実践してみて分かった“ミュージカル創作の醍醐味”
――御三方はそもそもなぜ、ミュージカルを志したのでしょうか?『女神様が見ている』カーテンコールより。(C) Marino Matsushima
ソンヨン「クラシックの作曲を大学で専攻していたときには、歌曲があまり好きでなく、オーケストラものばかり書いていたのですが、周囲からはなぜか“ミュージカルっぽいね”と言われていました。そうなのかな、とアカデミーで学ぶようになってから、人の声ってすごい、声に言葉が乗り、それが音に乗って発せられるということは素敵だなと思うようになりました。同じ曲でも歌う人が違えばその歌の質も変わってくるのは、その人の人生のドラマが乗っているからなのですよね。そのドラマを観る(聴く)のがとても好きです。皆で作り上げるという(ミュージカルの)過程も素敵だと思います」
ソヨン「私はミュージカルにとどまらず、幅広く舞台芸術に携わっていくつもりです。舞台芸術の魅力は「一瞬の呼吸」であるということ。演出するときに生きていると、ライブ感を感じることができるます。ミュージカルは特に、そこに音楽を加えることで違うジャンルともかかわることが出来、音楽好きな私としてはとても魅力です」
――今後はどんなクリエーターを目指していらっしゃいますか?
13年にソウル・アートワンシアターで上演された『女神様が見ている』(C) Marino Matsushima
ソンヨン「良い作家と出会い、その作品をよりよい作品として、観客に届けられるような音楽を書いていけるよう、邁進していきたいです。同時代を生きる人たちに何を伝えられるかを考え、それを伝えられる作家と組んでいきたい。いろんな作家とやりたいとは思っているけど、心の通う作家さんと出会うのは難しいことなので、次回作もこのトリオで取り組んでいるところです」
ソヨン「目標は素晴らしい演出家になること! 観客が“あの人が舞台を作ったんだって、どんな舞台だろう、観てみたい”と思ってくれる、そして役者やスタッフが“一緒に仕事をしたい”と思ってくれるような演出家になりたいです。次回作はショーケースに上げているところですが、『カインとアベル』というタイトルで、女一人、男二人の3人の物語。人間の欲望についての重い内容で、今回の作品とはまた一味違うと思いますよ」
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夜遅い時間にも関わらず“打てば響く”回転の速さで、どんな質問にも答えてくれた3人。なにより溌剌として目をきらきらとさせながら、ミュージカル創作への夢を語ってくれたのが印象的でした。韓国には彼らのような若きミュージカル・クリエイターが多数ひしめき、大学路(関連記事はこちら)では年間100本以上もの新作ミュージカルが発表されています。日本にもこういう機運が現れたなら、どんなにか素敵なことでしょう。そんな思いも胸に、まずは隣国の創作ミュージカル最前線である本作を楽しんではいかがでしょうか。
*公演情報*
『女神様が見ている』2014年9月20日~10月5日=世田谷パブリックシアター(既に売り切れの日もあるものの、若干の当日券は必ず出るようです)。