美しい海と教会と史跡めぐり、天草周遊のおすすめモデルコース

天草松島

小さな島が点在する天草松島(2015年8月撮影)

熊本県と言えば、名将・加藤清正公が築いた熊本城、今なおダイナミックな火山活動を続ける阿蘇山周辺などの印象が強いですが、美しい海の風景もあるのをご存じでしょうか。

熊本で美しい海の風景が楽しめる場所の一つが天草(あまくさ)です。島原の乱を率いた天草四郎時貞が良く知られていて、世界遺産にも登録されたキリシタン弾圧に関する史跡や教会をイメージすることが多いのですが、それだけではなく美しい夕陽が望めたり、至近距離でイルカに出会えることができる、とても楽しい島なのです。

今回は、広い天草諸島を周遊しながら史跡めぐりや美しい海の風景を楽しみましょう。
 

<目次>
 

美しい海に囲まれている天草

天草五橋1号橋・天門橋

九州本土・三角と大矢野島の間に架かる天草五橋1号橋・天門橋。
手前に見える建設中の橋は新天草1号橋で、2018年5月に「天城橋」として開通しています(2015年8月撮影)

天草Yahoo! 地図情報)は、熊本県の西部に位置する島々です。面積の大きい下島と上島、大矢野島、そして九州本土との間にある八代海に浮かぶ小さな島々から成り立っています。

天草は熊本県に属していますが、県庁のある熊本市からは一番近い大矢野島でも40km強離れていて、下島の南にある牛深まで行くと鹿児島県の方が近いというとても大きな地域。
天草五橋(大矢野橋、中の橋、前島橋、松島橋)

 天草五橋から2号橋・大矢野橋(左上)、3号橋・中の橋(右上)、4号橋・前島橋(左下)、5号橋・松島橋(右下)。これらの橋のおかげで熊本市内から陸路のみでアクセスすることができます(2013年11月,2015年8月撮影)

それぞれの島が独立した島ですが、天草五橋Yahoo! 地図情報)と呼ばれる5つの橋で熊本側から上島まで陸続きになっていて、上島と下島の間も天草瀬戸大橋で渡れるため、熊本側からはフェリーを使わずに車での移動ができます。
天草の海(1)/鬼海ヶ浦展望所から眺める風景

下島・鬼海ヶ浦(きかいがうら)展望所から眺める海岸線と天草灘(2013年11月撮影)

九州本土との間の八代海(不知火海)、島原半島との間の島原湾、外洋に面した天草灘に囲まれた天草では、様々な海の風景が広がります。
天草の海(2)/鬼海ヶ浦展望所から眺める風景

下島・鬼海ヶ浦(きかいがうら)展望所から眺める岩の風景と天草灘(2013年11月撮影)

下島の西側は天草灘に面していて、日本の夕陽百選に選ばれている鬼海ヶ浦(きかいがうら)展望所Yahoo! 地図情報)をはじめ、下田温泉など多くのスポットから美しい夕陽を望むことが可能。外洋の海に洗われたダイナミックな岩々の風景も印象に残りますね。

また八代海や島原湾では、穏やかな内海の風景が見られます。下島の北岸からは見通しが良ければ島原半島が望めますし、上島の東側にはトレッキングで行くことが可能な観海アルプスYahoo! 地図情報)と呼ばれる山々が連なるエリアがあり、穏やかな八代海を見下ろすことが可能です。
天草の海(3)/牛深・遠見山 桜木展望所からの眺め

下島・牛深 遠見山 桜木展望所からの眺め。目の前を横切る橋は牛深ハイヤ大橋(2013年11月撮影)

他には天草の南にある牛深と長島の間でも、島影に遮られた穏やかな海の風景を望むことができます。

荒々しい外海と穏やかな内海の風景、対照的な2つの風景を短い移動距離で両方楽しめるのが天草の海の魅力と言えるでしょう。


天草の素敵な海の風景は、この後も登場しますが、続いては、史跡めぐりに出かけましょう。
 

島原の乱ゆかりの地を訪ね歩く

島原の乱の激戦地、本渡・祇園橋

下島:本渡・祇園橋。天草四郎時貞率いる一揆勢と、当時天草を治めていた唐津藩の軍勢がこの付近で激しく衝突しました(2013年11月撮影)

天草と聞くと、誰しもイメージする史話が「島原の乱」。

江戸時代初期、厳しい年貢の取り立てに怒った島原半島の領民と天草の領民が引き起こした反乱で、「島原・天草の乱」や「島原の乱、天草の乱」と独立して説明する文献もあります。

当時広まっていたキリシタン信仰に対する弾圧への怒りもあり、天草ではキリシタンから厚い信望を受けていた天草四郎時貞を担いで一揆勢が団結しました。
日本最大級の石造桁橋、祇園橋と祇園神社

日本最大級の石造桁橋でもある祇園橋と祇園神社(2013年11月撮影)

