ミュージカル/注目のミュージカルレビュー・開幕レポート

マシュー・ボーンの『白鳥の湖』に夢うつつ(6ページ目)

マシュー・ボーン率いるダンスカンパニー、ニュー・アドベンチャーズが代表作『白鳥の湖』をひっさげて来日。男性のみの逞しく野性的な白鳥たちと悩める王子。華麗なクラブシーンやザ・スワンと王子のロマンチックな愛の踊り。何度観ても胸を打つ、切ないドラマをご紹介します。4P以降に公演レポートを追加!

三浦 真紀

執筆者:三浦 真紀

ミュージカルガイド


舞台写真

予想通りのセクシーさ!ザ・ストレンジャー。(c)Hidemi Seto

瑞々しい愛を与えるクリスの白鳥

夜の部はクリス・トレンフィールドのザ・スワン/ザ・ストレンジャー&クリストファー・マーニー。クリス・トレンフィールドは若々しく、穏やかなザ・スワン。どっしりした安定感があり、野生の凶暴さを持ちながらも、根っこは平和好きなスワンに思えます。2010年の公演時には白鳥のひとりとして活躍、大きく開花して帰ってきたなあと感慨深くなりました。ザ・ストレンジャーはどこかロッカーみたいで、ベースを弾いていそうとか勝手に妄想。しかしクリスの真骨頂は第4幕、王子の寝室シーンにありました。

白鳥達にいじめられる王子、彼を助けにきたザ・スワンの心温まる、慈愛に満ちた眼差しといったら!そして、それに応えようとし、またもがき苦しむ王子。ここからが本格ラブストーリーの始まり。ザ・スワンと王子の愛の交流が、バレエとか白鳥とか性差とか世の中の器やジャンル、概念、決めごとみたいなものを一気に超えて、昇華していきます。

舞台写真

傷つきつつ、互いを守ろうとするザ・スワンと王子。(c)Hidemi Seto

クリス・マーニーの悩み深い王子が癖になる

これはザ・スワンに呼応する王子役クリストファー・マーニーが素晴らしいというのもあるでしょう。彼のしなやかで叙情的な踊りは日本ではもうお馴染み。踊りの技術だけでなく、芝居も上手い。クリストファーを見ていると、自分の身体をすっからかんにして、役に惜しみなく明け渡しているような感すらします。

それは感情も同様。白鳥が消え去った後、クリストファー王子は号泣、カーテンコールでもしばらくは涙顔の王子のままでした。いつまでたっても公務が苦手で、自分勝手な母に抑圧されつつ愛してもらえない、神経質で悩み深い青年王子。オペラ・ハウスのシーンでは、粗相ばかりするガールフレンドがかなり迷惑そうで、ちゃんと母・女王の血をひいているなあ、とも。

舞台写真

舞踏会でのザ・ストレンジャーと王子。(c)Hidemi Seto

女王、ガールフレンド、執事にも注目!

女王はアンジャリ・メーラ。エキゾティック美人で威厳と気品があり、でも男好き。若い男をとっかえひっかえしているのに、息子には厳しいという、リアルにいそうな女性です。

ガールフレンド役のキャリー・ジョンソンはブロンドのグラマー美女で、海外のコメディドラマにひとりは出てきそうな、愉快なお姉さん。バレエに夢中になってのめり込んでしまう様子を見ると、イケイケかもしれないけど性格はいい娘だなあ~って。王子もこういう気の良い娘と付き合えれば、幸せになれそうな気がするんですけどね。

そして執事のエド・ミトンがカッコいい。女王と王子に一見忠実に仕えながらもどこか謎めいていて、踊り出すと突然、色気放出(笑)。舞踏会では結構羽を伸ばして寛いでいたりして、裏もありそう。こういう男いるいる!です。

長くなりましたが、公演を重ねますます進化していくことでしょう。キャストは公式ページで当日朝発表されるので、21日まで毎朝ドキドキワクワクする日が続きそうです。

舞台写真

指先まで美しい。(c)Hidemi Seto


【公演情報】
マシュー・ボーンの『白鳥の湖』
2014年9月6日~21日 東急シアターオーブ
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