2014全国学力テスト、中学校の問題別正答率の比較。
計算力こそが算数・数学での基礎基本
それでは、特徴的だった私立中学と、秋田、沖縄の正答率を順に見てみましょう。1番上の分数のわり算は、私立の正答率が94.3%とほぼ完璧なのに対して、沖縄は80.8%とやや開きがあります。
次の文字式の計算も、私立96.8%、秋田92.7%と90%台をキープしているのに対して、沖縄は80.7%となっています。とはいえ、過去の調査と比べてみても、この差は縮まってきており、順位こそ変わらないですが、沖縄の学力向上対策は着実に成果に結びついていると言えます。
さて、方程式の問題では、私立は84.3%とまずまずなのに対して、秋田でも67.0%とやや不振、沖縄は37.9%とかなり不振です。全国の公立校の平均が59.5%ということから、それほど難しいという問題ではないはずなのですが、分数が入ることで方程式の計算を難しくしているようです。
ちなみにこの問題は、まず両辺に3をかけて分母をはらうことで、基本的な方程式と同じ問題になることに気づけば、決して難しくない問題です。まずは、基本的な方程式の問題を解けるようにして、そして、小数や分数が入った方程式を解けるようにすることが大切です。
連立方程式の問題も、教科書レベルの標準的な問題と言えますが、私立85.2%に対して、秋田でも75.5%しかなく、沖縄は48.2%とやはり課題が残る結果に。この違いはどこにあるのでしょうか。
この問題は、代入法を使って解く、ごく一般的な問題です。これだけ正答率に差が出るのは、連立方程式の前に、一般的な(一元一次)方程式でのつまずきが原因と考えられます。そして、方程式でのつまずきの原因となっているのが文字式の計算なのです。さらに、その文字式の計算も、小数や分数、負の数、累乗(2乗や3乗など)が混じったりすれば、ますます正答率は下がります。先に紹介した、「100-20×4」といった四則計算の問題も同様です。
つまり、わり算や四則計算、文字式といった小学校や中1で学ぶ基礎・基本の計算力のちょっとした開きが、方程式、連立方程式での大きな開きとなっているのです。
読めない漢字をあなどるなかれ
最後に、国語についても紹介しておきましょう。私立、秋田、沖縄で、漢字の読み書きで決定的な差があることがわかります。「鮎の稚魚(ちぎょ)を放流する」という漢字の読みを答える問題では、沖縄の正答率は63.7%で、沖縄の中学生の3人に1人が漢字の読みでつまずていることがわかります。読めない漢字があると、その文章が何を伝えようとしているのかがわかりにくくなります。稚魚の「稚」は幼稚園の「稚」であることから、小さい魚を意味することは容易に想像できますが、漢字の読み書きレベルでつまずいている子は、こうした連想ができません。読み書き力の不足が、語彙力の不足へつながり、強いては読解力の不足につながるのですから、いかに読み書きが大切かがわかります。
しかし、同じく漢字の読みを答える「新記録に挑む(いどむ)」という問題では、私立95.7%に対して沖縄93.4%と、沖縄がそれほど劣っているわけではありません。全国平均が95.2%ですから、簡単な問題といえば簡単な問題ですが、これまでの対策が少しずつですが成果へと結びついている証拠と思われます。
何をおいても、読み書き計算力こそが学力向上への第一歩なのです。
家庭での対策は?
今回の結果を見てみてもわかるように、数学でのつまずきは小学校で習うわり算の計算や四則計算でつまずきがすべてです。実は、四則計算の問題は、学力テストが再開された2007年から継続して出題されていますが、今回、初めて全国の正答率が80%台にまで上がりました。こちらは、小学4年生で学ぶ内容ですが、中学校に進学するまでには95%以上はできてほしい問題です。
小学校の算数でつまずきやすい「四則計算」の問題の正答率。今回、やっと改善の兆しが。
さらなる躍進は今後に期待するとして、各家庭でできる対策としては何があるのでしょうか。
まず、こうした問題で最も多いのが、
100-20×4
=80×4
=320(正しくは、100-80=20)
と、「×や÷」よりも「+や-」を先に計算してしまう誤答です。
ここでは、「左から順に計算している割合」として紹介しています。2010年では29.3%だったのが、2014年は15.5%と半減しました。まさに学力向上対策の成果と言えます。こうした誤答は、丁寧に間違い直しをし、身に付くまで反復練習をして防ぐしかありません。
家庭でできる対策としては、前の学年や小学校にまでさかのぼってでも、徹底して復習するのに限ります。今回の学力テストの結果は、夏休み明け早々に返却されるので、ここで取り上げた問題がしっかりと解けているか、見直してみましょう。
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