天草も戦闘の舞台になり、下島の天草市本渡(ほんど)を流れる町山口川では、当時天草を治めていた富岡城番代 三宅藤兵衛が率いる肥前唐津藩の軍と一揆勢が激しく衝突。両方に多数の戦死者が出たと言い伝えられています。

衝突が起こった場所の近くには現在、日本最大級という石造桁橋、祇園橋Yahoo! 地図情報)がかかっていて、橋のたもとには「天草の乱 激戦之跡」と刻まれた石碑が残されています。
 
富岡城址

下島:天草四郎時貞率いる一揆勢が攻め落とせなかった富岡城。平成の世になり復元されました。二の丸公園には天草に縁のある人たちの銅像が並びます(2013年11月撮影)

本渡で唐津藩の軍勢を打ち破った一揆勢は、そのまま天草を掌握しようと、唐津藩が拠点を築いていた下島北部の富岡城を攻めますが、攻め落とすことはできませんでした。

そして江戸幕府からの討伐軍が天草に迫りつつあることに対処すべく、島原湾を渡って島原半島へ移動し、島原側の一揆勢と合流して原城に籠城するに至ります。
富岡城址から眺める天草下島

富岡城址から眺める天草下島(2013年11月撮影)

一揆勢が攻め落とせなかった富岡城は島原の乱が終わった後も残りましたが、島原の乱勃発から33年後に富岡藩藩主 戸田忠昌が領民の負担軽減を目的として廃城に。

その後、天草は江戸幕府の天領となり、富岡城址の三の丸が天草代官所として使われました。

時が流れて現代に至り、当時の絵図を元に櫓(やぐら)や石垣が復元され、2005年からは熊本県富岡ビジターセンターYahoo! 地図情報)が開所して、天草に関連した情報等をまとめて公開中。

富岡ビジターセンター横の広場は二の丸公園となっており、天草に縁のある人々の銅像と共に島原湾に突き出た砂嘴(さし)と天草下島を望むことができます。


史跡めぐりに続いては、美しい風景の中に溶け込んでいる教会を訪ねてみましょう。
 

周囲との風景の調和が美しい教会を訪ねる

大江天主堂(1)

丘の上にたたずむ大江天主堂。アプローチの花々が美しい(2013年11月撮影)

島原の乱や戦国時代、キリシタン大名 小西行長が天草を治めていたことなど、キリスト教と縁の深い天草ですが、現在では下島に本渡、大江、崎津の3つの教会があります。

天草観光のルートとして良く組み込まれるのは、下島の西側に位置する大江天主堂と崎津天主堂です。
大江天主堂(2)

昭和初期に建てられた白亜の教会、大江天主堂(2013年11月撮影)

大江天主堂Yahoo! 地図情報)は、小高い丘の上にある白亜の教会。横を走る国道389号線からもその姿を望むことができます。

島原の乱の後、禁制とされたキリシタンの信仰はこの地で静かにずっと続き、明治時代の禁制解除と共に再び布教が行われました。

そんな中で明治時代にこの地に赴いたフランス人神父と信徒により、1933年に大江天主堂が建てられ、以来この地でたくさんの人たちの祈りが行われています。
崎津天主堂(1)

落ち着いたゴシック様式の﨑津天主堂(2013年11月撮影)

続いて、﨑津天主堂Yahoo! 地図情報) は、大江天主堂からさらに南に進んだ所にあります。崎津に教会が設けられたのは、戦国時代の1569年にまでさかのぼります。

長い隠れキリシタンの時代を経て、明治時代に教会が復活した後はずっと多くの人の祈りをこの地で受けています。

教会そのものは明治時代から3回建て直されていて、現在の教会は1934年に建てられたもの。ゴシック様式と呼ばれる洋風建築であり、とても絵になりますね。
 
崎津天主堂(2)

海越しに望む﨑津天主堂。天主堂がある﨑津集落は「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」を構成する資産の一つとして、世界遺産に登録されました(2013年11月撮影)

大江天主堂は丘の上の教会。それに対して﨑津天主堂は海のそばの教会。小さな港の対岸から、海越しに﨑津天主堂を望むことができます。まさにまわりの風景の中に溶け込む美しい風景ですね。

﨑津の集落は、日本でのキリスト教の布教の歴史を語る上で欠かせない場所の一つとして、2018年に世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産群」に登録されました。時間をたっぷりとって、この風景を堪能してみてください。
 

美しい教会の風景を見てきましたが、続いては大人も子供も童心に返ることができるあの動物に会いに行きましょう。
 

天草の海に暮らすイルカを見に行こう!

