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1年前と比べるグリー業績悪化の質の違い(2ページ目)

かつてはソーシャルゲームで大躍進した企業の代名詞に挙げられていたグリー、しかし従来の携帯電話からスマートフォンへと市場が移って行くにしたがって、非常に難しい状況が続いています。その業績を1年前と比較して、グリーが今どうなっているかを考えます。

田下 広夢

執筆者:田下 広夢

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コストは下がったが、売り上げはもっと下がった

東京ゲームショウの図

東京ゲームショウでの巨大ブース出展など、かなり広告宣伝費を使っている印象のあるグリー。しかし、この1年は大胆なコストカットに挑んでいました。

グリーの売上原価と販管費、つまりゲームなどの商品を作るお金と、それを宣伝して売ったり会社を維持したりするためのお金ですね、これを2013年6月通期と2014年6月通期で比較すると、約130億円のコストカットに成功していることが分かります。特に大きく削られたのは広告宣伝費で、これが年間約76億円の削減。もともと約220億円あったので、3割以上も削ったことになります。

これで利益が戻ったか、というところで、営業利益を見てみます。営業利益は本業の儲けを示す数字と言われていて、簡単に言えば売り上げから、売上原価と販管費をひいたものです。その営業利益は約350億円。実は2013年6月通期の営業利益は約486億円あって、約136億円ほど、下がってしまっています。

売上原価と販管費が合わせて約130億円下がっているのに、営業利益も136億円下がっていると言うことは、もうわかりますよね、コストカット以上に売り上げが落ちているんです。グリーの2014年6月期通期の売り上げは約1,256億円で、前年度と比べて約266億円も落ちています。

当期純利益は2013年6月期通期の約255億円からさらに下がって、約174億円。コスト削減に取り組んだものの、懸念していた売り上げの減少傾向が拡大し、状況は悪化しているように思えます。

それでもまだまだ、儲かってはいる

モンスターハンター4の図

比べてみると、利益率が非常に高いのが分かります

1年前の業績悪化は、売り上げが微減だったのに対し、コストの方は増大していたため、利益が減ってしまった、というものです。成長が止まったのに投資を続けてしまってバランスが悪くなった、ということですね。

しかし今回の業績悪化は、コストカットしていたにも関わらず、それを上回るスピードでさらに売り上げが減ってしまったという状況で、グリーのコンテンツからどんどんユーザーが離れていることを示しています。

さて、1つここで確認しておくべきことがあります。というのは、ここまで前年度からの流れをお話したので、非常に業績が悪いという印象を持った方が多いかもしれません。誤解の無いように言っておくと、グリーの決算の数字は、単体で見れば、決して悪い数字ではありません。というか、ものすごく良い数字です。

イメージがわかない人もいると思うので、ゲーム業界の老舗メーカー、カプコンの2014年3月期通期の決算と比較してみましょう。売り上げが約1022億円、営業利益が約103億円、当期純利益が約34億円です。グリーの売り上げが約1,256億円、営業利益が約350億円、当期純利益が174億円…と並べてみると、グリーってすごいんだなあってことが分かりますね。特に売り上げ規模に対する利益率が全然違いますよね。ちなみにこの時のカプコンはモンスターハンター4の大ヒットなどで増収増益となっています。それでも、この差なわけです。

とはいえ、とはいえです。じゃあ単体の数字がいいから問題ないのかと言えばそんなことはありません。このままスマートフォン市場においてかつてのような存在感を示すことができず、ズルズルとユーザーを失っていけば、状況は悪化していくばかりです。

儲かってはいるが、確実に悪化している状況に対し、グリーはどう対応していくのでしょうか。
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