「ティス・オータム」ズート・シムズ「イン・ア・センティメンタル・ムード」DVDより

 

In a Sentimental Mood [DVD] [Import]

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「ティス・オータム」という曲も、サックスの演奏では、スタン・ゲッツのものが名演(スタン・ゲッツ・プレイズより)として有名です。今回はそのゲッツの盟友とも、ライヴァルとも目されたテナーサックス奏者ズート・シムズのものをご紹介します。

ズート・シムズは、駆け出しの頃、スタン・ゲッツと並んでソロを取り合う、「フォア・ブラザーズ」で有名になりました。その後、ゲッツはクール・サウンドでいち早くスターダムにのし上がっていきますが、ズートは実力がありながらも今一つメジャーな成功は得られませんでした。

それでもズートは、亡くなる寸前まで、常にプロとして一定のレベルを保った、通好みのミュージシャンと言えます。

ズートの最大の特徴としては、その暖かい音色と、スウィンギーなノリの良いアドリブが挙げられます。

決して、むずかしい事や進歩的な冒険はしませんが、常にスウィングすることに注力して、ミュージシャンや聴衆の皆から愛されたテナーです。亡くなった今でも、日本でも人気の高いテナーの一人です。

ズートの音は、これから冬に向かうシーズンにはピッタリのウォームな音。ゲッツのような匂い立つ色気はありませんが、何を吹いても、聴く者をほっとさせる、ズートっぽい、男くさい演奏になるのが特徴です。

この「イン・ア・センティメンタル・ムード」というDVDは、1984年11月に録られたものです。1985年3月にズートが亡くなる4か月前の演奏です。

その中でも特に印象深い演奏がこの「ティス・オータム」('Tis Autumn)。ティス('Tis)と言うのは、「It is」の省略形で、「まさにそれは秋」と言った題名になります。

1941年に俳優のヘンリー・モネによってつくられたスタンダードソングで、お洒落で粋な歌詞と、秋を感じさせる滋味深いメロディが特徴の大人の曲と言えます。

ここではその秋はとうに越してしまい、人生の冬を迎えたズートが、そのわが身の秋を懐かしむかのように切々と吹いている姿が印象的。

特に綿々たる情緒を湛えたエンディングで、サックスを口から離し、「ラディダー・ディ・ダディダーン」と歌詞にある一節を声にして歌うズートの姿に思わずグッときてしまいます。

最後の最後まで、サックスで男らしく歌った男、ズート・シムズ。白鳥の歌としてこれ程ピッタリな曲はないと言えます。

次のページでは、アカデミー賞候補にもなった伝説のテナーマンの登場です!

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