英語

白か黒か、立場を明確にする演繹的英語ライティング(2ページ目)

あなたのビジネスで書く英文をどのように改善すれば、相手に100%理解してもらえるでしょうか?実際にグローバル社会で陥りやすい点を実際の例に基づいて考察し、改善後の英文と比較してみたいと思います。

齋藤 浩史

執筆者:齋藤 浩史

ビジネス英語ライティングガイド

改善後の英文

前ページでご説明したことを踏まえ、私は以下のように修正してみました。

Without any doubts, the choice depends upon their characters and life stage. However, I disagree with the statement that working for small companies is much less beneficial than for large companies because of the following reasons. (*1*2)
Firstly(*3), it would be practically beneficial for employees to gain a wide range of working capacity because they must overcome the in-house worker’s shortage. For instance, if you are working for accounting department in a small company, you can get involved in a variety of accounting-related operation, such as tax, auditing, cash-flow control, budget and so forth. A deep-understanding of individual tasks would be a big advantage in one’s career profile.
Secondly(*3), it would also be beneficial to well-understand the entire company operation. While employees in large companies are required to become specialist in each field without being aware of the sectional function, small company’s employees can obtain general knowledge of the whole company.
In conclusion, by adding up the above two advantages, I believe that working for small companies is more appealing and diversified than for large companies.

<日本語訳>
間違いなく、この選択は各人の性格とその人が直面するライフステージによって変わってくるでしょう。しかし、私は小さい会社で働くことが大きな会社で働くことより有利でないという話には賛成できません。その理由を以下に示します。
まず初めに、小さな会社で働くことは会社の人手不足を補うために、実質的に幅広い範囲の仕事能力を習得できるため、有益だと思います。例えば、小さな会社の経理財務に勤めていたとすると、経理財務に関わる広範囲な実務(会計、税金、監査、キャッシュフロー、予算等)に関わることができるはずです。各業務タスクの深い知識は、自身のキャリア履歴に大きなアドバンテージがあるのです。
2つ目が、全社内の業務を理解できることは有益だからです。大きな会社の従業員は会社から各分野のスペシャリストになることを求められるため、他部門の機能や業務など知ることがない一方で、小さな会社の従業員は会社全体の業務一般知識を習得することができるのです。
まとめると、上記2つ有益な点を足し合わせれば、私は小さな会社で働くということは大きな会社よりも魅力的で多様な仕事であると信じて疑わないのです。

改善点の解説

それでは、具体的にどのように修正したのかを解説してみます。私が着目した修正点は以下の3点でした。(前段の太字部分を参照)

※1. 自分の主張を第一段落に置くことで、読み手に自身の立場を示す演繹的論理展開を採用。
理由:最後の段落まで自身の立場の主張がないと、一般的な事実を述べた文章のように見えてしまいます。これだと多忙なビジネスマンは読むことを途中で諦めてしまうかもしれません。そのため、”自分の主張→裏付け→自分の主張の繰り返し”というサンドイッチ論法でシンプルに伝えます。

※2. 大企業とベンチャーに対する視点が中立的過ぎないようにする。
理由:文章内容が全体に中立的過ぎると、主張の弱さや書き手の迷いを読み手が感じ取ってしまいます。どちらか偏った意見を持つことに日本人は抵抗があると思いますが、自身の意見を決めたらブレずにその主張根拠を論理的に説明するように心がけることがグローバル人材として必要なマインドセットになるのです。

※3. 自分の立場を裏付ける理由を段落分けして示す。
理由:改善前の文章のように、自身の主張を裏付ける根拠がバラバラに配置されてしまうと、主張が明確でも相手には伝わる度合が弱くなります。そこで、各メリットデメリットを明確に段落分けして、読み手が理解しやすいように誘導します。

まとめ

いかがでしょうか?「シンプル過ぎて偏った意見ではないか?」と思う方もいるでしょう。しかし、この文章の読み手は日本国内の日本人ではなく海外にいる外国人の方へのライティング練習であることを忘れないようにしてください。シンプルに伝える文章の組立て方法をマスターしなければ応用文章を書いても相手との共通認識を得ることはできません。また、グローバル社会での、あやふやで中立的な主張は、相手との誤解を生みやすいのでこの点も注意しておきましょう。

また、改善後の文章だと、若年層が書く文章のような印象を受けたかもしれません。しかし、英文をカッコよく書くことがビジネスの目的ではなく、相手との認識相違がないようにわかりやすさを意識した英文構成が何よりも大事だということを理解していただきたいと思います。それこそ、これからのグローバル社会で求められる技術なのです。
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