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地価LOOKレポートでみる住宅地地価動向 25

景気回復の動きは鈍り、消費税率引き上げ後の停滞もみられるなかで、地価は着々と上がり続けているようです。これからの動きも気になるところですが、国土交通省から「地価LOOKレポート」(第27回)が発表されましたので、住宅地を中心にその傾向を確認しておきましょう。

執筆者:平野 雅之


地価LOOKレポートの最新版についてはこちら
住宅地の地価動向/2017年7-9月期 地価LOOKレポート



消費税率の引き上げ後、国内の景気は停滞感が漂い、住宅市場は新築、中古とも、やや低調に推移しているようです。来年10月に予定される次の消費増税は実施される可能性が高いものの、不透明感が少し出てきたといったところでしょう。

その一方で、大都市圏は地価の上昇傾向が続くとともに、高額マンションの売れ行きが好調さを維持するなど、物件だけでなく、消費者層にも二極化の傾向が表れてきているようです。

国土交通省から「地価LOOKレポート」の第27回分(平成26年第2四半期)が発表されましたので、住宅地を中心にその動きを確認しておくことにしましょう。



地価の上昇傾向が続く

横浜みなとみらいの高層マンション

緩やかな地価上昇傾向が続いている

地価LOOKレポートとは、「先行的な地価動向を明らかにすること」を目的として国土交通省が3か月ごとに発表をしているもので、平成19年第4四半期分(平成19年10月1日~平成20年1月1日)から始まり、今回が27回目です。

上昇が前回の119地区から120地区に増え、下落は2地区(前回4地区)を残すのみとなりました。横ばいは28地区(前回27地区)となっています。

下落が2地区まで減ったのは、リーマン・ショック前の第1回調査以来のことですが、当時は3%を超える上昇地区が過半数を超えていたのに対して、今回は「3%以上6%未満」の上昇が2地区表れただけで、他の上昇地区はいずれも「3%未満」に収まっています。

6~8年前の地価上昇期と比べて、現在は「緩やかな上昇」が続いているといえるでしょう。

名古屋圏は5回連続ですべての地区が上昇、大阪圏は6回連続で下落地区がゼロとなり、下落は東京圏と地方圏でそれぞれ1地区(いずれも商業系)となっています。

全体的な傾向は前回とほぼ同じですが、前回は上昇傾向の鈍化(マイナス方向への移行)が8地区でみられたものの、今回は3地区にとどまり、地価上昇傾向が定着しつつあるようです。

なお、地価LOOKレポートでの全国の主要都市における調査対象は150地区で、そのうち住宅系地区は44(東京圏20地区、大阪圏14地区、名古屋圏4地区、地方圏6地区)です。


 【地価LOOKレポート】 (国土交通省サイト内へのリンク)

第24回 平成25年第3四半期
(平成25年7月1日~平成25年10月1日)

第25回 平成25年第4四半期
(平成25年10月1日~平成26年1月1日)

第26回 平成26年第1四半期
(平成26年1月1日~平成26年4月1日)

第27回 平成26年第2四半期
(平成26年4月1日~平成26年7月1日)

地価LOOKレポートには地価動向(総合評価)のほか、取引価格、取引利回り、取引件数、投資用不動産の供給、オフィス賃料、店舗賃料、マンション分譲価格、マンション賃料の動向(それぞれ3区分)が記載されています。


地価LOOKレポートでは地価やその変動率について具体的な数値を示すのではなく、6%以上の上昇、3%以上6%未満の上昇、0%超~3%未満の上昇、横ばい(0%)、0%超~3%未満の下落、3%以上6%未満の下落、6%以上9%未満の下落、9%以上12%未満の下落、12%以上の下落の9段階に分類されています。


住宅系地区の下落はゼロに

住宅系地区では、上昇が前回と同じ33地区で、横ばいが11地区(前回10地区)となり、下落はゼロでした。下落地区がゼロとなったのは、地価LOOKレポートの調査が開始されてから初めてのことです。

住宅系地区の変動 (地区数の全国計)

