引価格、取引利回り、取引件数、投資用不動産の供給、オフィス賃料、店舗賃料、マンション分譲価格、マンション賃料の動向(それぞれ3区分)が記載されています。 |
地価LOOKレポートでは地価やその変動率について具体的な数値を示すのではなく、6%以上の上昇、3%以上6%未満の上昇、0%超~3%未満の上昇、横ばい(0%)、0%超~3%未満の下落、3%以上6%未満の下落、6%以上9%未満の下落、9%以上12%未満の下落、12%以上の下落の9段階に分類されています。
住宅系地区は8割が上昇に
住宅系地区では、上昇が35地区(前回33地区)で、横ばいが9地区(前回11地区)となり、下落地区は前回に引き続いてゼロでした。その一方で、3%を超える上昇地区は4回連続で表れていません。上昇 (6%~) | |||||
上昇 (3%~6%) | |||||
上昇 (0%~3%) | |||||
横ばい (0%) | |||||
下落 (0%~-3%) | |||||
下落 (-3%~-6%) | |||||
下落 (-6%~-9%) | |||||
下落 (-9%~-12%) | |||||
下落 (-12%~) | |||||
住宅系地区では、前回まで3回連続して横ばいだった横浜市青葉区(美しが丘)と川崎市麻生区(新百合ヶ丘)、2回連続で横ばいだった横浜市都筑区(センター南)がいずれも上昇となりました。 東京圏は、いずれも横ばいの千葉県内を除き、すべてが上昇となっています。
東日本大震災の影響などから下落が続いていた千葉県内も、2回続けて3地区すべてが横ばいであり、下げ止まり傾向が定着してきたといえるでしょう。
その一方で、京都市中京区(二条)は前回まで4回連続だった上昇から、今回は横ばいになっています。これで京都市内の4地区および滋賀県草津市(南草津駅周辺)がすべて横ばいとなり、大阪、神戸あたりとは対照的な動きをみせているようです。それ以外の地区は前回と同様の動きを示しています。
なお、札幌市中央区(宮の森)および東京都江東区(豊洲)が12回連続の上昇、川崎市中原区(元住吉)が13回連続の上昇、神戸市東灘区(岡本)および兵庫県芦屋市(JR芦屋駅周辺)が16回連続の上昇でした。
商業系地区も下落はゼロに
商業系地区では、上昇が89地区(前回87地区)、横ばいが前回と同じく17地区で、下落はゼロ(前回2地区)となりました。前回まで下落が続いていた千葉市中央区(千葉港)と長野市(長野駅前)がいずれも横ばいになり、商業系地区で下落がなくなったのは、第1回調査以来約7年ぶりのことです。今回から上昇となったのは、東京都新宿区(歌舞伎町)、東京都立川市(立川)、福岡市中央区(大名・赤坂)で、とくに歌舞伎町は平成20年第3四半期に調査対象へ加えられて以来、初めての上昇でした。
その一方で、滋賀県大津市(大津におの浜)は前回までの上昇から、今回は横ばいへとペースダウンしています。
なお、東京都中央区(銀座中央)は4回連続、東京都新宿区(新宿三丁目)は2回連続で「3%以上6%未満」の上昇となっています。
上昇 (6%~) | |||||
上昇 (3%~6%) | |||||
上昇 (0%~3%) | |||||
横ばい (0%) | |||||
下落 (0%~-3%) | |||||
下落 (-3%~-6%) | |||||
下落 (-6%~-9%) | |||||
下落 (-9%~-12%) | |||||
下落 (-12%~) | |||||
地価LOOKレポートでは住宅系地区、商業系地区とも下落がなくなりましたが、もともと「主要都市の高度利用地」を対象としているため、上昇傾向が強く出やすい側面はあるでしょう。
地方圏だけでなく、3大都市圏の郊外でも依然として地価下落が続くエリアが広がっています。また、地価急騰といった状況は表れておらず、上昇も比較的緩やかなものです。
しかし、停滞が続く経済環境とは裏腹に、株価の上昇と相まって不動産への投資も活発になっており、今後の地価動向には十分に注意しなければなりません。
住宅系地区における過去1年間の地価動向を一覧にして、次ページにまとめてあります。全体的な動きを知るための参考にしてください。
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