EDを招きやすい原因はさまざまですが、そのうちの一つに「糖尿病」があります。生活習慣病の代表ともいわれる糖尿病は、血管と神経の両方に悪影響を及ぼします。そこで今回は、EDと糖尿病との関係を考えてみましょう。
「糖尿病+ED」は、糖尿病でない男性の2~4倍
糖尿病の男性患者の中でEDを合併する人は、糖尿病でない人の2~4倍に
糖尿病の男性患者の中でEDを合併する人は42~90%にのぼり、糖尿病でない男性の2~4倍になるという報告があるからです(『ED診療ガイドライン2012年版』より)。
厚生労働省の『2012年国民健康・栄養調査』によると、糖尿病が強く疑われる成人男女は約950万人と推計されています。糖尿病の有病率は5年に1度調査されていますが、前回(2007年)に比べ、約60万人増えたことになります。
その半面、将来糖尿病になる可能性のある「糖尿病予備軍」は約1100万人(前回比約220万人減)でした。いずれにせよ、糖尿病患者の増大はED患者の増大と無関係ではありません。
血管を傷つけることがEDの引き金に
では、糖尿病になると、どうしてEDになりやすのでしょうか。まず、覚えておいていただきたいのは、勃起には一酸化窒素(NO)が大切なはたらきをしているということです。まず、陰茎の海綿体にある神経末端からのNO放出が低下すると勃起が起こりにくくなります。また、陰茎に通う動脈や海綿体の血管内皮細胞からのNO放出が減少すると勃起が持続しにくくなります。
ですから、糖尿病性の自律神経障害や動脈硬化、糖尿病による血管内皮細胞障害は、糖尿病でもたらされるEDの大きな要因と考えられています。また、糖尿病になると動脈硬化も進みやすくなります。
言い換えれば、糖尿病で血糖のコントロールがうまくいかないと、血管内を糖分濃度の高い血液が流れることになります。そうすると毛細血管が傷つけられ、さらに毛細血管を流れる血液から酸素や栄養などを受け取っている神経も傷つけられてしまいます。
EDが動脈硬化や血管障害を知る手がかりに
このように、血管と神経が障害されるので、糖尿病はEDの大きな原因となる理由の一つとされています。つまり、血管の障害によって海綿体に血液がうまく流れ込まなかったり、勃起に関係する神経が障害を受けることで、脳から発せられる性的興奮が陰茎にうまく伝わらなかったりするのです。このため、糖尿病では脳梗塞や虚血性心疾患を合併した人にEDが多いことが分かっています。例えば「無症候性心筋虚血」という病気をもつ糖尿病患者の34%がEDであったという調べがあります。反対に、EDをもつ糖尿病患者は無症候性心筋虚血になりやすいという報告もあります。このことから、糖尿病におけるEDの診断が、無症候性心筋虚血を予測する手がかりになるといえるのです。
この病気は日本では海外ほど多くはありませんが、EDが内皮細胞障害や動脈硬化の前ぶれ、または予知因子であることは確かです。
糖尿病でも心因性EDである場合が多い
「俗説」に対する思い込みからくる心因性EDならば、ED治療薬で改善できる
しかし、糖尿病の男性患者さんがたまたまEDになったとしても、その原因のすべてが糖尿病にあるとは言い切れないこともあるのです。どういうことかというと、EDの症状を訴える患者さんを詳しく検査してみると、勃起機能そのものに問題はなく、心因性EDである場合が多いのです。
冒頭で取り上げた「糖尿病=夜の生活の卒業」の俗説で明らかなように、糖尿病だからEDになりやすいのでは、という思い込みが原因となっている場合もあります。
糖尿病であるなしにかかわらず、特に心因性EDの場合にはジェネリック商品等のED治療薬が有効です。ED治療薬を処方している病医院や、またはED啓発サイトでクリニックを検索し、処方してもらうとよいでしょう。
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