長崎観光で訪れたい。歴史を重ねてきた美しい教会めぐり
宣教師フランシスコ・ザビエルが日本に伝えたキリスト教は、数多くの地域で広まりました。その中の一つ、長崎は日本で初めてのキリシタン大名、大村住忠が誕生するなどキリスト教にゆかりの深い地です。戦国時代からのキリシタン禁教令などの苦難を乗り越えて数多くの教会があり、日々たくさんの方の信仰を集めています。
今回は歴史的背景や建物の美しさから注目され、世界遺産に登録されたものも長崎の代表的な教会をピックアップして巡ってみましょう。
<目次>
- 日本唯一の国宝指定の教会、大浦天主堂
- 原爆禍を乗り越えた浦上天主堂
- 長崎湾を望む白亜の教会、神ノ島教会
- 独特の色合いが記憶に残る平戸ザビエル記念教会
- 美しい海を望む高台に立つ田平天主堂
- 九十九島、最大の島・黒島に残る黒島天主堂
- 五島列島で最初にできた教会、福江島・堂崎教会
- 潜伏キリシタンが移住した小さな島に造られた頭ヶ島天主堂
- 五島列島には、他にも数多くの教会が点在しています
- 教会を美しく照らすライトアップにも注目!
- 長崎の教会群へのアクセス
日本唯一の国宝指定の教会、大浦天主堂 日本最古の現存教会建築
長崎の教会めぐり、最初は大浦天主堂(Yahoo! 地図情報)です。長崎市内の観光名所としても知られる大浦天主堂は、江戸時代末期に造られた教会。正式名称は「日本二十六聖殉教者天主堂」であり、戦国時代に豊臣秀吉が発布したキリシタン禁教令により長崎で処刑された26人の殉教者に捧げられるために造られたものです。
国内に現存する教会建築の中では最も古く、教会建築としては唯一国宝の指定を受けています。 大浦天主堂が完成した当時はまだキリシタン禁教令が有効な時代でした。そんな中で、キリシタン禁教令による迫害を回避しつつ信仰をつないでいた隠れキリシタンの一部の人々が、完成してまもない大浦天主堂を訪れて、神父に信者であることを告白しました。
このことは「信徒発見」としてキリスト教の歴史に刻まれ、フランスから記念として白亜のマリア像が贈られました。現在は天主堂の入口で教会を訪れる人々を優しく見守っています。
この史実からキリシタン禁教の終わりを示す重要な施設として、2018年に登録された世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」を構成する資産の一つとされました。
原爆禍を乗り越えた浦上天主堂 美しいステンドグラスも
長崎の教会めぐり、続いては浦上天主堂(Yahoo! 地図情報)です。長崎港の北側に位置する浦上(うらかみ)は、長崎でも早くからキリスト教が根付いた土地。1873年(明治6年)にキリシタン禁教令が解除された後、しばらくしてから小聖堂が建てられ、その後19年の歳月をかけて1914年(大正3年)に大聖堂が完成しました。 しかし1945年(昭和20年)の原爆禍により、爆心地のすぐ近くにあった大聖堂は一瞬にして瓦礫と化します。しばらくの間は瓦礫のまま残されていましたが、復興を期す信者らの活動により1959年(昭和34年)元の場所に再興したのが現在の浦上天主堂になります。
浦上天主堂の正面入口を見上げるとキリスト石像と聖マリア像、聖ヨハネ像が埋め込まれていることに気づきます。この聖マリア像と聖ヨハネ像は、原爆禍を免れた旧天主堂のものを埋め込んであるとのこと。歴史の重みを改めて感じますね。 教会の内外を彩る美しいステンドグラスも必見。各天主堂の物語が刻まれています。
なお原爆禍で瓦礫と化した旧天主堂で、壊れずに残っていた遺壁の一部は、浦上天主堂から500メートルほど離れた所にある原爆落下中心地(Yahoo! 地図情報)に移築されて残っています。
浦上天主堂を訪れた時は、忘れずに立ち寄りたい所です。
長崎湾を望む白亜の教会、神ノ島教会
長崎港を出航する船は、稲佐山と風頭山、鍋冠山に挟まれた狭い水路を通り、女神大橋をくぐって長崎湾へ出ていきます。その長崎湾に出るあたりで少し高台にある白亜の教会が望めます。その教会が神ノ島教会(Yahoo! 地図情報)です。 この教会は大浦天主堂に次いで、長崎市内で2番目に古い教会。長崎湾を背景にした教会の建物も絵になりますね。教会の近くの岬にはマリア像「岬の聖母」があり、目の前の長崎湾を行き交う船の航行の安全を日々祈っています。
続いては長崎市内を離れて、長崎県の北部にある教会を巡りましょう。
独特の色合いが記憶に残る平戸ザビエル記念教会
