老朽化とともに滞納問題は深刻化
この調査結果によると、築30年以上のマンションの場合、そのおよそ3割が「6か月以上の長期滞納者がいる」と回答しています。
滞納額の増加を放置すると、将来的に共用部の維持管理に必要な経費を支払えなくなるばかりか、大規模修繕工事の実施計画にも支障が出かねません。
最終的に滞納を回収できなくなった場合には、管理費等の徴収額を増やさざるを得なくなりますし、それもできなければマンション全体の資産価値低下につながりかねません。
一方、実際に滞納問題が悪化したマンションのケースを検証すると、初期段階での管理組合側の姿勢や対応自体にも問題がありました。
管理組合の運営をサポートする立場として、マンション管理士が管理費等の滞納問題を悪化させないために何をすべきかご案内します。
滞納債権の範囲と特性について
まず、基本的な知識を押さえておきましょう。1) 滞納債権の範囲
まず管理費等が滞納になった場合、管理組合が認識すべき債権の範囲として、管理費等の未払金以外に次の費用項目も加算されます。
・遅延損害金
・違約金
遅延損害金については、一般的な管理規約上に定め(年利14.6%が一般的。特に定めがない場合は、民法上の年利5%を適用)があるので、それに従います。また、違約金については、督促に要した費用、法的措置を採る際の弁護士費用などが該当します。
2) 滞納債権の消滅時効
毎月一定額を支払う管理費や特別修繕費にかかる債権は、「定期給付債権」に当たるとされ、消滅時効は5年です。
したがって、管理組合としてはなるべく時効が到来しないよう債権を管理する必要があります。たとえば時効を中断させるには、支払の催告だけでは不十分で、催告の時から6か月以内に裁判上の請求等(下記参照)を行う必要があります。
【時効中断の事由】
(1) 裁判上の請求(支払督促申立て、少額訴訟を含む)
(2) 差押え、仮差押え、仮処分
(3) 承認(債務者による支払猶予の申出、承諾書の提出等)
ただし、訴訟を提起し、判決によってその債権が確定した場合には、別途「判決で確定した権利の消滅時効」(10年間)が進み始めますので、その点は留意が必要です。(下記条項参照)
【民法174条の2】
(判決で確定した権利の消滅時効)
第百七十四条の二 確定判決によって確定した権利については、十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする。裁判上の和解、調停その他確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利についても、同様とする。
2 前項の規定は、確定の時に弁済期の到来していない債権については、適用しない。
次ページでは、滞納が発生した初期段階で実施すべき業務をご案内します。