住宅ローンを借りるとき、誰でも最後までしっかりと支払うことを考えているはずです。途中で支払いをやめることを前提にして住宅ローンを借りる人はいませんね。
住宅ローンの支払いが苦しくなった場合の対処法として、その1では主に家計の見直しについて、その2では住宅ローンの借り換えや返済条件変更の交渉などについて説明をしました。しかし、それでも問題解決ができないときにはいったいどうすればよいのか、困難に直面したあなたが検討するべき、さらなる手段について考えてみることにしましょう。
想定外の事態は誰にでも起きる危険性が…
住宅ローンの支払いができなくなったとき、その現実から逃げているだけでは何も解決しない
また、かつての2段階金利によって毎月の返済額が急に増えることや、これから先は変動金利の上昇で返済額が次第に増えていく可能性もあるでしょう。そのときに収入が増えていなければ、住宅ローンの支払いがきつくなることは当然の成りゆきです。
2009年12月に「中小企業金融円滑化法」が施行され、個人の住宅ローンについても金融機関側の相談受付体制が整えられました(2013年3月31日まで)が、仮に一定期間の返済猶予を受けたとしてもそれが根本的な解決に繋がるわけではありません。期間の延長など返済条件の変更をしてもらえたとしても、そのためには数十万円の追加保証料を条件変更時にまとめて支払わなければならなかったり、総返済額が大きく膨らんだりすることもあります。完済時の年齢がネックになるケースもあるでしょう。制度導入後しばらくは大きな話題となった返済猶予も、多くの場合は単に「問題の先送り」にしかなりません。
それでは住宅ローンを支払いたくても「払えないものは払えない!」となったとき、あなたに残された手段は何でしょうか? 中古住宅として売り出して、その売却代金で住宅ローンの残高をすべて返済できるのであれば、それでいったん問題は解決しますが(その後の生活は別問題として)、そうでないとき(住宅ローンの残高を返済しきれないとき)にはどうすればよいのでしょうか? いまは住宅ローンの支払いに何ら支障のない人も、イザというときのための予備知識として知っておきたいものです。
競売は向こうからやってくる!
住宅ローンの返済ができなくなり滞納を続けたまま何もせずに放置していれば、やがてあなたのマイホームは競売にかけられます。2009年にはその急増ぶりが何度もマスコミに取り上げられていましたが、現在の状況もさほど改善しているわけではありません。「ほったらかしにしておいた結果」としての競売だけでなく、何らかの対策を講じようとしながらもそれがうまくいかなかったケースや、住宅ローンを滞納し始めてから気力が萎えてしまい、自ら行動を起こせなかったというケースも少なからずあることと思います。競売に至るまでの経緯が何であれ、単にマイホームを失うという結末だけでは終わりません。競売後に残った住宅ローン(残債務)については引き続き支払っていかなければならないのです。それが金融機関などからの督促を無視した挙句の競売であれば、残債務の支払いについて金融機関側が優しく対応してくれるとは思わないほうがよいでしょう。
また、競売にかけられている間にはさまざまな事態が起こります。あなたのマイホームが競売にかけられたという事実は新聞の公告や住宅情報誌などに載るだけでなく、インターネットが普及した現在は地裁のサイトで公開されます。物件の住所や、マンションであればそのマンション名と部屋番号、さらには裁判所の執行官が調査の際に撮影した部屋の中の写真も掲載され、日本全国(物理的には世界中)の誰もが見られるようになっています。
情報が公開されればすぐに競売物件を取り扱う不動産業者や個人投資家など、その物件の条件が良ければ良いほど、数え切れないほどの人が訪ねてくるようになります。競売物件を検討しようとする一般消費者が何人も、家の周辺を歩き回ることもあるでしょう。誰も見向きもしないような物件であれば状況は違うでしょうが…。
その結果として、あなたのマイホームが競売にかけられたこと(同時にあなたや家族の生活が行き詰まっていること)は、あっという間に近所に知れ渡ることになります。近隣に同情してくれる人ばかりが住んでいれば気も楽でしょうが、なかなかそうはいきません。自宅が競売になったことが原因になり、子どもが学校でイジメに遭うケースも少なからずあるようです。
そして競売で落札されれば、あなたと家族はほどなく追い出されることになります。転居先の都合などはほとんど考慮してくれません。
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