ミュージカル/注目のミュージカルレビュー・開幕レポート

マシュー・ボーンの『白鳥の湖』に夢うつつ(2ページ目)

マシュー・ボーン率いるダンスカンパニー、ニュー・アドベンチャーズが代表作『白鳥の湖』をひっさげて来日。男性のみの逞しく野性的な白鳥たちと悩める王子。華麗なクラブシーンやザ・スワンと王子のロマンチックな愛の踊り。何度観ても胸を打つ、切ないドラマをご紹介します。4P以降に公演レポートを追加!

三浦 真紀

執筆者:三浦 真紀

ミュージカルガイド


舞台写真

ザ・スワンと王子。(c)Helen Maybanks

ロイヤルファミリーとして生きることに苦悩する王子の心

舞台写真

白鳥たちと出会い、夢うつつの王子。(c)Helen Maybanks

踊りだけでなく、物語としても感じ入る所がたくさんあります。とても演劇的で、人間ドラマがきちんと描かれている。これはマシュー作品の大きな特徴のひとつ。この作品も『白鳥の湖』だから白鳥が目立ちがちですが、物語は苦悩や喜びなど、王子の心の変遷をきっちり紡ぎ出します。

特にラストの白鳥たちは王子の心情風景を表しているのか、ただ美しいだけではない人間の心の内を読み取れたらといつも思わせてくれます。

2013年に上演されたマシュー・ボーン作品のひとつ『ドリアン・グレイ』のパンフ制作をやらせていただいた時、タイトルロールを演じたリチャード・ウィンザー(彼もザ・スワン&ザ・ストレンジャーを演じています)もクリストファー・マーニー(今回の王子)も、話していると実に論理的で、まるでストレートプレイの役者さんと話しているみたいだったんですね。それは、マシューが物語に踊りと同等の重きを置いていることが、大きく影響している気がします。


役の解釈はダンサーによって異なるから、個性が光る

もうひとつ、マシュー・ボーン作品で面白いのは、それぞれのダンサーの個性が際立っていること。初めて観た時、一糸乱れぬ群舞とは違う、エネルギーと大胆さに共感しました。キャストが変わると、変化を大きく感じるのも面白いところ。もちろん振付や大筋は変わらないのですが、一般的なバレエ作品よりも大きく変化を感じるのはどうしてなのか。

ずっと不思議に思っていて、2年前の『ドリアン・グレイ』の時、クリストファー・マーニーに聞いてみたんです。そうしたら

「役の解釈はダンサーによって全然違うよ。解釈は唯一無二のものなので、人によるんだ。振付もダンサーによって変えていいパートがある作品もある。決まった構造はあるけれど、個人が何を注ぎ込むかは自由なんだ」と。

これにはちょっと驚きました。マシューは顔の表情までも指示しつつ、最終的な役作りはキャストとの共同作業にしているのか、だから各キャストがそれぞれ個性的で光るのだと、目から鱗でした。
舞台写真

ロンドンで練習中のマルセロ・ゴメス。(c)Garry Lake


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