ザ・スワンと王子。(c)Helen Maybanks
ロイヤルファミリーとして生きることに苦悩する王子の心
白鳥たちと出会い、夢うつつの王子。(c)Helen Maybanks
特にラストの白鳥たちは王子の心情風景を表しているのか、ただ美しいだけではない人間の心の内を読み取れたらといつも思わせてくれます。
2013年に上演されたマシュー・ボーン作品のひとつ『ドリアン・グレイ』のパンフ制作をやらせていただいた時、タイトルロールを演じたリチャード・ウィンザー(彼もザ・スワン&ザ・ストレンジャーを演じています)もクリストファー・マーニー(今回の王子)も、話していると実に論理的で、まるでストレートプレイの役者さんと話しているみたいだったんですね。それは、マシューが物語に踊りと同等の重きを置いていることが、大きく影響している気がします。
役の解釈はダンサーによって異なるから、個性が光る
もうひとつ、マシュー・ボーン作品で面白いのは、それぞれのダンサーの個性が際立っていること。初めて観た時、一糸乱れぬ群舞とは違う、エネルギーと大胆さに共感しました。キャストが変わると、変化を大きく感じるのも面白いところ。もちろん振付や大筋は変わらないのですが、一般的なバレエ作品よりも大きく変化を感じるのはどうしてなのか。ずっと不思議に思っていて、2年前の『ドリアン・グレイ』の時、クリストファー・マーニーに聞いてみたんです。そうしたら
「役の解釈はダンサーによって全然違うよ。解釈は唯一無二のものなので、人によるんだ。振付もダンサーによって変えていいパートがある作品もある。決まった構造はあるけれど、個人が何を注ぎ込むかは自由なんだ」と。
これにはちょっと驚きました。マシューは顔の表情までも指示しつつ、最終的な役作りはキャストとの共同作業にしているのか、だから各キャストがそれぞれ個性的で光るのだと、目から鱗でした。
ロンドンで練習中のマルセロ・ゴメス。(c)Garry Lake