庶民派なのにお洒落なビール
スペインではいろんな都市でビールが生産されており、どの地方でもその土地のビールが一番流通していて馴染みがあります。バルセロナにもいくつかありますが、とりわけ人気なのが「モリッツ」です。フランス、アルザス出身の移住者が1850年代に始めた会社という長い歴史があるにも関わらず、ファッションショーに協賛したり、レトロモダンなオリジナルのグッズを販売したりして、お洒落なイメージで売り出して近年急展開しています。そんな「モリッツ」ビールの風味は、苦味が少なく飲みやすいのが特徴です。温泉で有名なバルセロナ近郊の街のミネラル豊富な水や独自の酵母を使用して作られています。ビールがあまり得意でない人にも受け入れられる優しい風味と言えるでしょう。種類は定番の「モリッツ」、風味が濃くてアルコールも若干高めの「エピドール」、「モリッツ」20clの「キントゥ」とアルコールゼロビール「アグア・デ・モリッツ」の4種。
ワインよりもビール?
「モリッツ」ビールはスーパー、バル、レストランなど様々なシーンで缶、瓶、バルクから入れたジョッキなどで購入されています。価格は他社の国産ビールより10~30センティモくらい高め。にも関わらず人々がわざわざ「モリッツ」を購入するのは、おいしいから。「モリッツ」を飲むこと自体がお洒落だから。そして自分たちのアイデンティティを感じるビールだから。というのも「モリッツ」は、1970年代に惜しくも閉鎖してしまいましたが、長年バルセロナの街の中心付近に工場を構えていたのです。バルセロナは、スペイン国から独立したいという主義の人が多いカタルーニャ地方の首都なので、人々はスペインではなく、バルセロナの商品により愛着を感じます。「モリッツ」はその辺りのマーケティングの下、2004年に再創立して成功していると思います。
例えば「モリッツ」の販売用のトラックはかなりインパクトがあります。会社のロゴに合わせ全部真黄色に青字のM。営業用の車にいたっては、車体全部にキッチュなポスターがずらりと貼り付けてある派手なものも。とにかく目立ちます。また、旧工場をモリッツビールと料理が楽しめるバルにしたり、長い歴史があるバルを買い取って新しくバルをオープンしたり、と昔からあるものをレトロな部分を残しつつモダンに再生させています。また有名シェフとコラボしたりして、どの店も話題になりました。
またスペインは世界第三位のワイン生産国ですが、近年ワインの消費はビールブームに押され気味。特に夏場は、バルのテラスで朝からビールを飲む人でいっぱいです。こういった若者のワイン離れは、飲みやすくてパッケージがお洒落な「モリッツ」のようなビールが出てきたからでしょう。 スペインではビールを注文するときに、「ビール」ではなくメーカー名を指定することが多いです。サン・ミゲルならとにかく安いもの、「モリッツ」は、味や外見にもちょっとこだわりのある人が選びそうです。