国内の景気回復局面は1960年代後半からの「いざなぎ景気」を超え、戦後2番目の長さになったのだそうです。

また、日経平均株価の終値は10月に「16営業日連続の上昇」を記録し、56年9か月ぶりに過去最長を更新、11月7日には25年10か月ぶりの高値をつけ、1996年6月の「バブル崩壊後の高値」を更新しました。

しかし、景気拡大をなかなか実感できないのは、そのスピードが緩やかで、経済効果の及ぶ範囲が一部の業種などに偏っていることも原因でしょう。ちなみに、上昇が続いた株価もバブル期の最高値(1989年12月:3万8915円)と比べれば、半値近い水準にすぎません。

その一方で、国内の地価も全体的には緩やかな上昇傾向が続いているようです。ただし、その上昇傾向には東京都の住宅地が含まれません。これはいったいどのような状況でしょうか。

国土交通省から「地価LOOKレポート」の第40回分(2017年第3四半期の動向)が発表されましたので、住宅地を中心にその動きを確認しておくことにしましょう。



地価動向は落ち着いた状態が続く

三宮駅前のクリスマスイルミネーション

今回、唯一の変化がみられたのは神戸市中央区(三宮駅前)

地価LOOKレポートは「先行的な地価動向を明らかにすること」を目的として国土交通省が3か月ごとに発表しているもので、2007年第4四半期分から始まり今回が40回目(ちょうど10年)です。

調査対象の100地区のうち、上昇は86地区、横ばいは14地区で、いずれも前回と同じでした。下落は13回(3年3か月)連続でゼロとなっています。

名古屋圏は18回(4年6か月)連続ですべての地区が上昇、大阪圏は19回(4年9か月)連続で下落地区がゼロ、東京圏および地方圏は13回(3年3か月)連続で下落地区がゼロでした。

その一方で、「6%以上」の上昇地区も4回(1年)連続のゼロであり、地価が急騰するような動きはみられません。

また、「上昇幅の縮小、上昇から横ばいへ」などマイナス方向への推移地区は、4回前が10地区だったのに対し、その後は3地区、2地区、2地区と減少し、今回はゼロになっています。

それに対して、商業系地区でプラス方向への推移(上昇幅の拡大)が1地区ありました。前回と変わったのはこの1地区だけであり、全体的には変化の少ない状況が続いています。

なお、地価LOOKレポートにおける調査対象のうち、住宅系地区は32(東京圏14地区、大阪圏10地区、名古屋圏3地区、地方圏5地区)です。


 【地価LOOKレポート】 (国土交通省サイト内へのリンク)

第37回 2016年第4四半期
(2016年10月1日~2017年1月1日)

第38回 2017年第1四半期
(2017年1月1日~2017年4月1日)

第39回 2017年第2四半期
(2017年4月1日~2017年7月1日)

第40回 2017年第3四半期
(2017年7月1日~2017年10月1日)

地価LOOKレポートには地価動向(総合評価)のほか、取引価格、取引利回り、取引件数、投資用不動産の供給、オフィス賃料、店舗賃料、マンション分譲価格、マンション賃料の動向(それぞれ3区分)が記載されています。


地価LOOKレポートでは地価やその変動率について具体的な数値を示すのではなく、6%以上の上昇、3%以上6%未満の上昇、0%超~3%未満の上昇、横ばい(0%)、0%超~3%未満の下落、3%以上6%未満の下落、6%以上9%未満の下落、9%以上12%未満の下落、12%以上の下落の9段階に分類されています。


住宅系地区は東京都だけ地価上昇の止まった状態が続く

住宅系地区では上昇が22地区(うち1地区は3%以上6%未満の上昇)、横ばいが10地区で、いずれも4回連続で同じ結果となりました。

住宅系地区の変動 (地区数の全国計)

区 分
第36回
第37回
第38回
第39回
第40回

上昇 (6%~)
0
0
0
0
0

上昇 (3%~6%)
1
1
1
1
1

上昇 (0%~3%)
22
21
21
21
21

横ばい (0%)
9
10
10
10
10

下落 (0%~-3%)
0
0
0
0
0

下落 (-3%~-6%)
0
0
0
0
0

下落 (-6%~-9%)
0
0
0
0
0

下落 (-9%~-12%)
0
0
0
0
0

下落 (-12%~)
0
0
0
0
0

合  計
32
32
32
32
32

住宅系地区における横ばいの10地区のうち、8地区を東京都が占め、それ以外は千葉県柏市(柏の葉)と京都市左京区(下鴨)だけです。

また、東京都内の8地区のうち、7地区は5回(1年3か月)連続の横ばい、1地区は4回(1年)連続の横ばいであり、地価上昇傾向が完全に止まってしまった感もあるでしょう。

その一方で、札幌市中央区(宮の森)が8回(2年)連続して「3%以上6%未満」の上昇となり、上昇は24回(6年)連続です。また、兵庫県芦屋市(JR芦屋駅周辺)は28回(7年)連続の上昇でした。

西日本では京都市左京区(下鴨)を除くすべての地区で上昇が続くなど、東京都とそれ以外では対照的な動きとなっています。

ただし、東京都でも商業系地区は18地区のうち横ばいは1地区のみであり、住宅系地区と商業系地区が対照的な点にも注意しなければなりません。

ホテルやオフィスなどの用地需要、再開発、投資マネーの流入などの要因がない住宅地は、都心であっても地価上昇につながりにくいのでしょう。


商業系地区の上昇割合は過去最高を継続

商業系地区では上昇が64地区、横ばいが4地区で、いずれも前回と同じ結果でした。上昇地区の割合は94.1%で、前回に引き続き地価LOOKレポートの開始以来、過去最高となっています。

「3%以上6%未満」の上昇地区が前回より1地区増えたものの、「6%以上」の上昇地区は4回連続してゼロとなり、全体的に緩やかな上昇が続いているといえるでしょう。

なお、名古屋市中村区(太閤口)が11回連続、名古屋市中村区(名駅駅前)、大阪市中央区(心斎橋)、福岡市博多区(博多駅周辺)の3地区が10回連続、大阪市中央区(なんば)が9回連続、札幌市中央区(駅前通)が8回連続、仙台市青葉区(中央1丁目)が6回連続で「3%以上」(3%以上6%未満、または6%以上)の上昇となっています。

また、熊本市中央区(下通周辺)が2回連続で、神戸市中央区(三宮駅前)が今回から「3%以上6%未満」の上昇になりました。

商業系地区の変動 (地区数の全国計)
 
区 分
第36回
第37回
第38回
第39回
第40回

上昇 (6%~)
2
0
0
0
0

上昇 (3%~6%)
9
11
9
8
9

上昇 (0%~3%)
48
51
54
56
55

横ばい (0%)
9
6
5
4
4

下落 (0%~-3%)
0
0
0
0
0

下落 (-3%~-6%)
0
0
0
0
0

下落 (-6%~-9%)
0
0
0
0
0

下落 (-9%~-12%)
0
0
0
0
0

下落 (-12%~)
0
0
0
0
0

合  計
68
68
68
68
68



住宅系地区における過去1年間の地価動向を一覧にして、次ページにまとめてありますので、これまでの変化を知るための参考にしてください。


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