区 分
第23回
第24回
第25回
第26回
第27回

上昇 (6%~)
0
0
0
0
0

上昇 (3%~6%)
1
1
0
0
0

上昇 (0%~3%)
30
34
37
33
33

横ばい (0%)
11
7
6
10
11

下落 (0%~-3%)
2
2
1
1
0

下落 (-3%~-6%)
0
0
0
0
0

下落 (-6%~-9%)
0
0
0
0
0

下落 (-9%~-12%)
0
0
0
0
0

下落 (-12%~)
0
0
0
0
0

合  計
44
44
44
44
44

住宅系地区では、千葉市中央区(千葉港)が第3回(平成20年第2四半期)から続いていた下落を脱し、6年3か月ぶりの横ばいとなりました。

また、さいたま市中央区(新都心)が前回の横ばいから上昇へ転じた一方で、京都市左京区(下鴨)は前回の上昇から今回は横ばいになっています。

それ以外はほぼ前回と同様の動きを示していますが、東京よりも早く上昇時期を迎えた横浜市青葉区(美しが丘)と川崎市麻生区(新百合ヶ丘)は上昇の動きが止まり、いずれも3回連続で横ばいとなっています。前回、上昇から横ばいへと移行した横浜市都筑区(センター南)も引き続き横ばいでした。

急激な地価上昇は見られないこと、人気の高い住宅地が必ずしも上昇とはなっていないことなどは、十分に留意しておくべき動向かもしれません。

なお、札幌市中央区(宮の森)および東京都江東区(豊洲)が11回連続の上昇、川崎市中原区(元住吉)が12回連続の上昇、神戸市東灘区(岡本)および兵庫県芦屋市(JR芦屋駅周辺)が15回連続の上昇でした。


商業系地区の下落は2地区のみ

商業系地区では、上昇が87地区(前回86地区)、横ばいが前回と同じく17地区、下落が2地区(前回3地区)でした。下落は千葉市中央区(千葉駅前)と長野市(長野駅前)の2地区を残すのみとなっています。

今回から上昇となった地区は、さいたま市浦和区(浦和駅周辺)、東京都豊島区(池袋西口)、八王子市(八王子)の3地区で、いずれも東京圏です。とくに八王子は第2回(平成20年第1四半期)以来、6年3か月ぶりの上昇でした。

また、香川県高松市(丸亀町周辺)が5年半ぶりに下落を脱した一方で、京都市中京区の2地区(御池および丸太町)は、前回までの上昇から横ばいへとペースダウンしています。

なお、東京都中央区(銀座中央)は3回連続、東京都新宿区(新宿三丁目)は今回から「3%以上6%未満」の上昇となっています。

商業系地区の変動 (地区数の全国計)

区 分
第23回
第24回
第25回
第26回
第27回

上昇 (6%~)
0
0
0
0
0

上昇 (3%~6%)
1
0
3
1
2

上昇 (0%~3%)
67
72
82
85
85

横ばい (0%)
30
27
16
17
17

下落 (0%~-3%)
8
7
5
3
2

下落 (-3%~-6%)
0
0
0
0
0

下落 (-6%~-9%)
0
0
0
0
0

下落 (-9%~-12%)
0
0
0
0
0

下落 (-12%~)
0
0
0
0
0

合  計
106
106
106
106
106

地価LOOKレポートの対象地区だけを見ていると、上昇傾向が全国に広がっている印象を受けますが、必ずしもそうではありません。

国土交通省が「その他の地価動向を注視すべき地区」として同時に発表している地区で「地価動向が地方圏に波及する過程を概観するための地区」として挙げた12地区(いずれも商業系)のうち、西日本の7地区はいずれも「下落」または「やや下落」となっています。

大都市圏で定着した地価上昇傾向が地方圏にまで波及するかどうかは、まだ分からないといった状況でしょう。


住宅系地区における過去1年間の地価動向を一覧にして、次ページにまとめてあります。全体的な動きを知るための参考にしてください。


住宅系地区の地価動向推移…次ページへ

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