大胆なフロントマスクは申し分ないが……
つっつきどころ満載というわけだが、最も力を注いだデザインについても持論を。ジープやチェロキーという“ビッグネーム”に惑わされることのない、大胆なスタイリングの採用をフィアットは要望したのだろう。できあがった新型チェロキーのルックスは、ジープ伝統の7スリットグリル以外の過去とは一切、手を切ったかのような挑戦的で大胆な姿となっていた。
これくらい、好みのハッキリと分かるデザインの方が、かえって清々しい。昨今の派手なフロントマスク事情を思い浮かべるに、新型チェロキーくらいの“えぐさ”がなければ、いくら性能がよくても目立ちようがないというもの。新しいモデルが乱立する時代にあって、「何だコレ?」と思わせた方が勝ちである。
はじめて写真でみたとき、筆者も「何じゃ、このツラガマエは!」と驚いたものだ。同時に、好感を持った。嫌いじゃない。否、むしろ、この不敵な顔つきは好みかも、と思ったものだ。コンパクトなサイズ感も、日本で乗ることを考えると都合がいい。愛用のスズキジムニーが手狭に感じられてきた今日この頃、次の愛車の有力候補だと、実物を見るまでは思っていた。
実際、このフロントマスクを目の当たりにすると、なかなかの迫力だ。周囲からの注目度も高い(それが好意的なものかそうでないかは別にして)。けれども、個人的にはひとつ、引っかかることがあった。
それは、真横から見たカタチだ。新型チェロキーは、FFベースである。必然的に前のオーバーハングが長くなる。そこに、デザインありきのマスクをムリヤリ取って付けた。結果、オーバーハングとフェンダー、キャビン位置のバランスが悪くなってしまっている。FFベースの場合、衝突安全性を確保しつつ“顔つき”に凝ってしまうと、どうしても横からの見栄えがアンバランスになってしまいがち……。
前から(=ノーズの長さを隠せる範囲内で)見るぶんには申し分ない。けれども、真横のカタチがダメだ。クルマのカタチの良し悪しは真横の眺めで決める、と信じる筆者にとって、これは全く受け入れられないものだった。