カポディモンテ美術館の見学にあたって
夜のカポディモンテ美術館 (c)Ewa Kawamura
イタリア最大の美術館、国立カポディモンテ美術館は、もともと王宮として建設されましたが、18世紀の建設当初から、美術館としての任務が重要視されていました。カポディモンテ王宮の建物、庭園、美術館の成立の歴史は、もう一つの記事(こちらへ)で説明しましたので、ここでは見どころとなる収蔵品について、フロアごとにご案内いたします。以下、階の数え方はイタリア式で記述してあります。1階とは、メインとなるファースト・フロアで、地上階ではありません。日本語だと2階(中2階を2階と数えると3階)に相当しています。
1階(ギャラリー部)
パルミジャニーノの《アンテア》のある部屋 (c)Ewa Kawamura
最も天井の高いメインフロア「1階」から見学をはじめましょう。まずは、美術館のコレクションの大本を築いたアレッサンドロ・ファルネーゼ(のちのローマ法王パウルス3世)の肖像の並ぶ部屋、彼がラファエロやティツィアーノに描かせた、枢機卿時代から教皇に至る法衣姿の肖像画が、何種類も展示されています。1階のギャラリーは、パウルス3世をはじめとするファルネーゼ家が蒐集したコレクションが中心となっていて、イタリアとヨーロッパの巨匠の筆になるルネッサンス~バロック絵画が多いです。
2010年、上野の国立西洋近代美術館で開催された「カポディモンテ美術館展」に出品された、パルミジャニーノの《アンテア》(1534年)、アンニーバレ・カラッチの《リナルドとアルミーダ》(1601年)、グイード・レーニの《アタランテとヒッポメネス》(1612年)ほか、エル・グレコ、ティツィアーノ、パルマ・イル・ヴェッキオ、コレッジョ、ブリューゲル、ジョヴァンニ・ランフランコ、クロード・ロラン、フランチェスコ・グアルディなどのヴェネツィア都市景観画も、この階に展示されています。
1階(アパートメント部)
カポディモンテ宮殿の宴会用サロン (c)Ewa Kawamura
階の後半は、王族のアパートメントのサロンが続きます。ここには、カルロ7世が創設した王立磁器工場でつくられたカポディモンテ焼きの食器や、武具コレクション、18世紀のナポリの風景画、ブルボン家の王族たちの肖像画が並びます。肖像を担当した画家は、メングス、ゴヤ、カンマラーノ、アンゲーリカ・カウフマン、ヴィジェ=ルブラン、ジェラールらです。最も広い部屋が、宴会用のサロンで、演奏者専用のバルコニーもついていいて、建築家アントニオ・ニッコリーニによる新古典主義様式の内装となっています。
特筆すべきは、カポディモンテ焼きのタイルで飾られた小部屋です。ナポリ近郊のポルティチの王宮にあったものを、1866年、ここに移築したもので、もとは、カルロ3世の妻マリア・アマーリア・フォン・ザクセンの化粧室(ブドワール)でした。1757年、彼女の故郷ザクセンの名品マイセン磁器に対抗して、この部屋はカポディモンテ焼きのタイルで、壁や天井をロココ趣味と中国風(シノワズリー)で見事に装飾されました。
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