さっぱりとしたフレッシュチーズ「ブッラータ」
汗ばむ時期になると食べたくなるのが、モッツァレッラやリコッタなどのさっぱりとしたフレッシュチーズ。その中でもぜひ一度は試していただきたいのが「ブッラータ(ブラータ)」です。南イタリア、プーリア州(ブーツでたとえられるイタリア半島のかかと部分)原産のブッラータ。パスタフィラータタイプのフレッシュチーズです。特徴のある形は、モッツアレッラ生地で作った袋の中に、細かくしたモッツァレッラとクリームを混ぜたものをたっぷり入れ、巾着の様に口を閉じて作ったから。ちなみに、クリーミーな中身は“ストラッチャテッラ”と呼ばれています。
真っ白でつるんとした生地ににナイフを入れると、とろりと中身が流れ出し、口に入れると、さっぱりとしながらもリッチでクリーミー。一度食べると忘れられない味です。消費期限が短いため、なかなかお目にかかれないのが難点ですが、機会があったら逃さずぜひご賞味いただきたいチーズです。
ブッラータは、今のところDOP(Denominazione d'Origine Protetta/原産地名称保護)を取得したチーズではないので、産地や製法、名称が厳密に決められていません。ここでは、ブッラータもしくはブッラータタイプのチーズとして販売されているものの共通項をざっくりとご案内していきます。
ブッラータの基本データ
名称:ブッラータ(Burrata/「ブラータ」と表記される事も)タイプ:フレッシュ(パスタフィラータ)
原産地:南イタリア、プーリア州ムルジャ地方の町、アンドリア(Andria)
原料乳:現地では水牛乳製が主。現在では牛乳製が主流。
形・大きさ・重量:重さ60~500g位までと様々。口をぎゅっと摘まんで閉じたり、巾着状に紐で縛ったりしている。伝統的には、アスフォデル(Asphodel)と呼ばれるポロ葱の様な葉で周囲を包んでいる。
旬:初夏~盛夏
特徴:モッツァレッラ生地の中に、リッチなクリームが入っている真っ白なフレッシュチーズ。袋状の形もユニーク。
※プーリア州、アンドリアの位置はコチラから
ブッラータの名前の由来
“Burrata”は、イタリア語で“バターの様な”という意味。ベースとなっているモッツァレッラチーズは本来水牛乳製なので、脂肪分が高くミルクの風味が濃厚。さらに中に入ったクリームがこっくりとして、まるでバターがたっぷり入っているかのよう。そのため、この名が付きました。ブッラータの起源、歴史
ブッラータは比較的新しいチーズで、最初に作られたのが1920年頃。プーリア州、アンドリアのビアンキーニ家が地元消費用に作ったのが始まり。その後30年に渡り大々的に知られる事も無く、町の人だけが楽しむ超ローカルフードでした。転機が訪れたのは1950年代。モッツァレッラ作りで余った切れ端等を有効利用する良い方法として広まり、他の生産者もブッラータを作るようになりました。こうしてブッラータの生産量が徐々に増えた結果、「アンドリアにものすごく美味しいチーズがある!」と、その美味しさの評判が広がることに。その後さらに生産地域が広がり、プーリア州中で作られるようになりました。職人による高品質な手作りチーズとしてのイメージや、なかなか手に入らないプレミアム感も手伝い、国外でも知名度を上げていきました。
そして今なお、希少で入手が困難なチーズです。なにしろ、“製造後、48時間以内に食べるべし!”と言われるくらいなので、プーリアから遠く離れた国ではなかなかお目にかかれません。とはいえ、輸送技術、冷蔵技術の進歩、そして人気の高まりにより、日本でも少しずつ輸入量が増えています。(※)
また近年では、アメリカでちょっとしたブッラータブームが起きたこともあり、アメリカや日本等、イタリア以外の国でもブッラータが作られるようになってきました。年々増々、ブッラータの人気は高まっていっているのを感じます。
※2017年頃から大手スーパーマーケットでも見かけるようになり、格段に入手しやすくなりました。知名度も上がり、ブッラータ人気、うなぎのぼりです!
ブッラータの製法
- まずはモッツァレッラと同じ生地を作る。温かいミルクにレンネットを加えてカード(凝乳)にする。カードをカットして水分を切り、軽く乳酸発酵させる。
- 熱い湯を加えて伸ばすようにして練り、よく伸びる繊維状の生地にする。
- 適量の生地を取って伸ばして袋状にし、中にクリームとモッツアレッラの細かくしたものをたっぷり入れて、口を巾着状に紐で縛るかくっつけて閉じる。
- 伝統的には、その後アスフォデル(asphodel、ポロ葱に似た葉)で周囲を包んで出来上がり。昔は、アスフォデルの色の鮮やかさが鮮度のバロメーターとなっていた。
続いて、おすすめのブッラータの美味しい食べ方をご紹介します。