「きんつば」の「徳太樓」
「きんつば」の名店として知られる浅草の「徳太樓」。名物のきんつばもさることながら、夏場の水羊羹や葛ざくらも見逃せません。いずれも丁寧に炊かれた自家製餡が主役。実直で静かな美しさをたたえます。浅草「徳太樓」
明治36年創業の浅草の和菓子店「徳太樓」。店名の「徳」は、初代の生家が徳川家と関係の深かった館林藩秋元家の下級武士だったことに、「太樓」は、初代の修行先が老舗和菓子店「榮太樓總本鋪」の流れを汲む店だったことにちなみます。現在は3代目ご主人と息子さん、若手職人さん3人で朝7時から工場に入り、餡から手作りしています。
「きんつば」が出来るまで
7年ほど前、お茶のお稽古に登場した「徳太樓」の「きんつば」。濃茶には上生菓子だと思い込んでいた当時、なぜ素朴なきんつばがお茶席にと一瞬驚き、続いて美しさにくぎ付けに。透き通るほど薄らとした皮に包まれた姿に、「わび・さび」とはこういうことなのかなと思ったものです。
ところで元々はその名のとおり、刀のつばを模した丸い形だった「きんつば」。「徳太樓」のものは、後に主流になった四角い形をしています。
中には艶やかな潰し餡。北海道産の小豆を丁寧に煮て灰汁を抜き、よく晒したという餡は、くどさがなく小豆の香りが真っ直ぐに感じられます。夏場には少し冷やして餡がしまったところを食べるのもおすすめ。甘さはさらに控えめに感じられて小豆の風味が際立ち、よりさっぱりとした食べ心地です。
さて、「きんつば」の作り方を拝見。
艶やかに炊かれた潰し餡に寒天を加え、「舟」と呼ばれる型に流して冷やし固めます。
固まったところで1切れずつにカット。1舟できんつば50個分です。
小麦粉や塩を水で溶いた生地をヘラですくい、四角い餡に1面ずつ付けながら銅の平鍋で焼いていきます。6面、ムラなく手早く焼き上げます。
次々と焼きあがる見事な薄皮。しっとりとした皮と餡との一体感は、「徳太樓」の「きんつば」の醍醐味です。