天草に出かけたら、ぜひ体験したいのがイルカウォッチング

なんと島原半島と天草諸島の間で自然に暮らしているイルカが泳ぐ姿を目の前で見ることができるのです!
天草イルカインフォメーション前のイルカのオブジェ

天草イルカインフォメーション前のイルカのオブジェ(2013年11月撮影)

イルカウォッチングの船が多く出ているのは、下島の北側にある五和(いつわ)地区(Yahoo! 地図情報)。他に上島の松島地区からも船が出ています。

イルカウォッチングを行っているお店はたくさんありますが、乗船可能な人数に限りがありますので、あらかじめ予約をしておくのがお薦めです。インターネットから予約が可能なお店もありますし、イルカウォッチングのチケット付きの宿泊プランを用意する周辺の宿泊施設もあります。
イルカが見られるポイントへ向かうイルカウォッチングの船たち

イルカが見られるポイントに向かうイルカウォッチングの船たち(2013年11月撮影)

予約したお店で受付を済ませた後、ライフジャケットを着用してイルカウォッチングの船に乗船。港を出た船は、沖合にいるイルカに向けて舵を取ります。

イルカが見られるポイントは、その日によって天草側にいたり、島原半島側にいたりと気ままなもの。どの船も目的が同じですので、イルカが居る場所を求めて一斉に船が移動するさまはなかなか迫力ですよ。
天草のイルカウォッチング(1)

天草のイルカウォッチング、こんな目の前で自然に暮らすイルカたちを見ることができます!(2015年8月撮影)

イルカのそばまで来ると、船はエンジンを止めて、イルカが見える方向を案内してくれます。
天草のイルカウォッチング(2)

天草のイルカは地元の漁師さんとの信頼関係ができているので、たくさんの船のそばでものびのびと泳いでいます(2015年8月撮影)

海面からイルカが顔を出した時は、大人も子供も皆童心に返ったように楽しめますね。
天草のイルカウォッチング(3)

天草のイルカウォッチングでイルカを見られる確率は90%を超すとのこと(2015年8月撮影)

ちなみにイルカが見られる確率は高く、90%以上とのこと。イルカウォッチングのスタッフの方のお話によると、天草のイルカは地元の漁師さんとの信頼関係ができているので、船が近づいても逃げることがないのだそうです。
天草のイルカウォッチング(4)

穏やかな青い海で、野生のイルカが自由きままに泳ぐ姿が可愛いですね(2015年8月撮影)

船に乗っている時間は五和地区からだと約1時間前後。松島地区からだと2時間前後です。天草に行った時はぜひイルカウォッチングを旅のプランに組み込むことをお薦めします。



史跡めぐりや美しい海の風景を楽しめる天草をご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか?

距離があり、ちょっと行きにくい場所ではありますが、その分素敵な風景があふれていますので、時間をたっぷりとってぜひ天草へ出かけてみて下さい。
 

天草へのアクセス

■天草まで
<飛行機>
阿蘇くまもと空港から、空港リムジンバス(産交バス)で1時間ほどの乗車で熊本交通センターへ。
熊本交通センターからは産交バス 快速 あまくさ号で2時間半ほどの乗車で本渡バスセンターへ。
天草空港

天草への空の玄関、天草空港

また下島にある天草空港へは、阿蘇くまもと空港、福岡空港、大阪・伊丹空港から天草エアラインの飛行機が運航。
天草空港からは産交バスで15分ほど本渡バスセンターへ。

<鉄道>
産交バス あまくさ号

熊本市内と天草を結ぶ産交バス あまくさ号。熊本市内から天草・本渡まで2時間半で結びます

九州新幹線 熊本駅から産交バス 快速 あまくさ号で2時間半ほどの乗車で本渡バスセンターへ。
熊本-三角を結ぶ特急「A列車で行こう」

熊本から三角を結ぶJR九州の特急「A列車で行こう」

また熊本駅からは、三角線の普通列車や特急「A列車で行こう」に乗車して、三角駅で下車後、三角港から天草宝島ラインに乗船すると本渡港まで行くことができます。
三角駅から快速 あまくさ号に乗ることも可能ですが、三角駅に停車するバスの本数が少ないのであらかじめ時刻表を確認して下さい。

<車>
・九州自動車道 松橋(まつばせ)インターチェンジから国道266号線で三角へ。天草五橋を渡り、大矢野島から上島、下島へ行けます。

■島内の移動
天草島内の地図

天草への地図。天草自体が広く、熊本駅、阿蘇くまもと空港からも距離がありますので、ゆったりとした旅行プランを立てましょう

熊本市内から天草へのアクセスも担う産交バスが下島の本渡バスセンターを中心に富岡や下田温泉、牛深方面へバスを運行していますが、本数が多い路線でも1時間に1本程度、1日数本という路線もありますので、時刻表での確認が必要です。

効率良く巡るにはレンタカーが便利ですが、下島の西海岸を走る国道389号線などは一部道幅の狭い区間がありますので、通行には注意して下さい。
また天草は非常に広く、熊本市内から大江天主堂、﨑津天主堂まで走るだけで片道120km、約4時間近くの時間がかかりますので、余裕を持った旅行プランを立てるようにして下さい。
 
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