照明・LED/照明器具・間接照明の基礎知識

「照明」を意識して、質の良い睡眠を得よう(2ページ目)

睡眠は心身が正常な働きを保つために必要な行為です。良く眠れないことで悩んでいる人も少なくないと思いますが、実は眠りを司るホルモンにメラトニンがあります。それは目から入る光に反応します。例えば夜の就寝前は、メラトニンの濃度を高めるために暗めで温かい光が求められます。更にその効果をより高めるため、朝の目覚めは明るく白い光を浴びることです。

中島 龍興

執筆者:中島 龍興

照明ガイド

睡眠ホルモンの「メラトニン」と光の関係

1日のスタートである朝は、体内時計が正常に刻まれる機会です。それは、毎日朝日を浴びることで、ずれた体内時計がリセットされ、1日の生体リズム(サーカディアンリズム)が作られるためです。

起床の光、入眠の光

写真1. 同じ空間で照明の色温度を変えた例

起きたらまず、窓のカーテンを開けます。直接太陽を見ないように、例えばレースのカーテン越しから朝日を部屋に取り入れることを奨めます。

また、天候や窓のある方位の関係などで朝日を直接浴びることが出来ない場合、人工光が補助的な役割を果たします。できるだけ白い光で、ベッドの枕元を中心に明るくなるような照明にすると良いです。光を浴びた後は、しっかりと朝食をとると、さらにその効果が高まります。

逆に夜はほの暗く、暖かい光の下で過ごすことが、睡眠ホルモンであるメラトニンを分泌し、入眠のために必要な環境が生まれます。

照度計

写真2. 青色スペクトルの多い光はメラトニンの分泌を抑える
 

メラトニンは生後間もなくしてから作られます。5、6歳で一番高い濃度になります。夜にメラトニン濃度を高めるために、昼間はできるだけ多くの光を浴びることです。

昔は外で遊ぶ子供が多く、日射しをたっぷり浴びていました。そのため昔の子は午後の8時前後に眠りに就くことが普通でした。しかし現代っ子はあまり外で遊ばないことで、日中に浴びる光の量が少なくなりがちです。

したがって夜になっても眠たくなく、さらにテレビやテレビゲームなどの誘惑で、白く光る発光体(多くは青色スペクトルが強く出ている)を見ている時間が長いことから、より眠れない環境になっている、と思います。


メラトニンの効果

子供の成長に欠かせない成長ホルモンは、夜しっかり眠ることで多く分泌されます。このホルモンは骨格や筋肉を成長させる働きをするので、幼児期から生体リズムを整わせることが重要です。

中学生に入る頃から50歳代後半くらいまでにかけてメラトニンの濃度は減少していきます。働き盛りの40歳ではピーク時の1/6ほどになってしまうのです。加えてこの年代では仕事で遅い帰宅が少なくないと思いますので、せめて家で過ごす時間は照明に注意して入眠しやすい環境を整えることが大切です。うまく睡眠がとれない人に鬱のリスクが高いというデータもあるようです。

以上のように照明は睡眠と覚醒という生体リズムをコントロールする一役を担っています。

最近のLED照明は調光・調色機能を持った製品が次々と開発・市販されています。これからは自身の健康のことを考えると、照明の制御技術を活かし、生体リズムを積極的に整える工夫を試みてはいかがでしょうか。

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