ブリュッセルの歴史

ベルギー王国は、1831年にオランダから独立した若い国です。そう聞くと、それまでは歴史も文化も何もなかったかのように錯覚する方もいるかもしれません。「近代国家」としては新しいものの、今日ベルギー王国となっているあたりは、欧州の中で、歴史的に、地政学的に、とても重要な位置を占め、中世の頃から商工業で栄えたところです。

マグリット美術館もその一部です

高台にある王立美術館は必見

その首都であるブリュッセルのあたりを治めていたのはブラバント公爵でした。そのブラバント公爵がフランダース伯爵と婚姻によって結ばれ、そのフランダース伯爵がブルゴーニュ公爵と婚姻によって結ばれ、さらにそのブルゴーニュ公爵がハプスブルグ家と結ばれ…、と、統治する一族の関係により領地の境界が変わっていきました。代々の統治者は、ブリュッセルに宮殿を構えていましたが、それが今、≪王の広場≫と呼ばれる王立美術館の建っているあたりです。

神聖ローマ帝国皇帝でありスペイン王でもあったカルロス5世は、1500年ゲントに生まれ、ここブリュッセルで神聖ローマ帝国皇帝となり君臨しました。

カルロス5世の父親(美公フィリップと呼ばれた)は、ブルゴーニュ公爵マリーと神聖ローマ帝国皇帝ハプスブルグ家のマキシミリアンの間に生まれた人で、母親はスペイン王女フアナ。スペインの領土が欧州から世界へと広がり「日の沈まぬ大帝国」と言われた頃、ブリュッセルは、まさしくそのヘソともいえる都市だったのです。そのため、歴史文化遺産には事欠かないのです。

日本では、チョコやビールの話が主に注目されるベルギー。考えてみれば、有名なチョコレートも、常に豊かな街であったからこそ、贅沢品として生まれたとも言えます。たくさんの博物館の中から、豊かさの片鱗を感じていただけることでしょう。


ベルギー王立美術館群

最初に紹介するべき博物館は、何と言っても王立美術館。古典・近代、世紀末、マグリットの三つの美術館と、少し離れたイクセル地区に、王立美術館に属するヴィールツ美術館とムニエール美術館を含めた博物館群です。中には、しゃれたカフェもあり、食事もお茶もできます。美術好きな人は、時々座って休憩しながら一日中楽しむことができるでしょう。

■古典・近代美術館
15世紀から18世紀までの作品と、「世紀末美術」のジャンルに含まれない近代の作品がここに展示されています。

ネオクラシック様式のコラムが目立つ

王の広場に向かう道が古典の入口

古典の中では、日本ではあまり紹介されない初期フランダース派の作品をぜひ鑑賞してください。油絵の技術を確立させ、オーク材のパネルに描き始めた、美術史上とても重要な画家たち。それまで、宗教画では金色に輝くように描かれていた聖人を、顧客であったブルジョワ階層の人たちの生活空間に描き始めたとされています。ここでは、そんな中から、ヴァン=デル=ウェイデン、バウツ、メムリンクなどの作品が展示されています。

また、ボッシュは、顧客の好みに左右されず、独特の不思議な世界を描いた画家で、後の世代のブリューゲルにも大きな影響を与えています。空を飛ぶ魚や、人間と鳥を混ぜたような怪奇な生き物たちなど、まるでアニメ「千と千尋の神隠し」を思わせる世界。ボッシュを好んだスペイン王フェリペ2世が、多くの作品をスペインに持ち帰ってしまったため、この美術館で観られるのは、『キリストの磔刑』、『聖アントワーヌの誘惑』(複製)だけになっています。

同じように、ブリューゲルの作品も、オーストリア大公統治時代、ハプスブルグ家によってウィーンにたくさん持ち出されてしまったので、ブリュッセルにはあまり残っていません。画家ブリューゲルは、スペイン統治時代、税金取り立てや異端審問などで苦しんだ庶民に寄り添った反体制派の画家でした。そのやさしい画風の中に、実は、体制に対する皮肉や風刺が込められています。

ゆっくりと時間をかけて鑑賞しましょう

ルーベンスの展示室は迫力満点

バロック時代では、ルーベンス、ヴァン=ダイク、ヨールダンスらの作品が多く展示されています。広々としたルーベンスの展示室には、彼の大作が何点も置かれており、とても見ごたえがあります。

近代の作品は、スペースの都合上、常設ではなく、いつも同じものが観られるわけではないのですが、第2次大戦後、コペンハーゲン、ブリュッセル、アムステルダムを拠点に活動した、若い芸術家グループCOBRA(コブラ)のメンバーだったアレシンスキーの作品や、イギリスの画家フランシス・ベーコンの作品などが見られます。

