英語スピーキングの限界論の到来
スピーキングには限界がある
かつてはグローバル社会の範囲を英語ネイティブ圏と想定していました。しかし、いまやノンネイティブ国との取引機会のほうが多いのが実情。我々がどれだけうまく英語を話せたとしても、相手にその意思が伝わらないことがあります。このグローバル社会では、実は英語ネイティブでさえもビジネス取引に苦労しているのです。このように、互いに理解のズレがあれば、ビジネスで支障をきたしてしまうのも想像にたやすいでしょう。
以前、外資系投資銀行の国際部隊で働いていましたが、私がどんなにネイティブのように話せたとしても相手に理解してもらわない限り、ビジネスは成立しないというケースを数多く経験してきました。”話すこと”はその場だけであるため、自分の伝えたことの解釈が時間とともに変わっていく可能性があります。酷いケースだと、「わかったわかった」という口返事が翌日ひっくり返されるなんてこともありました。日本人同士では稀なケースですが、自身の過失でなくともこのようなコミュニケーションリスクがあるのがグローバルビジネスの実態なのです。
ここから分かることは、日本人がグローバルビジネスで生き抜くためには、表面的に話す学習(表現力や発音等)に偏らず、もっと相手との”共通認識”を想定したコミュニケーションの学習が必要だということです。
英語ライティング最強論
英語で発信する方法は『話すこと』のみと考えがちですが、もう一つの方法があることを我々は知っています。そう、『書くこと』です。次世代のグローバルビジネスには、相手との”共通認識”を得られる英語コミュニケーションが必要であると前に触れましたが、『書くこと』とは異文化間で素早く”共通認識”にたどり着ける能力と言っても過言ではないでしょう。発音やイントネーションの影響を受けず、別の解釈にもなりにくい、知らない表現にも惑わされないで済む方法、それが英語ライティング能力なのです。加えて、英語ライティング能力は、ビジネスで評価されやすい優位性もあります。例えば、大事な記録やレポートを残す業務に関しては「"共通認識"を共有する価値ある仕事」と相手に理解してもらうことができるでしょう。
一方で"英語スピーキング"の場合、明確な評価基準が設定しにくいため、社内外からの評価自体が難しいのが現状です。ビジネスは、この"共通認識"が前提になるため、一方通行に英語が話せる技術があったとしても、絶対的に評価されるものではないのです。ノンネイティブの世界であれば更にその傾向は強くなります。
ビジネス英語ライティング能力とは
ただ、ビジネス英語ライティングといっても高校大学入試試験時での一部学校で出題される「英作文」とは全く違います。あの「英作文」試験は翻訳であり、出題者が予め用意した解答にどれだけ近いか採点する思考停止の英語です。一方、グローバル社会で求められるビジネス英語とは、散乱した情報をまとめて、わかりやすくし、言いたいことが100%相手に伝わる文章であり、参考解答はあっても正解はないものと考えるべきです。日本人だと必ず正解のある教育を受けてきているため、気持ち悪いところもありますが学習していくうちに慣れてきます。散乱した「情報のまとめ方は十人十色違う」と受け止めることもグローバル社会では必要なのです。
次のページで具体的に見ていきましょう。