1992年に出版された『ゾウの時間 ネズミの時間』(本川達雄著、中公新書)は標題が示すように、動物のサイズによって、流れる時間の速さや体重あたりの総エネルギー量などがどのように変わるのかという関係を解き明かした、生物学の手ごろな入門書です。

ガイドがサイズや体格の問題に興味を持ったのは、来院される患者さんに比較的大柄の方が多いことに気づいたからです。果たして、ED(勃起不全・勃起障害)と体格との間には、なんらかの関係があるのでしょうか。

肥満度が高いほどEDになりやすい?

肥満とは単に体重が重いことではなく「脂肪組織が過剰に蓄積した状態」を言います。肥満の判定にはBMI(Body Mass Index)※という国際的な基準が用いられます。

米国で行われているMMAS(マサチューセッツ・メイル・エイジング・スタディ)と呼ばれる大規模な調査によると、BMI値が高まれば高まるほどEDは悪化し、改善しにくいという興味深い相関関係が明らかになりました。

日本では、BMI22のときの体重が最も健康的であると考えられており、糖尿病や高血圧などが起きやすくなるBMI25以上を肥満と定義しています。BMI30以上で男性ホルモンの低下がみられ、BMI40以上では、さらに著しく減少するとされています。
※BMI=体重(kg)÷{身長(m)}2

肥満を改善すればEDも改善する 

EDの改善に役立つ適度な運動

EDの改善に役立つ適度な運動

35~55歳の肥満男性で、糖尿病、高血圧、脂質異常症のいずれの兆候もない人を対象とした継続的な調査によると、10%以上の体重減少を実行したグループのBMIが2年間で36.9から31.2に減少したのに対し、何もしなかったグループのBMIは36.4から35.7の減少にとどまりました。

同じグループを対象に行ったEDの重症度判定(満点=25)では、体重減少実行グループが13.9から17.0に改善されたのに対し、何もしなかったグループでは、13.5から13.6と、ほとんど変化が見られませんでした。

このことからも、肥満がEDを招くリスクファクターの1つであることが分かります。
40~70歳の男性1000人以上を対象に米国・ボストンで行われた8年余りの追跡調査では「EDは肥満に関係し、運動不足とも関係が深い」という結果を示しています。

つまり、肥満の人ほど、EDになりやすく、運動をすれば改善する可能性が高いと考えられます。ですから、EDの予防の面からも治療の面からも、食生活の見直しと適度な運動を続けることが改善につながるといえるのです。

なぜ、肥満だとEDになりやすいのか

肥満が恐いのは、ほとんどの場合、背景に糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病が潜んでいるからです。これらの生活習慣病は動脈硬化を進行させる重大な病気です。

動脈硬化が進むと海綿体に血液をうまく送り込めないので陰茎が勃起しにくくなります。それがEDの原因となるのです。特に、血糖の調整がうまくいかない糖尿病では血管内を糖分濃度の高い血液が流れることになります。その結果、毛細血管が障害を受けます。

毛細血管が障害を受けると血液から栄養や酸素を受け取っている神経の働きも損ねます。神経障害によって、脳の性的興奮がうまく陰茎に伝わらないこともEDの一因となります。

MMASの調べによれば、心臓病患者の39%。糖尿病患者の28%、高血圧症患者の15%がEDを合併しているそうです。それらの原因を辿ると肥満に行き着くのです。

大柄の男性は“危険水域”? 

肥満につながりやすい食習慣はNG!

肥満につながりやすい食習慣はNG!

なお、あくまでもガイドのクリニックでの話ですが、1カ月間にわたって行った独自調査によると、来院される患者さんの身長は、150cm台が1%、160cm台が36%、170cm台前半も36%、170cm台後半が19%、180cm以上が8%という比率でした。

180cm以上が150cm台の8倍というのは、高身長の方が低身長より明らかにED傾向があるという興味深い結果になっています。この理由は何なのか、当院でも原因を未だ特定できてはいません。

EDと体格との相関関係を医学的に追究した説得力のあるデータはありませんが、身長とのバランスから考えて、肥満傾向のある男性がEDの“危険水域”にいることは確かです。“危険水域”から脱するには、食生活の見直しを中心とした生活改善や適度な運動を続けることが効果的であることは前項までに見てきた通りです。

不規則な食事時間や早食い、糖分の多い飲料の摂取など、肥満につながりやすい食習慣を改める一方、エスカレーターよりも階段を使ったり、週に1度でもよいのでまとまった運動をするなどして、余分なエネルギーを消費するように心がけましょう。

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