体の調子がすぐれないと気持ちはなかなか乗らないものです。しかし、もし精密検査で問題がないにも関わらず病気の事が気になって仕方がない場合、心気症の可能性にご注意を!
もちろん直感が正しい場合もありますが、往々にして単なる日常的な不調、あるいは全く違う病気の現われである可能性もあります。こうした間違いは単なる思い違いで済む場合が多いでしょうが、場合によっては心の病気が原因で間違いが起こる事もあります。
今回は体調不良を重大な病気であると思い込んでしまう心の病気を詳しく解説します。
病気になる事を無意識のうちに望んでいる…?
「お腹が張る」「頭痛がする」こうした不調は誰でも時に覚えますが、時にこうした症状を普段以上に意識してしまうことがあります。例えば休日返上で働きづくめのある日、のどにイガイガを覚えると、普段ならそんな事は気にしない人でも、「これで仕事を休む口実ができた!」と喜んでしまう事もあるかもしれません。日常的な不調を普段以上に意識してしまう原因はさまざまです。例えば身近な人が悪性腫瘍で入院して、自分のお腹が張った時にその可能性を考えてしまう……。あるいは先のように業務のノルマがきつ過ぎる時、病気になれば、そうしたノルマから解放されます。無意識のうちに病気になる事を望んでいる可能性もあるかも知れません。さらに、抑うつ的な心理傾向の強まりによって「何らかの罰を受けるべきだ」といった意識が芽生え、病気への意識が強まる可能性もあります。
深刻な病気の事ばかり考えてしまう場合、「心気症」の可能性も!
「心気症」では「自分は何か重大な病気にかかっているのではないか」と心配のあまり日常のことが全く手に付かないなど、生活に深刻な支障が生じやすくなります。心気症の発症は 20~30 代に多く、性差に関しては男性も女性も等しく発症する可能性があります。心気症での病気への不安や恐怖感は、病院の精密検査でその可能性が否定された後もなかなか拭いきれないものです。ただ、その非合理性は妄想と呼べるレベルまでには達していません。「お腹が張る」「頭痛がする」といった通常の不調にたいへん過敏になっている状態です。
心気症は基本的には精神科(神経科)での治療が望ましい病気です。この病気が日常生活に及ぼす支障は非常に深刻化することもあります。ある特定の病気を心配し続けて、その 40 年後、まさにその病気になる時まで不安を抱えたまま生活を送っている可能性があるのです。極端な例ではありますが、人生を病気のことばかり心配する事に費やすのではなく、充実したものにするためにも、精神科(神経科)で心理療法や薬物療法など個々の病状に応じた治療を受ける事が望ましいでしょう。
別の病気だと勘違いしてしまう事も!
パニック発作は「パニック障害」の特徴的な症状ですが、その症状はまさに心臓発作を思わせるものです。突然目の前が暗くなり、動悸がとまらず、胸が締め付けられるように痛む……。これを経験すれば心臓発作が起きたと勘違いしても不思議はありません。しかしパニック障害では心臓発作が実際に起きた場合と異なり、発作が収まると元の健康な状態に戻り、病院で精密検査をしても循環器系に異常は何も発見できません。それでも本人は症状の原因はあくまで心臓にあり、パニック障害にあるとは、なかなか認識しにくい場合もあります。また場合によっては周囲が症状を勘違いする事もあります。例えば、うつ病では気分が病的に落ち込み、日常生活における活動レベルも大きく低下しやすくなります。もしも60代以上の方がうつ病を発症し、口数がめっきり少なくなり、記憶力も低下していれば、身近な人は認知症の始まりと思い込む可能性もあります。でも基本的にはうつ病から回復すれば元のレベルに戻ります。こうした場合、「もしかしたら、うつ病?」と、うつ病の可能性を疑ってみてほしいです。
以上、今回は心気症、パニック障害、うつ病と、心の病気が原因で症状を勘違するケースを解説しました。病気の事が気になるのは日常的な事でもあります。例えばニュースで病気の話が出たり、有名な方がご自分の病状を話されていれば、普段以上に心身の不調を意識してしまうかも知れません。でもその意識が過剰になれば、それ自体が心身の不調の原因になりやすい事は皆さまどうかご用心ください。