サンフランシスコ・ザビエルが鹿児島に上陸した後、次に訪れたのは長崎県の北部にある平戸でした。平戸は南蛮貿易の拠点として栄えた島で、平戸島と隣の生月島には古くからたくさんのキリスト教徒が暮らしています。平戸周辺にもたくさんの教会があり、平戸港の近くには1931年(昭和6年)に建てられた平戸ザビエル記念教会(Yahoo! 地図情報)があります。緑色に塗られた外観は、一目見ただけで記憶に残りますね。
建設された時は「カトリック平戸教会」と呼ばれていましたが、ザビエルゆかりの地の一つとして、聖堂の前にザビエルの像が建立されたため「聖フランシスコ・ザビエル記念教会」とも呼ばれるようになり、「平戸ザビエル記念教会」が正式名称となりました。
美しい海を望む高台に立つ田平天主堂
平戸島と九州本土の間には平戸瀬戸があり、真っ赤な平戸大橋ができるまでは船で行き来していました。その平戸瀬戸を望む高台に立つ教会が田平天主堂(Yahoo! 地図情報)。1918年(大正7年)に造られた赤レンガの彩りが美しい教会です。
2003年には国の重要指定文化財に指定されました。教会の敷地内の墓地の向こうには平戸瀬戸が見え、異国情緒を漂わせています。
※世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」では、生月島に近い平戸島の春日集落が構成資産に登録されて田平天主堂はエリア外となりましたが、キリシタン禁教に関連する大切な資産として見学には事前連絡が必要となっています。
九十九島、最大の島・黒島に残る黒島天主堂
佐世保の沖合、海の中に小さな島々が密集する九十九島。美しい風景を誇る九十九島の中で一番大きな島である黒島は、キリシタン禁教令により弾圧を受けた隠れキリシタンが多く移住した地です。黒島には、明治時代に造られた赤レンガ造りの美しい黒島天主堂(Yahoo! 地図情報)があり、キリシタン禁教時代での信仰を維持・拡大したことを示す痕跡が残っているとして、黒島の集落が世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産に登録されました。
1日3往復しか船便がない島のため、ゆっくりと時間をかけて訪れたい場所です。
※黒島天主堂の見学には事前連絡が必要です。
続いては五島列島の教会を巡りましょう。
五島で最初に造られた教会、福江島・堂崎教会
東シナ海に面した長崎県は、壱岐(いき)や対馬(つしま)、五島(ごとう)など日本で一番多く有人島を抱える県でもあります。九州本土の西に位置する五島列島には、多くのキリスト教徒が暮らしたことから各地の島に教会が点在しています。五島列島で一番大きな島、福江島にある堂崎教会(天主堂)(Yahoo! 地図情報)は禁教令が解けた後、五島で最初に造られた教会です。
明治時代初期より五島でのキリスト教宣教の拠点となりました。現在残る建物は明治時代中期に造られたもので、キリシタン資料館として見学することができます。
潜伏キリシタンが移住した小さな島に造られた頭ヶ島天主堂
五島列島は、福江島のある下五島と中通島、小値賀島などからなる上五島に大きく分かれます。上五島の大きな島、中通島に隣接する頭ヶ島(かしらがしま)は無人島でしたが、幕末になって弾圧を逃れた潜伏キリシタンが移住してきました。
五島崩れと呼ばれる激しい弾圧によって一時期無人にはなったものの、禁教令が解けた後の明治時代中期に木造の教会が建てられ、大正時代には石造りの美しい教会・頭ヶ島天主堂(Yahoo! 地図情報)が建てられました。
潜伏キリシタンが移住により信仰を維持した歴史が良くわかる場所として、頭ヶ島天主堂のある頭ヶ島の集落が世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産に登録されました。
※頭ヶ島天主堂の見学には事前連絡が必要です。
五島列島には、他にも数多くの教会が点在しています
堂崎教会、頭ヶ島天主堂以外にも、五島列島には数多くの教会が点在しています。世界遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産では、久賀島(ひさかじま)の集落にある旧五輪教会堂、奈留島の江上集落にある江上天主堂、野崎島の集落にある旧野首教会があります。
その他にも福江島の水ノ浦教会、井持浦教会、中通島の青砂ヶ浦教会、中ノ浦教会など歴史を重ねてきた教会がありますので、美しい五島の風景とあわせて、ゆっくり時間をかけて点在している教会を訪ねてみるのも良いですね。
続いてはライトアップされる教会を訪ねます。
教会を美しく照らすライトアップにも注目!
