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北村明子『To Belong / Suwung』インタビュー!(3ページ目)

青山を舞台にしたダンスの祭典Dance New Airで、新作『To Belong / Suwung』を発表する北村明子さん。『To Belong』は2010年にスタートした長期プロジェクトであり、ダンスに映像、音楽とジャンルを越えたアーティストたちによる国際協働作品です。ここでは、北村さん、音楽監督の森永泰弘さん、ドラマトゥルクの山田咲さんにインタビュー。作品の成り立ちと創作法、今後の展開についてお聞きしました。

小野寺 悦子

執筆者:小野寺 悦子

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ドラマトゥルクとしての山田さんの役割とは?

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(C) TOKIKO FURUTA

山田>インドネシア側と北村さんたちの間に入って、あちこち動き回るようなポジションです。映像も撮っています。映像全体としては兼古昭彦さんが監督をされていますが、そこに私がインドネシアで撮ってきた素材やダンサーの映像を加えていく形です。

私の中では、作品世界の中とその周りの現実世界との間にいる感覚がすごく強くて。リサーチするのもそうだし、インドネシアと日本の間にいたり、いろいろなものの間に立っているような感じ。だから、私がコレをやりたいというより、媒介者というか、ひとつ外側にいる感覚ですね。

北村>ドラマトゥルクは一番難しいポジションなんですよね。いろいろなひとの意見をまとめたり、逆にまとまった意見を壊したり。私もムチャぶりをして、時々混乱させてるかもしれません(笑)。

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(C) TOKIKO FURUTA

山田>何かを貫くのは北村さんの役割であって、彼女のコアな部分を作品に落とし込んでいく過程で何かが変わってきたときに、違う要素を提案していくのが私の役目。例えば、民俗学者の折口信夫が書いたテキストをベースに考えてみたらいいんじゃないかという提案をしてみたり。でも作品って、つくっていく内にどんどん変わっていくもの。そこでどう変わったのかを見て、次はワヤンの考えを入れたらいいんじゃないかと提案したり……。

すごく不思議なんですけど、もともと私が持っていた問題意識と、北村さんが感じていたことがかなり重なっていたんです。映像の立場で言うと、ひとつの筋に沿って俳優の演技やカットを従属させながら一本の話をつくるのではなく、もうちょっと拡散させていけたらという模索があった。いろいろな話が同時に流れていたりするような、多面的なつくり方をしたいという想いがあったんです。ちょうどその頃北村さんと出会い、内側から出てくるものというよりも、外から動かされるような何かについて考えていきたという話を聞いて。ジャンルは違っても、何だかとても共通するものがあるのを感じました。

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(C) TOKIKO FURUTA

北村>これはオカルトでも何でもなくて、ダンスをやっていると身体が自律して意識のコントロールを逸脱して動いていくというような瞬間がある。そうした部分にフォーカスをあてていく必要があるなということを、20歳くらいのころからずっと考えていたんです。そこにインドネシアをリサーチして感じたことや、今やっている武術からもつなげていくと、積み重ねた結果起こる現象としてそういうことがあるという確信を持った。言葉で表現すると“他者に動かされる何か”とちょっとおかしな話になってしまうけど、ダンスという身体表現をやっていく上では欠かせない状況で、全く不思議なことではないと。

音楽にしてもそうだと思う。特にフィールドワーク的にいろいろな要素を録り溜めていくと、何かと何かを合わせたときにありえない音が聞こえるということのがあるのではと……。違う考え方を持つ人間同士が混ざることによって何かが生まれることがあるというのがダンスの前提だとすると、現象として非常に通じるような気がするし、ジャンルが違ってもそれほど違和感はないような気がします。

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(C) TOKIKO FURUTA



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