英語

「英語を話せる力=グローバル人材条件」はもう古い!(2ページ目)

日本人がグローバルビジネスで活躍するためには、英語スピーキングよりもまずは英語ライティングの学習が必要になります。その理由は、取引が増加している非ネイティブ地域の人たちとのコミュニケーションには"共通認識"が必要であり、スピーキングでは限界があるからです。本文では、ライティングが必要な理由、共通認識を得られる文章事例をまじえて考察していきます。

齋藤 浩史

執筆者:齋藤 浩史

ビジネス英語ライティングガイド

言いたいことが100%伝わる文章

では、「言いたいことが100%相手に伝わる文章」とはどのようなものでしょうか?おそらく思い浮かぶのは、何十行もこと細かに説明した文章、もしくは頻繁に箇条書きを使って説明する文章ではないでしょうか。前者は、情報漏れリスクを回避するために100%伝わる文章を詳細記述としたケース。そして後者は、100%相手に伝わる文章は見た目のシンプルさと勘違いして、主張がどこかがわからなくなるケースになります。こういった文章作成はグローバルビジネスでは避けたいところです。

実例を見てみましょう。

例えばこんな課題が与えられたとして、どのような文章が100%相手に伝わるのでしょうか?

Q. この状況について説明してください。
 


data

例題用データ


まだライティングに慣れていない方々のほとんどが、これを箇条書きで対応するでしょう。例えばこんな感じです。

The graph shows each fuel consumption trend in US. The key points are as follows
- The top consumption fuel is the “petrol and oil”. It will increase at constant rate.
- The “Natural gas” and “coal” become the second group. It is expected that the coal will rise even after 2020 as the natural gas stops growth.

提出先が顧客だった場合、この文章で顧客に100%伝わるでしょうか?おそらく理解はしてもらえるでしょうが、もうひと工夫必要になるのかと思います。上の文章だと、エネルギー消費の上下動しか触れていないため、グラフの本来のメッセージ「数十年後も原油、天然ガス、石炭への高い依存傾向」を読み手に伝えきれていません。

読み手である顧客はこのグラフを初めて目にするわけで、事実を並べただけの主張不在な文章は逆に相手を混乱させる可能性があるため注意する必要があります。そこで、書き手は、主張を明確にしつつシンプルな文章で読み手を誘導するテクニックが求められるのです。

キー接続詞を使って読み手を誘導する

読み手を誘導するためには、各文章の位置づけを考える必要があります。位置づけとは、その具体性のレベルです。例えば、上の例で大項目と中項目と小項目に分けたとしましょう。すると、まず、「全体的に何のグラフなのかを説明」(大項目)します。そして、「伸び率が突出したグループAとそうでないグループBに分ける」(中項目)ことができます。最後に「突出したグループの中でも、一番エネルギーとして使用されている原油の顕著なトレンド」(小項目)を伝える。これを英語になおすと以下のようになります。

The 3 major consumed fuels are “petrol and oil”, “coal” and “Natural Gas”. US has a high dependency on “petrol and oil”. It is notable that the consumption of “petrol and oil” and “coal” has dramatically increased since mid of 1990’s and is expected to grow at a constant pace next 20 years. 

いかがでしょうか?このように表現することで、読み手はグラフの全体像を把握したうえで、書き手の主張を理解することができるようになります。

そして、この文章をさらにひと工夫することで更に読みやすくすることができます。例えば原油に関しては依存度が特に高いわけで、この部分を強調して冒頭にIn particularとつけると読み手にとってさらに頭に入りやすいのです。またIt is notable~以下についても、誰と比べて顕著と言いたいのかをAmongst thoseを冒頭に付け加えるだけで、わかりやすい文章に様変わりします。

普段であれば文と文を繋ぐためだけに使われる接続詞ですが、これらを有効に使うことで見違えるほどの英文が作成できるのです。

The 3 major consumed fuels are “petrol and oil”, “coal” and “Natural Gas”. In particular, US has high dependency on “petrol and oil”. Amongst those, it is notable that the consumption of “petrol and oil” and “coal” has dramatically increased since mid of 1990’s and is expected to grow at a constant pace next 20 years. となります。

私は例題について、こんな風に答えてみました。

The graph shows how much each fuel is used in the US energy consumption.
The 3 major consumed fuels are “petrol and oil”, “coal” and “Natural Gas”. In particular, US has a high dependency on “petrol and oil”. Amongst those, it is notable that the consumption of “petrol and oil” and “coal” has dramatically increased since mid of 1990’s and is expected to grow at a constant pace next 20 years. On the other hand, the increase of natural gas consumption has been moderate in the past 10 years and is not expected to grow as much as the others do.
While the Japan high dependency on nuclear power, US has relatively lower dependency on it. As the clean energy discussion progresses, the solar and wind power are expected to grow. However the chart shows no intensive growth on the solar and wind. Lastly the US dependency of the hydropower will slowly decrease over the time.
<日本語訳>
グラフは、アメリカのエネルギー消費で各燃料がどれだけ利用されているのか?を表したものである。
まず頻繁に使われる3つのエネルギーが、原油、石炭そして天然ガスだ。アメリカでは、特に原油の依存度は高い。
顕著なのが、それら3つの燃料の中で原油と石炭の消費が1990年代半ばから急激に増加してきており、また今後20年の間でもコンスタントに増加するものと予想されていることだ。一方で天然ガス消費の増加は、ここ10年では落ち着いており、今後も他2つほど伸びるとは予想されていない。
日本では原子力への高い依存度があるのに対し、アメリカでは比較的その依存レベルは低い。クリーンエネルギーの議論が進むなか、太陽光や風力の利用が増加するものとみられている。しかし、チャートではそれらが際立って伸びているとは見えない。最後にアメリカの水力依存度は時間とともにゆっくりと減少している。

英語ライティングは定型文をコピペして使うケースもあるため、必要ないという人もいるでしょう。ただ、自分が何を言いたいのか求められたとき、ルーティン業務用の定型文では限界があります。テクノロジーが発展し、メール等ビジネスで書くという業務頻度が増しているのであれば、主張するべき点の整理方法を練習するだけでも、グローバル社会での英語能力はかなり上がるものだと言えます。
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