ミュージカル/ミュージカル・スペシャルインタビュー

ティム・ライス最新取材&London『エビータ』開幕!(2ページ目)

この秋、ロイド=ウェバー&ティム・ライスの名作『エビータ』が久々にロンドンで上演されます。貧しさのどん底から大統領夫人へと上り詰め、33歳で早逝したアルゼンチン人女性、エバ・ペロン。彼女の生き様をドラマティックに描いた本作は今回、どう舞台化されているでしょうか。プレビュー初日レポートとともに、作者ティム・ライスへの単独インタビューをお届けします。気になる最新情報もお尋ねしてきました!

松島 まり乃

執筆者:松島 まり乃

ミュージカルガイド


最新作『地上より永遠に』は来年米国上陸?!

――昨年春にお会いした時は『地上より永遠に』のキャストオーディションの段階でした(関連記事はこちら)。ぜひ舞台を観たかったのですが、3月に閉幕されたのですね。

「大変申し訳ない。でも舞台映像は撮ってあるんだ。夏に英国全土の映画館で上映をし、来月アメリカでも上映されるから、日本でもそのうちあるかもしれないね。それと並行して、DVD版も製作中だ。(注・英国では11月10日に発売予定)」

――10月に開幕し、半年の公演だったのですね。

「失敗ではないけれど、大きな興行的成功でもない。批評は非常に良かったのだけど、集客が思ったほどでなかった。テーマが難しかったのは確かだ。それに、ショーがヒットするには何かサポート要素が必要なんだよ。主題歌が事前にヒットしているとか、映画の舞台化作品であるとか。今回は作曲家が無名だったしね。


 けれども、そのうち復活すると思うよ。『チェス』だってブロードウェイ初演は成功とは言えなかったし、『ブラッド・ブラザース』も最初は失敗作だと思われたけれど、最終的には大ヒットになった。『ジーザス・クライスト=スーパースター』も、レコード盤は英国では全く売れなかったしね(笑)。だから本作も改めてヒット作になれると希望を持っている。先がどうなるかなんて、誰にも分からないものだよ(笑)」


――作品の仕上がりには満足されているのですね。

「うん、とても満足しているよ。今、ブロードウェイを目指してアメリカ版を作ろうと動き始めているのだけど、作品自体は1,2か所手を入れても、大々的な変更は考えていないんだ。演出家はおそらくアメリカ人になるだろう。英国版の英国人キャストと英国人の演出家もとてもよくやってくれて彼らには何の不満もないけれど、やはり原作がアメリカの物語なのでね」

――既に現地の演出家にアプローチしているのですか?

「前置き風の話はしているけれど、今はDVDが出来あがるのを待っているところなんだ。出来上がったらそれをわたして、“こういう作品だ。現状の演出は忘れてくれていいから、物語のベース部分が気に入るかどうか検討してくれないか”と言うつもりだよ。決定は来年になるだろう」

――どんな演出家を探しているのですか?

「何かいいアイディアを持っている人(笑)。有名である必要はないんだ。作品を愛してくれる人だね」

――ブロードウェイでは今年、あなたが作詞をつとめたディズニー・アニメ『アラジン』の舞台版も開幕しました。この舞台化にはどの程度関わっているのですか?
『アラジン』舞台版のCD。

『アラジン』舞台版のCD。

「全く何も。(『ザ・ブック・オブ・モーモン』等で知られるケーシー・ニコロウの演出・振付のもと)私の作詞曲はそのまま残されているけれど、それに加えていくつか、別の作詞家による新曲が加わった。でも気にしてはいないよ。どのみち、ショーで一番のビッ’グナンバーは私の書いた曲(‘A Whole New World’)だもの(笑)」

――最近のウェストエンドをどうご覧になっていますか?

「古いショーが多すぎると思う。もちろんその中にはとてもいい作品もあるけれど、それらが多すぎることで新作が出て来にくい状況がある。観客の数自体は少なくないので、あと一つ二つ、新作があるといいなという気がするよ。最近の新作でいいと思った作品? あまり無いなあ(笑)。『ザ・ブック・オブ・モーモン』はミュージカルではないし……いや、ミュージカルではあるけれど音楽がそれほど重要なショーではないし……。『レ・ミゼラブル』のような古いショーが永遠にかかっているのをみると、何も変わっていないなあという気がするよ」

――では“いい新作”を作るのに必要なものは?

「いい曲、いいストーリー。十分な宣伝……理想を言えば開幕前に主題歌がヒットしていることだけど、これはなかなか難しいんだ(笑)。たやすければ皆が実践しているだろうね。どうすればヒットするのかはとても大きな謎で、僕にも分からないのだよ、今でも(笑)」

*次頁で『EVITA』ロンドン最新版プレビュー初日レポートを掲載しています。*
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