労働者としての不満や悔しさ、地元で待つ恋人への思い。
船底で働く機関士バレットが命の間際でどう行動するのか
■撮影レポ&インタビュー~藤岡正明さん
藤岡さんは機関士バレット役。ボイラー室で石炭にまみれて働く男です。撮影時は顔に汚しを入れて、すっかりガテン系に。船底で汗びっしょりになり働いている姿が思い浮かびます。ガテン系かと思いきや、バレットの歌うナンバーは、「バレットの歌」「プロポーズ」と叙情的で美しい曲ばかり。藤岡さんの美声で聴けるのは耳福ですね。
撮影:Miow Hirota
オーディションでのトムさんは、
穏やかながら演劇に対して熱い印象
——扮装のご感想は?予想していたよりきれいだったな、と(笑)。タイタニック号の歴史を調べてみたら、当時の労働者の環境は劣悪でしたから。まあ、僕は小ぎれいな役よりも小汚いほうが得意なので。
——扮装とは逆に、バレットのソロナンバー「プロポーズ」がめちゃくちゃ美しいのがツボですね。以前から、藤岡さんにピッタリな役だと思っていました。
いや~(照)、頑張ります。
シリアスな表情でカメラを見つめる。
鈴木綜馬さんは『レ・ミゼラブル』でご一緒させていただいて、それ以来。古川雄大君は今、『ファースト・デート』で一緒。シルビア・グラブさんは共演は2本ですが、ライブでよく一緒に歌っていますから、久しぶりという感じはしないですね。
——演出家のトムさんとはお会いになりましたか。
オーディションの時に。『ミス・サイゴン』の「ホワイ・ゴッド・ホワイ」を歌いました。『タイタニック』という作品の音楽性がクラシカルなものなのか、ポップスに近いものなのかわからなかったので、どちらでもいけそうな曲を選びました。トムさんに、どちらの雰囲気で歌ったほうがいいかを訊ねたら、クラシカルなほうで、との指示でしたね。トムさんは穏やかな方でしたが、演劇に対してすごく情熱がある印象を受けました。
——トムさんにはお稽古で絞られそう?
どうでしょうね?以前、日本で上演された『タイタニック』はグレン・ウォルフォードさんが演出しましたが、僕も『ブラッド・ブラザーズ』でグレンさんの演出を受けました。グレンさんは僕のこの10年の役者人生の中でベスト3に入る演出家だと、大変刺激を受けました。
ウエストを調節中。ちょっと素の顔?
なおかつグレンさんは日本語がわからないのに、「今、台詞変えたね」と、台詞に対して敏感でした。「台本に忠実にやってください」とも言われました。そういった意味では、役者としてやらなきゃいけないこと、やっていい限界がどこなのかの線引きをしてもらえる、役者の力を引き出すのがすごく上手い演出家だと思いました。恐いオーラを出して、お前それじゃだめだ!というタイプの演出家もいらっしゃるでしょうけど、そうではなく、役者が可能性を持って演技に取り組めるように背中を押してあげられる演出家はいいな、と。