トップメッセージの伝え方! そもそも、視点が大きく違う
社員はトップの考え方を知りたがっている
そもそもその役割からみて、一般社員と経営者では物事をみる視点が異なるのは当然です。どちらがいい、悪い、ということではありません。経営者が会社全体、業界全体、長期的な視座で考えざるをえない一方で、一般社員は目の前の世界、いま関わっているプロジェクトに考えをフォーカスさせがちです。
そのため、 トップメッセージを聞いたときの大方の反応は、「言っていることは分かる。で、私たちは何をしたらいいの?」、という総論賛成、各論イメージ湧かない、そのようなものではないでしょうか?あるいは、そもそも何を言っているのかすら、分からない、という反応かもしれません。
「個別最適」で日々過ごしている社員に対して、「全体最適」という視点で伝えたとしても、それは役割として理解不能なのはいたしかたないかもしれません。
では、どうしたら良いのか? 「コミュニケーションは相手により成立する」。これがコミュニケーションの大原則です。だとしたら、相手である社員目線でどこまで伝えられるかがポイントとなるのです。
最も伝わるのは、1対1の会話
まず考えて欲しいのは、最も伝わるコミュニケーションの形態です。当たり前のことですが、1対1のフェイストゥーフェイスの会話です。その場合は、理解しているかどうか、相手の反応を見ながらメッセージを伝えることができます。相手が理解できていないとみれば、相手が理解できる目線に合わせていくでしょう。つまり、この1対1のフェイストゥーフェイスの会話にどれだけ近づけることができるかが重要なのです。企業におけるトップメッセージの伝え方としては、大きく分けて二つあります。
社内コミュニケーションメディアで伝えるケース。例えば、社内報でのトップメッセージ企画。Web社内報での社長ブログ。年頭挨拶の画像を映像社内報で掲載する。このように社内コミュニケーションメディアの1企画としてメッセージを掲載するケースがあります。
もう一つは、経営トップが直接メッセージを伝えようとするリアルな場でのコミュニケーション。例えば、キックオフミーティングや経営会議などの社内の公式イベント。タウンホールミーティングや車座といった、社長と社員が直接コミュニケーションする場。もう少しくだけた食事会やオフサイトミーティング的な集まりの場。そのようなリアルな場でのメッセージの発信があります。
社内コミュニケーションメディアにしろ、リアルな場にしろ、先に記した1対1のフェイストゥーフェイスの会話にいかに近づけていくかがポイントです。
社内報で「トップには書かせるな、語らせろ」
トップには語ってもらうのが効果的
では語らせるとはどういうことでしょうか?
例えば、インタビュー取材、対談、座談会という手法をとります。誰か相手に語ってもらうという形態です。社内報編集部によるインタビュー、社員との対談、若手社員との座談会というパターンです。相手がいれば、先に記したように相手目線に合わせられるからです。
この場合の相手とは、読者ターゲットです。先に記した1対1のフェイストゥーフェイスの会話でのターゲットは一人です。つまり、明確なターゲットを設定しないと、メッセージを発する経営トップも、どこに目線を設定して良いか分からなくなってしまいます。伝えようと思ったらターゲットを絞ることが最低条件です。逆に言えば、ターゲットを絞って、そのターゲット目線で伝えようとすれば伝わるのです。
ですから、編集部のインタビューの場合であってもターゲットは必要です。ターゲットとなり得る社員を同席させ、その社員に語ってもらうような取材形式をすることで、ターゲット目線での取材となるわけです。対談や座談会は当然ながら、ターゲットとする社員を相手方としてセッティングします。
リアルな場は、社員の土俵の現場に降りる
キックオフミーティングなどの公式イベントでのトップメッセージの発信。この場合は、あらゆる階層の社員が参加するので、ターゲットを絞り込むことはほぼ不可能です。このような場では、インパクトのあるキーワードを使い、とにかくメッセージを絞り込むことです。そのキーワードさえ刷り込めれば大成功でしょう。そして、そのキーワードを「自分事化」してもらうべく、少人数の会合でフォローしていくのです。タウンホールミーティングや車座といった、トップと現場社員が直接コミュニケーションの取れる場を作り、先のキーワードについて再度会話していくのです。そのキーワードの込めた思いを、相手の目線を意識しながらトップに語ってもらい、各自がどのようにそのキーワードを理解しているかをトップに話す。そのようなやり取りをしていく中で、トップもどのように表現をしたら伝わるか、理解されるかが把握できるはずです。このような場はトップメッセージを伝えるだけでなく、トップも伝え方を勉強できる有益な場となるのです。
このような場は、社員の働いている現場で行うことが重要です。間違っても社長室や応接室で開催しないことです。呼ばれた方は縮こまってしまい、本音で話すことは無いでしょう。社員の本拠地で、ホームグラウンドで開催すべきです。
また、ある会社では、中間管理職をその場から外しているそうです。上司の顔色を見ながら話すことをなくすためです。本音を引き出すにはそのような設えも必要です。トップも本音を開示することで、社員も本音で答える。そのような本音で語り合える場により、少しずつ理解者を増やしていく。確実に伝えようと思ったら、人数を少なくし、回数を重ねることが大切です。つまり、どれだけ1対1のフェイストゥーフェイスの会話に近づけるかが結局は大事となってくるのです。
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