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スポーツによる脳震盪、正しい知識で選手を守る重要性

フィギュアスケートの羽生選手に脳震盪を疑わせるアクシデントがあり、ニュースとなっています。繰り返すことで長期的な後遺症が残りかねない脳震盪は、皆の正しい知識で選手を守ることが必要です。身近で起こった場合にどうすればよいのか、その対処法についてもご紹介します。

山田 恵子

執筆者:山田 恵子

医師 / 女性の健康ガイド

脳震盪(のうしんとう)とは?
意識消失のない場合もあります!

フィギュアスケートの羽生選手に脳震盪を疑わせるアクシデントがあり、ニュースとなっています

フィギュアスケートの羽生選手に脳震盪を疑わせるアクシデントがあり、ニュースとなっています

「震盪」(しんとう)とは「激しく振り動かすこと」を意味するので、「脳震盪」は「脳が急激に振り動かされて起こる症状」ということになります。ラグビーやアメフト、柔道やボクシングなどの格闘技でよく起こります。外傷の衝撃によって一過性に脳のはたらきの異常が生じますが、時間とともに軽快、回復する症状を指します。通常脳の検査などをしても異常所見が見られません。その病態には脳内のしくみが複雑に関わっているといわれています。外傷直後ではなく、しばらくしてから起こることもありますが、その場合、一般的には24~48時間以内に発症します。

具体的な症状としては、
  • 頭痛、めまい、ぼーっとする、目の焦点が合わない、ふらつく、力が入りにくい、反応が遅い、意識消失、おう吐、日時が言えない、どこにいるのかわからないなど状況認識ができない、意味不明な発言、興奮状態、怒りやすい、神経質になったり不安になったりする、集中力がない、前後の記憶がない、眠気
などといった多彩な症状がありますが、意識が消失しない場合が大多数であるということを知っておくことが重要です。

脳震盪は何が怖いの?……繰り返すことで後遺症に

以前は重篤な頭部外傷などに比べて一過性のものとして、比較的軽く考えられていましたが、繰り返し受傷することで長期的な後遺症があることが知られてきたため、現在では非常に慎重な対処が求められています。実際にアメリカではNFL(アメリカンフットボール)、NHL(アイスホッケー)、NCAA(大学スポーツ)の元選手らがリーグに対し、脳震盪への安全措置を怠ったとして訴訟問題にもなっています。

また、特に若年者は症状が重症化しやすいことと、脳震盪からの回復が遅れがちなこと、さらに脳震盪が重なった場合の後遺症が起きやすいことなどから、より一層の注意が必要です。

脳震盪の繰り返しで起こる代表的な2つの症候群をご紹介します。

  • セカンドインパクト症候群(second impact syndrome)
    一度脳震盪を起こした後、短期間(多くは数週間以内)に次の脳震盪を起こすことで、脳に重大な損傷が生じ、重篤な症状を引き起こすこと。脳の血管がわずかに切れ、完全に回復する前に二度目の衝撃で致命的な出血をおこして発症するのではないかと考えられています。致死率、後遺症率も非常に高いのが特徴です。
  • 慢性外傷性脳症(Chronic traumatic encephalopathy ; CTE)
    長期にわたって繰り返し脳震盪を起こすことで、その影響が蓄積されて脳が変性し、学習能力の低下、攻撃性の増加といった行動の変化、うつ状態、果てには痴呆症状やパーキンソン症状など、さまざまな症状が見られるようになることが知られています。以前、ボクシングでパンチドランクといわれていた症状はこれにあたります。

次ページでは日本とアメリカの専門家の見解をご紹介します。

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