『ONE-HEART MUSICAL FESTIVAL 2014夏』観劇レポートスター、そして名曲の魅力を多角的に照らし出すゴージャス・ショー
『ONE=HEART MUSICAL FESTIVAL 2014夏』大和悠河 写真提供:東宝演劇部
文句なしに楽しい! 様々なミュージカルの楽曲と旬のミュージカル・スターたちの魅力をたっぷり味わえるショーが開幕しました。
客席通路に現れたスペシャル・ゲスト、マテ・カマラスさんのユーモアを交えたMCで幕が上がると、トップバッターは(全日程出演の)大澄賢也さん。『ピピン』の「Magic To Do」を、指先まで神経を行き渡らせるあの特徴的なボブ・フォッシー・スタイルで踊りながら歌い上げ、一気に舞台を「大人の空間」に染め上げます。
『ONE-HEART MUSICAL FESTIVAL 2014夏』彩乃かなみ 写真提供:東宝演劇部
続いて「Show Me How You Burlesque」(映画『バーレスク』)を歌うのはこの日の出演者、大和悠河さん。アシンメトリーなマイクロミニの銀色ドレスでセクシーかつダイナミックに歌い踊り、さらに場内はヒートアップ。
『ONE-HEART MUSICAL FESTIVAL 2014夏』上口耕平 写真提供:東宝演劇部
その後も彩乃かなみさんが「Not For The Life Of Me」(『モダン・ミリー』)をドラマティックに、上口耕平さんが「Cool」(『ウェストサイド物語』)を英語で、彩輝なおさんがハスキーがかった声を駆使して一曲の中に変化をつけ、軽々と性を超越する「最後のダンス」(『エリザベート』)を……と、出演者それぞれがナンバーを披露。
『ONE-HEART MUSICAL FESTIVAL 2014夏』彩輝なお 写真提供:東宝演劇部
「Cool」や坂元健児さん、入野自由さん、上口耕平さんが歌う「世界の王」(『ロミオ&ジュリエット』)で見せる、オリジナル舞台のテイストを残しつつ新たにアレンジした上島雪夫さんの振付も効果的です。
『ONE-HEART MUSICAL FESTIVAL 2014夏』入野自由 写真提供:東宝演劇部
「民衆の歌」(『レ・ミゼラブル』)では全員がそれぞれの衣裳、めいめいの立ち姿で合唱し、『レ・ミゼ』本編とはまた違った力強さを表現。昂揚感の中、一幕が終了します。
『ONE-HEART MUSICAL FESTIVAL 2014夏』坂元健児 写真提供:東宝演劇部
二幕冒頭はお楽しみ企画?!の「ありのままの私」(『ラカージュオフォール』)。男性陣5人が本編さながらの華麗なる女装姿で登場しますが、意外にしっくり来ている方もいれば、広い肩を露わにし、10センチ以上はあろうというピンヒール(自前だそう)で中央に立つマテさんなどは、笑いを通り越してちょっと怖いものが……。
『ONE-HEART MUSICAL FESTIVAL 2014夏』マテ・カマラス 写真提供:東宝演劇部
しかしここで楽しげに女装していた彼が、その後の(女装という点では繋がっている)性転換歌手の自伝ミュージカル『Hedwig and the Angry Inch』の「Midnight Radio」では打って変わり、魂の叫びを披露。U2のボーカル、ボノを彷彿とさせるスケール感溢れる歌唱で、ヨーロッパではロック歌手としても活躍する彼の面目躍如です。
『ONE-HEART MUSICAL FESTIVAL 2014夏』大澄賢也 写真提供:東宝演劇部
「All That Jazz」(『シカゴ』)では、限界ぎりぎり?の露出度の衣裳もばっちり着こなしてしまう大和さんのみならず、大澄さんと演出・振付の上島雪夫さん自らによる、“これぞフォッシー・スタイル!”と叫びたくなるほど完璧なダンスからも目が離せません。ダンスと言えば、彩輝さんがパンチを効かせて歌う『エニシング・ゴーズ』タイトルロールで、アンサンブルの加賀谷一肇さんが見せる溌剌としてきれいなタップダンスも眼福です。こうしたミュージカル・ショーではしばしば、歌い手とアンサンブルが別個に存在しているかのような舞台も見受けられますが、そこはクリエの夏フェス! 時にはスターの相手役として台詞を発するなど、実力派のアンサンブルが八面六臂の活躍で場面を盛り上げ、風通し良く見ごたえもある「ミュージカルのショー」となっています。
『ONE-HEART MUSICAL FESTIVAL 2014夏』岡田浩暉 写真提供:東宝演劇部
その後も、「僕は小さくまとまる男になんかならないぞ」と旅立つ主人公のナンバー「Corner of The Sky」(『ピピン』)では上口さん、包容力たっぷりに愛しい人に歌う「そのままの君」(『テン・ミリオン・マイルズ』)では岡田浩暉さん……と、各人の持ち味がぴたりとはまるナンバーが続きます。
『ONE-HEART MUSICAL FESTIVAL 2014夏』藤岡正明 写真提供:東宝演劇部
藤岡正明さんのパワフルな歌声に率いられて「ラ・ヴィー・ボエーム」が披露されると、来年上演予定の『RENT』がぐっと待ち遠しいものに。最後に戸井勝海さん、土居裕子さんが「トゥナイト」(『ウェストサイド物語』)をまっすぐな歌唱で美しく輝かせたところで、マテさんが登場。「持っている人はペンライトを出してね」と合図をだし、恒例の『ダンスオブヴァンパイア』「フィナーレ」へとなだれこみます。
『ONE-HEART MUSICAL FESTIVAL 2014夏』戸井勝海 写真提供:東宝演劇部
スターの持ち味が存分に生きた選曲、パフォーマンスに心浮き立ち、作品から独立させて聴くことで有名曲の新たな魅力に気づかされる今回の舞台。筆者が観た日は1幕が17曲、2幕が18曲の披露でしたが、出演者の一部とプログラムは日替わりです。日によってはきっと上記とがらりと異なるプログラムも楽しめることでしょう。
『ONE-HEART MUSICAL FESTIVAL 2014夏』土居裕子 写真提供:東宝演劇部