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スポーツによる脳震盪、正しい知識で選手を守る重要性(2ページ目)

フィギュアスケートの羽生選手に脳震盪を疑わせるアクシデントがあり、ニュースとなっています。繰り返すことで長期的な後遺症が残りかねない脳震盪は、皆の正しい知識で選手を守ることが必要です。身近で起こった場合にどうすればよいのか、その対処法についてもご紹介します。

山田 恵子

執筆者:山田 恵子

医師 / 女性の健康ガイド

日本とアメリカ、専門家集団の声明
脳振盪の正しい知識で毅然として選手を守ることが必要

脳震盪の正しい知識は、選手の将来を守ることになります

脳震盪の正しい知識は、選手の将来を守ることになります

日本では柔道などで頭部外傷が報告されているのを受けて、日本脳神経外科学会と日本脳神経外傷学会が2013年12月、「スポーツによる脳損傷を予防するための提言」(外部サイト)を共同で発表しました。スポーツに起因する脳損傷に関して国民が知っておくべき5つの必須項目をまとめた内容で、脳振盪を起こしたら原則としてただちに競技・練習への参加を停止し、競技・練習への復帰は脳震盪の症状が完全に消失してから徐々に行うこと、などを明記していますので、これは記事の最後にご紹介しておきます。

アメリカでも毎年約400万件ものスポーツによる脳振盪が発生しており、米国神経学会は2014年7月、医師には「選手を脳振盪から教育して守る義務、さらに、『選手や親、コーチの反論にも毅然とした態度で』医学的に問題ないと判断できる場合にのみ競技を許可する」という倫理的義務があるという声明(外部サイト)を発表しています。つまり、どこの国でも練習を積み重ねた選手やその周りの人が競技続行を希望するのは非常によくあること。その気持ちや背景を考慮した上でも、選手を守るためには(わざわざ『現時点のみならず未来にわたっての選手の肉体的、精神的な健康』とまで言っています)断固とした態度が必要、ということを明記しています。逆にいえば、脳振盪に対する皆の正しい知識で選手を守ることが必要ということです。

興味がある方はこちらの詳しい方針書(外部サイト)もご参照下さい。

スポーツ中の脳震盪、対処法を教えて……!
原則として競技・練習への参加は停止、復帰は徐々に

原則、脳震盪が起きた場合は試合や練習への参加を停止し、脳震盪の症状が完全に消失してから安静→有酸素運動→競技に関係する運動といった形で段階的に徐々に復帰していく、ということになります。

脳震盪の疑いがある場合は最初の24時間は1人にならないようにし、アルコール、車の運転は避けるようにしましょう。また、はげしい頭痛、けいれん、いつもと違って混乱している、意識がもうろうとしている場合などは病院を受診してください。

さらに、最低でも24時間は体と脳の両方を休ませることが必要になります。具体的には、走る、自転車をこぐなどの身体活動、また勉強やテレビ、ゲームなど脳の活動も控え、絶対安静にします。子供や若年者の場合はさらに慎重な対応が必要になります。重要なのは繰り返さないことです。

スポーツの現場で実際に脳震盪かどうかを客観的に評価する一般的な方法として、10歳以上の選手に使えるSCAT2(Sport Concussion Assessment Tool )という国際的なツールがありますので、興味がある方はご参考にしてください。

■SCAT2(外部サイト)

スポーツによる脳損傷を予防するための提言

1-a. スポーツによる脳振盪は、意識障害や健忘がなく、頭痛や気分不良などだけのこともある
1-b. スポーツによる脳振盪の症状は、短時間で消失することが多いが、数週間以上継続することもある
2-a. スポーツによる脳振盪は、そのまま競技・練習を続けると、これを何度も繰り返し、急激な脳腫脹や急性硬膜下血腫など、致命的な脳損傷を起こすことがある
2-b. そのため、スポーツによる脳振盪を起こしたら、原則として、ただちに競技・練習への参加を停止する。競技・練習への復帰は、脳振盪の症状が完全に消失してから徐々に行なう
3.  脳損傷や硬膜下血腫を生じたときには、原則として、競技・練習に復帰するべきではない
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