長崎の夜景と言えば、稲佐山からの1000万ドルの夜景が良く知られていますが、市内の一部の観光名所でも常時ライトアップが行われているのをご存じでしょうか。 教会では浦上天主堂や大浦天主堂が対象となっていて、22時頃までライトアップされています。建物の外から眺める形にはなりますが、夜の闇に浮かび上がる教会の姿は幻想的で、きっと忘れられない思い出になることでしょう。
長崎にある代表的な教会をピックアップしてご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。
記事内でも紹介しましたが、一部の教会は潜伏キリシタンの歴史を後世に語り継ぐべきと判断されて、2018年に世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」に登録されています。
貴重な歴史を刻んできた教会群と美しい風景が各地に広がる、長崎へぜひ足を運んでみてください。
長崎の教会群へのアクセス
アクセス:■長崎駅まで
<飛行機>
長崎空港から長崎バス「エアポートライナー」、長崎県営バス「長崎空港リムジンバス」で長崎駅前へ。
<鉄道>
山陽新幹線 博多駅よりJR九州の特急「かもめ」で長崎駅へ。 <車>
長崎自動車道 長崎インターチェンジより、ながさき出島バイパス経由で長崎市内へ。
●大浦天主堂
地図:Yahoo! 地図情報
長崎駅前から長崎電軌(市内電車)1系統 正覚寺下行きに乗車し、築町(つきまち)で5系統 石橋行きに乗り換え。大浦天主堂下電停で下車し、徒歩5分程度。
●浦上天主堂
地図:Yahoo! 地図情報
長崎駅前から長崎電軌(市内電車)1系統または3系統 赤迫行きに乗車。松山町電停で下車し、徒歩5分程度。
●神ノ島教会
地図:Yahoo! 地図情報
長崎駅前から長崎バス 神の島教会下行きに乗車し、終点下車すぐ。神の島1丁目バス停からは徒歩7分程度。
■平戸まで
<飛行機>
長崎空港から西肥バス 佐世保駅経由佐々バスセンター行きに乗車。佐世保駅または佐々バスセンターで西肥バス 平戸桟橋行きに乗り換え。
<鉄道>
山陽新幹線 博多駅よりJR九州の特急「みどり」で佐世保駅へ。佐世保駅からは西肥バス 平戸桟橋行きに乗り換え。
<車>
長崎自動車道から西九州自動車道に入り、 国道497号線・国道204号線を経て平戸口へ。平戸島へは平戸大橋を渡ります。
●平戸ザビエル記念教会
地図:Yahoo! 地図情報
西肥バス 平戸桟橋行きにて、平戸市役所前バス停下車。徒歩10分程度。
●田平天主堂
地図:Yahoo! 地図情報
西肥バス 平戸桟橋行きにて、平戸口桟橋バス停下車。天主堂近くのバス停を経由するバスは本数が少ないので、平戸口桟橋からタクシー利用が無難です。
車の場合は、平戸大橋を渡らずに手前の海沿いの県道へ。道が狭いので運転には注意が必要です。
※田平天主堂を見学する場合は、事前に「長崎の教会群インフォメーションセンター」に連絡が必要です。
■黒島まで
地図:Yahoo! 地図情報
<飛行機>
長崎空港から西肥バス 佐世保駅経由佐々バスセンター行きに乗車。佐世保駅から松浦鉄道で相浦(あいのうら)駅下車。または佐世保市営バス 相浦桟橋行きに乗車し、終点で下車。
相浦桟橋より高島経由黒島行きフェリーで黒島へ。
<鉄道>
山陽新幹線 博多駅よりJR九州の特急「みどり」で佐世保駅へ。佐世保駅からは<飛行機>ルートと同じ。
<車>
長崎自動車道から西九州自動車道に入り、 国道497号線・国道204号線を経て相浦港へ。
※黒島天主堂を見学する場合は、事前に「長崎の教会群インフォメーションセンター」に連絡が必要です。
■五島・福江島まで
<飛行機>
福岡空港と長崎空港から五島福江空港まで、全日空とオリエンタルエアブリッジが運航。
※オリエンタルエアブリッジ運航便は全日空のコードシェア便として運航。
五島福江空港からは、五島バスの空港連絡バスで福江へ。 <船>
長崎港より、九州商船のジェットフォイルまたはフェリーで福江港へ。
または佐世保港より五島産業汽船の高速船で福江港へ。 ●堂崎教会
地図:Yahoo! 地図情報
五島バス 戸岐方面行きで堂崎天主堂入口バス停下車。徒歩10分程度。
■五島・上五島まで
<船>
長崎港より、九州商船のジェットフォイルまたはフェリーで奈良尾港へ。
または九州商船の高速船で有川港、五島産業汽船の高速船で鯛の浦港へ行く方法があります。
●頭ヶ島天主堂
地図:Yahoo! 地図情報
有川港ターミナルから西肥バス 頭ヶ島教会行きのバスが出ていますが、1日2便~3便と本数が少ないため、レンタカーやタクシーの利用が良いでしょう。
レンタカーの場合、上五島空港に車を止めてシャトルバスで頭ヶ島天主堂へ向かう形になります。
※頭ヶ島天主堂を見学する場合は、事前に「長崎の教会群インフォメーションセンター」に連絡が必要です。
【関連記事】 【関連サイト】
- 大浦天主堂
- 浦上天主堂
- 神ノ島教会
- 平戸ザビエル記念教会(ほっこり・HIRADO)
- 田平天主堂(ながさき旅ネット)
- 黒島天主堂(黒島へ旅する)
- 堂崎教会(五島の島たび)
- 頭ヶ島天主堂(ながさき旅ネット)
- 長崎市観光・宿泊ガイド あっ!とながさき
- ながさき旅ネット
- 長崎ノ夜景(長崎市観光・宿泊ガイド あっ!とながさき)
- 世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」
- 長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産インフォメーションセンター(長崎の教会群インフォメーションセンター)
◇「日本の世界遺産」に、「名所・旧跡」ガイドで日本国内の世界遺産を紹介した記事の一覧をまとめてあります。