現代の作品の中で、日本人にも興味深いのが、「昆虫記」を書いたジャン=アンリ・ファーブルの子孫ヤン・ファーブルの作品です。彼は、アントワープ出身の現代アート作家で、コンテンポラリー・ダンスの振り付けでも有名。自身をモデルにしたワックスとブロンズによる頭部の立体作品などが見られます。


■世紀末美術館
以前は古典・近代のセクションから成っていた王立美術館。近代部門を数年をかけた改修した結果、2013年12月に、世紀末美術館として生まれ変わりオープンしました。

19世紀末から20世紀初頭、産業革命が進み、新興ブルジョワ階層が生まれた時代。社会派とされる芸術家の作品や、象徴主義の絵画・彫刻作品、アールヌーヴォーの調度品などが展示されています。

社会問題に大いにコミットした絵画作品や彫刻作品、さらにはワーグナーのオペラとも縁の深い絵画の数々、アールヌーヴォーでは、エミール・ガレによるガラス工芸品、ヴィクトール・オルタによる家具や暖炉など、興味深い展示があります。


■マグリット美術館
彼の生涯を追う展示が魅力

日本でも人気のマグリット美術館

ベルギーを代表するシュールレアリズムの作家マグリットは、日本にもファンの多い画家です。展示は彼の生涯を時系列で追う形になっており、子供時代の母親の自殺、生涯をともにした妻ジョルジェットとの出会い、多くの知識人・芸術家との交流や彼らから受けた刺激、第2次大戦といった出来事などが、彼の作品に与えた影響などがわかるようになっています。

矛盾した世界をひとつのキャンバスに描き出したマグリット。たそがれのような美しい青色と街灯、宙に浮く岩、何を象徴しているのだろうと考えさせられる鈴などなど、不思議な彼の世界を味わってください。

<DATA>
■Musées Royaux des Beaux Arts/Koninklijkmusea(王立美術館)
住所:Rue de la Régence / Regentschapsstraat 3 1000 Brussels
Tel:+32 (0)2 508 32 11+32 (0)2 508 32 11
(古典美術館 世紀末美術館 マグリット美術館 いずれも)
開館時間 :火曜日~金曜日 10:00~17:00 土曜日・日曜日11:00~18:00
入場料 :単独券8ユーロ 65歳以上6ユーロ、6歳~25歳2ユーロ、5歳以下無料
3つの美術館共通券13ユーロ(65歳以上9ユーロ、6歳~25歳3ユーロ、5歳以下無料) 特別展示12ユーロ(世紀末美術館入場込み) 毎月第1水曜日は13時より無料。


■ムーニエール美術館
美術好きならゆっくり楽しみたい

郊外にあるムーニエール美術館

ブリュッセル南部の郊外、イクセル地区の美しいカンブルの森のはずれに、王立美術館の別館であるムーニエール美術館があります。ここは彼の自宅兼アトリエだったところで、今では年間を通して、入場無料で訪ねることができます。

19世紀、目覚ましい発展を遂げた鉄鋼業と、そのエネルギーをもたらした石炭。ベルギーはこの時代に繁栄を極め、多くのアーティストたちが、モチーフにしたのだそうです。ムーニエールも、そうした芸術家のひとりとして、炭鉱や鉄鋼業に従事する労働者を多くの作品の中に描き出しだのでした。

王立美術館本館の特設展示では、2015年1月11日まで、このムーニエール展が行われています。

<DATA>
Musée Constintin Meunier(コンスタンタン・ムニエール美術館)
住所:Rue de l'Abbaye / Abdijstraat 59 1050 Brussels
Tel:+32(0)2 648 4449+32(0)2 648 4449
開館時間:(特別展期間終了後2014年1月12日以降)月曜日~金曜日 10:00~17:00 土・日曜日 11:00~18:00
入場無料

■ヴィールツ美術館
ゆっくり鑑賞できるこじんまりした美術館だ

自然博物館にも近いヴィールツ美術館

欧州議会のすぐ近くに、王立美術館の別館であるアントワン・ヴィールツ(1806-1865)の美術館があります。ここは、もともと彼のアトリエであったところで、生前の彼自身とベルギー政府との約束のもと、彼の絵画、彫刻、デッサンなどの作品が公開されてます。ヴィールツは、19世紀の画家、彫刻家、知識人で、象徴主義の先駆けともいえるロマン主義の芸術家です。

ヴィールツは、ミケランジェロ、ラファエル、ルーベンスらから影響を受け、ギリシャ神話などを題材に、ドラマチックで神秘的な描写を好みました。中でも、幅8メートルもある「パトロクロス」、死と狂気を感じさせる「早すぎた埋葬」、彼の作品の中でもっとも有名な「麗しのロジーヌ」などは必見です。

<DATA>
Musée Wiertz(ヴィールツ美術館)
住所:Rue Vautier / Vautierstraat 62 1050 Brussels
Tel:+ 32 (0) 2 648 17 18+ 32 (0) 2 648 17 18
開館時間:火曜日~金曜日 10:00~12:00 13:00~17:00
入場無料